
浜名湖の畔、静岡『界 遠州』で煎茶を嗜(たしな)む
フグも鰻も味わえる“ふぐうな会席”
脂がのった静岡・浜名湖名産の鰻の白焼きをミカンポン酢と橙酢で和えた先付は、口開けの一杯にと供されたオリジナル茶「爽華(そうか)」と共に。ハーブ的な香気が、爽やかな相性を奏でます。茶席で使われる山里棚にさりげなく盛り込まれているのは、熟成した身のもっちり感を堪能できるよう厚めにそぎ切りしたフグの昆布締め。旨みの余韻が口中に漂う間に煎茶「遠州さえみどり」を流し込むと、ほのかな渋みにフグの甘みがフワリと呼び起こされます。
フグの唐揚げに続くメイン“うなすき”のペアにと薦められたのは、奥山で育った煎茶「両河内(りょうごうち)つゆひかり」。野趣を感じる緑の芳香がすき焼き仕立ての甘辛い鰻と予想を超える好相性です。
知られざる地元名物の周知を願って年中提供している夕餉“ふぐうな会席”は、フグと鰻のダブルキャストで展開する斬新な構成もさることながら、食中に煎茶を推す提案もまた、新しい刺激に満ちています。
多彩なアプローチで“煎茶漬け”に
遠州とは、浜松市・森町・掛川市などの静岡県西部エリアのこと。浜松駅から車で約40分、浜名湖の舘山寺(かんざんじ)温泉に佇む温泉旅館『界 遠州』のコンセプトは“美茶楽(びちゃらく)湯治”です。
「静岡では日がな一日煎茶を飲むのが当たり前。日本一のお茶処らしい滞在を通して、煎茶の奥深さをお伝えできたら」と総支配人の原田湧介さん。味わうだけに留まらない煎茶体験がこの宿の自慢だと微笑みます。
遠州綿紬のインテリアで彩られた館内や客室を満たすのは、ホッとする茶香炉の香り。ウエルカムティーを兼ねて季節ごとの煎茶を振る舞う「美茶楽のおもてなし」で煎茶の知識を深めつつ一服したら、ヒバの浴槽に茶葉が浮かぶ露天風呂へ。脱衣所に備えられた棒茶や浅蒸し茶で水分補給しながら和のアロマ浴に寛ぎ、冷たい焙じ茶でクールダウンするのが、人気の流れです。
浜名湖と茶畑を見下ろすラウンジのティーセラーに並ぶ12種類の茶葉がいつでも淹れ放題というだけでも贅沢なのに、夜には煎茶を使用したカクテル「おちゃけ」をサービスで提供。さらに、お茶を淹れるためのスペースまで設けた全室レイクビューの客室には、到着後・就寝前・目覚め後という3つの滞在シーンに合わせた3セットの茶葉と茶菓子、茶器が出番はまだかとスタンバイ。そそる提案の数々に誘われ、気付けばどっぷり煎茶に浸ってしまいます。
手業のひとときで和紅茶作りに挑戦
「煎茶の伝統的な製法を色濃く学べる、手揉み製茶の体験が深化しました」。日本茶インストラクターの資格も持つスタッフ・竹野晋平さんがイチ押しするのは、2025年11月から始まる“和紅茶手揉み体験”です。
長年受け継がれている所作を習い、揉んでは乾燥させる工程を繰り返すうちに、深緑色の茶葉が漆黒へと変化していく様が何とも不思議。地元の製茶職人から指導を受けて手ずから完成させる和紅茶は、きっと愛おしい一杯になるはずです。
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- 店名
- 界 遠州
- 住所
- 静岡県浜松市中央区舘山寺町399-1
- 電話番号
- 050-3134-8092(界 予約センター)
- 営業時間
- in15:00~、out~12:00
- 料金
- 1泊2食付38000円~
- 交通
- JR浜松駅から車で約40分
- 備考
- ※このページに掲載の内容は2025年9月時の情報です。
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