豊かな自然の恵みを味わう、和歌山食材フェア 神戸ポートピアホテル『日本料理 神戸 たむら』

豊穣の秋。まだまだ未知なる食材が眠る和歌山を訪ねたのは、神戸ポートピアホテル『神戸 たむら』の安藤 智料理長。
『神戸 たむら』は、昭和21年創業の『つきぢ田村』の料理と心を受け継ぎ、守り伝える日本料理店。ホテル4階にありながら、緑豊かなお庭の見えるダイニングや、大きな窓に囲まれた洋室、掘り炬燵式のお座敷など、大小の個室を備え、記念日の会食や気軽なランチなど様々なシーンの舞台となっている。
2024年、料理長に就任した安藤さんは、「下町育ちなので、広い空や青い海、緑いっぱいの和歌山は、本当に心が癒されます」と、海に山に畑にと、精力的に産地を巡り、刺激をたくさん受けたよう。生産者の声と現場の空気を存分に味わって生まれた、豊穣の秋の「和歌山食材フェア」特別コースは、11月からお披露目。

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「山や谷をひとつ越えると採れる作物が変わるんですね。広い和歌山にどれだけの食材が隠れているのかとワクワクします」と、まだ暑い時期の和歌山を精力的に廻った安藤料理長。
紀の川市では、地域独自の“ほいろ”で焼く鮎を漁協の方に振る舞われて美味しさに目を見張り、赤酢と日本酒を醸す日本でも稀有な蔵元『九重雜賀(ここのえさいか)』の蔵を見学し、「微生物が棲んでいる気配を濃厚に感じますね」と興味津々の様子。
『フィッシャーマンズワーフ白浜』では、「脂乗りより鮮度!」と言い切る地元の方の鮮度へのこだわりや、ウツボを食べる食文化に遭遇。
果物類の豊富さはもとより、「新しいものへのチャレンジ精神と作りこなす熱意に感服しました」と料理長。辛くない新品種のししとう“ししわかまる”や、オーストラリア原産のフィンガーライムも、「面白い食材で、ぜひ使ってみたい」。
また熊野牛という希少なブランド牛の牧場では牛たちの歓迎を受け「大事に育てられた牛、大切に使わないと」と気持ちが引き締まったとか。 生産者の熱い想いを受け止めて生まれたフェアの献立には、和歌山愛が満ち溢れていた。

「お椀 熊野牛のお吸い物 ししわかまると針生姜 つる菜 ゆず胡椒」。 「脂がすっきりときれいなので吸い物にできるかな」と熊野牛を椀種にした意欲作。薄切りのリブロースで、和歌山生まれの辛くないししとう“ししわかまる”と、針生姜を“の”の字に巻いて、熱い吸い地を注ぐ。ほんのりピンクに染まった柔らかい肉の中、さっと素揚げしたししわかまるの甘みが蕩け合う。
※写真の料理は夜の会席13000円の中から。
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「お造里 和歌山県産マグロとカツオ 鰤 鯛 角長濁り醤 和歌山県産黒塩」。鮮度の高い和歌山直送マグロとカツオをお造りで。湯浅町の老舗『角長』の昔造りの濁り醤(にごりびしお)で勧める。「香りも味わいも強い醤油が、赤身によく合います」。白身には熊野灘の海水を用いた海塩を添えて。「これから脂がのってきて、益々美味しくなりますよ」と料理長。
※写真の料理は夜の会席13000円の中から。
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安藤 智(あんどうさとし)料理長
尼崎生まれ。中学時代に震災に遭い、手に職をつけることを決意し、飲食の道へ。大阪・北新地の料亭など日本料理一筋に研鑽を積んできた。2024年、『神戸 たむら』料理長就任。新作を思いつくと、盛り付けや副材などを考えつつ、まずイラストを描くのが常。
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熊野牛を飼育する『中北畜産』さんへ。和歌山県内で24カ月以上肥育され、格付け等級3等級以上が熊野牛と認定。中北さんは30カ月かけて肥育。「その分、飼料代もかかるけど、やっぱり美味しくなるんですよ」と中北さん。
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精肉業『伊勢屋』直営焼肉店『勢』にて熊野牛のランプ(もも)、ロース、くり(腕)を試食。「霜降りもあっさりしていて、和食にも使いやすそうです」と安藤料理長。
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天保12年創業の醤油蔵『角長』資料館にて。180年使い続けている蔵内も見学。
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鮎の養殖、放流に力を注ぐ『紀ノ川漁協』で、地域独自の“ほいろ”を用いた鮎の伝統的な焼き方“たて焼き”を試食。「昔から紀州徳川家に鮎を焼いて献上していたんですよ」と漁協の方が胸を張るその鮎に、「内臓の苦みがクリアで癖がないので食べやすいですね」と料理長。
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有田川町に移動し、和歌山生まれのししとう“ししわかまる”栽培名人の畑へ。「葉も多いし水もたくさん必要で」、通常のししとうより1.5倍手がかかるとか。そのまま生で齧ると、青い味とほのかな甘さが口の中に広がる。
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親指大の柑橘・フィンガーライムはプチプチした食感と鮮烈な酸味が印象的。
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『フィッシャーマンズワーフ白浜』の久保勝哉さん。「和歌山では鮮度が一番」と力説。
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明治39年創業から手作り製法を守り続けている『味噌本舗やまだ』にて金山寺味噌3種を試食。「上品な味ですね」と安藤料理長。「マヨネーズと合わせて揚げ物のソースにもいいですよ」と5代目修業中の山田友希博さん。
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1908年創業の『九重雜賀』は、赤酢と日本酒を醸す日本でも稀有な蔵元。その赤酢は、先付のめはり寿司に使用。
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