京都・鳴滝『京甘藷』の、甘くない塩けんぴ

芸術的な美しさの極細芋けんぴは、カリッポリッと小気味よい食感。そのほかサクねっとりとした大学芋やホクホクの焼き芋なども揃う、大人気のサツマイモ菓子専門店です。

お店は京都の外れ、鳴滝に

京福電鉄宇多野駅から、国道162号線を北に歩くこと8分。『京甘藷』があるのは、「鳴滝」の地名通り、小さな滝が水音を奏でる閑静な山中の住宅街です。

風に揺れる生成りの麻暖簾に描かれているのは、サツマイモのシルエット。県外からわざわざ足を運ぶファンも多い、大人気のサツマイモ菓子専門店です。

2度揚げする極細芋けんぴ

サツマイモの香ばしく甘い香りが立ち込める店内に入ると、まず目に入るのが、山のように積まれた芋けんぴや大学芋です。豪快なディスプレイにそそられますが、さらに目を奪うのが、芋けんぴの形状。わずか2㎜しかない細さと、15㎝はあろうかという長さに驚かされます。

『京甘藷』の芋けんぴイメージ
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『京甘藷』の芋けんぴパッケージ
こちらは、揚げたての芋けんぴに糖蜜を絡めた黄金芋。1パック750円。
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「この極細切りが、ウチの芋けんぴのおいしさの要。1本ずつ牛刀で手切りしています」と、店主の家村慶一郎さん。元々はフランス料理のシェフとして腕を磨いていましたが、名古屋で出会った細切りけんぴを口にした瞬間に、サツマイモのおいしさに開眼。10年近く研究を重ね、2019年にこちらをオープンしました。

『京甘藷』店主の家村慶一郎さん
家村さんは京都生まれ。実家からも近い鳴滝を選んだのは、「わざわざ足を運びたくなるおいしさを目指したからです」と話します。
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切り方に加え、揚げ方にも技ありです。揚げ油は、カラッと揚がりやすくクセのない菜種油100%。まずは中温でじっくり火を通して甘みを出し、それから高温で表面をカリカリに。2度揚げすることでカリッポリッと小気味よい食感にしています。

芋けんぴは糖蜜を絡めた甘いタイプのほかに、塩だけを振った‟甘くない“塩けんぴを置いているのもこちらの特徴。やや強めの塩気がサツマイモの甘みをグッと引き立てていて、ハマるおいしさです。

『京甘藷』の塩けんぴ
塩けんぴは1パック450円。時季によって粉山椒や京都『原了郭』の黒七味を利かせたバージョンも登場します。サツマイモは水分が少なくて硬質の紅あずまを使用しています。
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べっこう芋は3度揚げ!

芋けんぴと並ぶ人気商品が、べっこう芋です。いわゆる大学芋ですが、こちらもプロならではの工夫がされています。

使用するサツマイモは、ねっとり甘い紅まさり。詳しくは企業秘密ですが、途中休ませつつ低温から高温まで温度を変え、合計3度も揚げて仕上げます。表面の薄皮一枚はサクッとしていて、中はねっとりホクホク。見事な食感のコントラストと濃密な甘みにうっとりする味わいです。

『京甘藷』のべっこう芋
べっこう芋は1パック(中)750円。宮崎紅という糖度低めのサツマイモを使った白味噌蜜味の大学芋・ひょうしぎもあります。
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理想とする品質のサツマイモが手に入らない7~9月は、休業してさらなるおいしさの研究に時間を費やすというこだわりぶり。素朴だけれど印象的な芋菓子は全国発送にも対応しているので、親しい人への贈り物にも最適です。