北海道『界 ポロト』でアイヌの日常に触れる

世界的にも稀な植物由来の温泉でほっこり。暖炉を囲んでワインやカクテルを楽しんだり、魔除けづくりに参加したり…貴重な体験がたくさん。今回ご紹介するお宿は、北海道・白老温泉にある『界 ポロト』です。星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」のコンセプトは「王道なのに、あたらしい。」。かつてアイヌ民族が暮らした地域ならではの伝統や文化を様々な形で楽しめます。

静謐なる湖岸滞在

とんがり屋根の不思議な建物と、澄み切った青空や森の白樺やカエデを映す凪いだ湖面との組合せが、まるで西洋画のような美しさ。『界 ポロト』から臨むポロト湖畔の穏やかな景色は、眺めるほどに心が安らぎます。

『界 ポロト』客室からの眺め
ポロトとは、アイヌ語で大きな沼という意味。自然とひとつになれる感覚をより高めるために、宿の敷地内に湖の一部を引き込んでいます。湖の対岸右手に見えるのは、民族共生象徴空間「ウポポイ」が野外展示するコタン(集落)。文化的に貴重な展示が多いので、滞在中の立ち寄りにおすすめです。
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「自然との共生や一体感を大切にしています。のんびり過ごしたいと、2泊以上される方が多いですね」と総支配人の久保貴弘さん。北海道南西部に位置するここ白老(しらおい)町はかつてアイヌ民族が暮らしていた地域で、『界 ポロト』のコンセプトは‟ポロト湖の懐にひたる、とんがり湯小屋の宿“。隣接する民族共生象徴空間「ウポポイ」同様、アイヌ文化に浸れます。

アイヌ文化の香り漂う空間

宿の象徴でもあるとんがり屋根の正体は、狩猟の際に寝泊まりする仮小屋・クチャの構造を参考にした湯小屋「△湯(さんかくのゆ)」。世界的にも稀な天然植物由来のモール温泉で、その価値や知識を学べる「温泉いろは」を毎日設けています。

『界 ポロト』の大浴場「△湯」
アイヌ文化の建築特徴である丸太組みの三脚構造・ケトゥンニを基本とした湯小屋「△湯(さんかくのゆ)」は、随所に三角を意識したデザイン。泉質は世界的にも珍しい「モール温泉」。天然植物由来の有機物をたっぷり含む湯は、茶褐色でとろりとした質感。大浴場はもうひとつ、ドーム天井に丸い穴を開けた「〇湯(まるのゆ)」もあります。
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『界 ポロト』の大浴場「△湯」の湯上がり処
こちらは「△湯」の湯上がり処。白樺丸太の自然な形状を生かして組み上げた高い天井が圧巻です。
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「□(しかく)の間」と名付けられたレイクビューの客室は、伝統的住居・チセから着想を得た設え。チセに欠かせない四角い炉をイメージしたテーブルを置き、壁紙やクッションに施しているのはアイヌ文様。白樺丸太を大胆に配した部屋は、まるで森の中にいるようです。

『界 ポロト』の露天風呂付の特別室「□の間」
ご当地部屋「□の間」は全42室すべてレイクビュー。バルコニーも備えられた露天風呂付の特別室は3室のみ。2名1室利用の場合1名あたり1泊2食付48000円~。
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『界 ポロト』の客室「□の間」
大きな窓に面したソファが何とも寛げるこちらの客室は、2名1室利用の場合1名あたり1泊2食付31000円~。
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演出たっぷりの「北国の海鮮醍醐鍋会席」

主役は毛ガニや帆立、鮭にエビなどを贅沢に盛り込んだ海鮮醍醐鍋。北海道ならではの海産物をふんだんに使った夕食も、随所にアイヌ文化を匂わせた演出が効いています。

一品目の先付はジャガイモのすり流しにイクラを飾った「馬鈴薯海宝盛り」。アイヌ民族が山のカムイ(神)として崇めるヒグマの陶器が「どうぞ召し上がれ」と言わんばかりに器に手を添える愛らしい姿が和みます。

昆布醤油でいただく北寄貝(ホッキガイ)やニジマスのお造りのほか、秋鮭の三升漬けなどを盛り合わせた宝楽盛りは、アイヌ民族が交易に使っていた丸木舟をモチーフにした器で登場。甘味のブランマンジェはアイヌ民族が不老長寿の実として崇めるハスカップとラベンダーのソースが別添えで。爽やかな酸味が味変にピッタリです。

『界 ポロト』の海鮮醍醐鍋
夕食「北国の海鮮醍醐鍋会席」のメイン・海鮮醍醐鍋。魚介の旨みが溶け込んだ濃厚な鍋だしは、パルメザンチーズたっぷりのリゾットに仕立てて余さずいただきます。
『界 ポロト』の馬鈴薯海宝盛り
クリーミーな馬鈴薯海宝盛りと共に登場する陶製のクマは、白老町『輪果窯(りんかがま)』作。ひとつずつ表情が違うのもキュートです。
『界 ポロト』の宝楽盛り
宝楽盛りの中央にも、クマヤやリス、フクロウなどアイヌの人々が信仰する動物神の置物が船旅を見守る様に鎮座。船先には踊るアイヌの人々のシルエットがデザインされています。
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暖炉に揺らめく炎を見つめながら、地元の酒やハーブティーを一杯。ロビーの暖炉で毎夜開催される「コタンの宵の集い」で、火を囲んだ団欒を大切にするアイヌの人々の習慣を体感するのも素敵です。火がいかに神聖な存在とされているかを気軽に学べる酔いのひとときは、旅の深い楽しみ方を教えてくれます。

「2月頃になると、凍りついた湖上を散歩できますよ。ワカサギ釣りもお薦めです」と久保さん。夢のような白銀の世界を想像するだけで、旅に出る理由になります。

『界 ポロト』のコタンの宵の集い
自然界すべての物に魂が宿ると考えるアイヌ民族の精神性を学べる「コタンの宵の集い」は所要約1時間。1名あたりドリンクのみ1500円(おつまみ付きは2000円)で最大6名まで。
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『界 ポロト』のイケマと花香の魔除けづくり
地域の伝統や文化を気軽に体験できるプログラム‟ご当地楽“のひとつ、「イケマと花香の魔除けづくり」も人気です。アイヌ民族が魔除けとして身に着けていた植物・イケマやコーンフラワーやカレンデュラなどのハーブを自由に組み合わせて、オリジナルの匂い袋を作ります。こちらは参加無料です。
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