アラン・デュカス氏が惚れた、福井のテロワールが織りなす美食の饗宴

フランス料理界を牽引する巨匠、アラン・デュカス氏が福井県を訪れ、県内の食文化と風土に触れる特別なひとときが実現しました。デュカス氏は、県内でものづくりに励む生産者や職人との交流を経て、一日限りのスペシャルイベントのゲストとして登場。舞台は市内のフランス料理店『ル・ジャルダン』。料理長の堀内 亮さんは、パレスホテル東京『エステールbyアラン・デュカス』でアシスタントシェフを務めた経験も。福井が誇る食材と真摯に向き合い、福井を代表する銘酒「黒龍」と響きあうランチコースを仕立てました。その模様をレポートします。

デュカス氏が絶賛、福井のテロワールとの出会い

今年15周年を迎える「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク」。9月20日から全国各地500軒のレストランで始まる本イベントとパートナーシップ契約を結ぶ福井県と『黒龍酒造』が、アラン・デュカス氏を招聘。8月30日『ル・ジャルダン』で開かれた「ル・ジャルダン ペアリングランチ 2025」には、一般公募とメディアを含む63名のゲストが集まった。

左から、堀内 亮シェフとアラン・デュカス氏。『黒龍酒造』8代目蔵元 水野直人氏。
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冒頭、デュカス氏はこう述べた。「福井には情熱のある生産者が多くおられ、福井のテロワール(風土)の豊かさを実感しました」。なかでも、敦賀にある昆布商『奥井海生堂』では昆布だしの飲み比べを行い、美浜町ではへしこ蔵を訪れ「樽上げ」と呼ばれる鯖へしこを樽から取り出す作業などを体験。「こういう素朴な伝統食材を、フランス料理としてエレガントにアレンジできる」と、福井が誇る伝統的な食材の可能性を感じたようだ。

『ル・ジャルダン』の厨房で真剣な表情のふたり。
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「デュカス シェフとは6年振りの再会です」と目を輝かせる堀内シェフ。フランスの星付きレストランでの修業を経て、帰国後、『エステールbyアラン・デュカス』で修業。2022年に『ル・ジャルダン』の料理長に就任。同年、パリで開かれた「ル・テタンジェ賞 国際シグネチャーキュイジーヌコンクール」で世界一の称号を勝ち取った。 世界が認める実力シェフだけあり、イベント当日も堂々たる意欲が漲っていた。堀内シェフとチーム『ル・ジャルダン』による、福井のテロワール(風土)を随所に感じさせるコースメニュー、さらには「黒龍」との見事なペアリングをご紹介。

へしこ、汐うに…伝統食材とフレンチの技法がマリアージュ

「ジャガイモのコンフィ へしこ 奥井海生堂 昆布のジュレ」。福井の食の歴史を感じさせる素材で構成。コブみかんオイルの清涼感もいい。
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デュカス氏が語っていた「へしこ」と「昆布」を用いたアミューズで幕は開けた。 ジャガイモは、利尻昆布を用いただしで炊いた後、コンフィに(低温の油で煮る)。シャクッとした食感と、ジャガイモの香りが心地よく、昆布だしのクリアな旨み、パウダー状にしたへしこが、味わいに深みをもたらす。

へしこといえば、地元では焼いて酒のつまみに、さらにはパスタにアンチョビ代わりに使うこともある。堀内シェフが創造した、エレガントな仕立てと繊細な味わいに、会場が盛り上がる。

『黒龍酒造』8代目蔵元 水野直人さんによるペアリングは「KOKURYU Awa 序」。今年6月に登場した、瓶内二次発酵製法で造られたスパークリング日本酒だ。繊細な泡と共に感じるのは、透明感のあるドライな味わい。昆布だしのジュレの清新な旨みと、見事に共鳴していた。

「吉川ナスのグリエ ラタトゥイユ」。
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続く一品は、メガネの街で有名な鯖江市の「吉川ナス」。一度は生産が途絶えかけたが、地元有志の尽力で危機を乗り越え復活。千年以上の歴史を持つとされる伝統野菜だ。堀内シェフ曰く「吉川ナスをグリエしてから、ラタトゥイユのピューレの中に漬け込み、ゆっくりと火を入れ、冷やしました」。
一口味わえば、夏野菜の凝縮した味わいを感じながら、吉川ナス特有の、引き締まった肉質と素朴な甘みが追いかけてくるのだ。焼きナスのアイスとの香りや温度の差異も、舌を喜ばせる。

そこに合わせる日本酒は「黒龍 山田錦」。伸びやかに広がる米の旨みと甘みが、吉川ナスの存在感と対峙していた。

「六条大麦とイカの温かいサラダ 汐ウニ風味のエキューム」。
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3品目には『ル・ジャルダン』のスペシャリテ「六条大麦とイカの温かいサラダ 汐ウニ風味のエキューム」が登場。

汐ウニとは、バフンウニの卵巣に天然塩をまぶして水分を抜き、まろやかに熟成させた高級珍味。堀内シェフは、エシャロットを白ワインで煮詰め、汐ウニと乳製品とともにミキサーにかけ泡状(エキューム)に仕立てた。泡の下には、六条大麦、さらには大麦と同じサイズに切り揃えたイカを用いたリゾットを忍ばせた。

ややオレンジがかった乳白色の泡を口に含めば、クリーミーかつ「汐ウニ」のふくよかな風味が広がる。さらに、六条大麦とイカはプチプチとした食感が楽しい。噛むほどに、それぞれの素材の旨みが混然に。福井のテロワールを繊細なフランス料理に落とし込む、クリエーションには唸るばかり。

日本酒は11月にしか出さないという「黒龍 八十八号」。熟れたフルーツを思わせる香味と、凝縮感のある旨みや微かな苦味が、洗練とさえ感じる汐ウニのコクと見事なハーモニーを奏でていた。

月刊「あまから手帖」編集顧問の門上武司氏。
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この日、参加していた月刊「あまから手帖」編集顧問・門上武司にもマイクが向けられ、曰く「福井ならではの食材と、堀内シェフらしい技法のマリアージュは見事だと感じます。地元の生産者と料理人が、深く結びつくことで、新たな出合いがどんどん生まれていく。福井の食における、未来の可能性を感じました」。


続く、魚料理には「甘鯛のうろこ焼き 福井県産大豆の煮込み ソースヴァンブラン」が、メインには「若狭牛もも肉のポワレ ペドロヒメネスヴィネガーを利かせた 20年熟成ポルトソース」が登場。デセールに供された「福井県産 コシヒカリのリオレ」に至るまで、福井に古くからある食材の底力と、福井ならではの風土が、鮮やかに浮かび上がるのだった。

「甘鯛のうろこ焼き 福井県産大豆の煮込み ソースヴァンブラン」は「ESHIKOTO さかほまれ 生酒」と。
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「若狭牛もも肉のポワレ ペドロヒメネスヴィネガーを利かせた20年熟成ポルトソース」。
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「福井県産コシヒカリのリオレ」。
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『黒龍酒造』水野社長が、堀内シェフの料理に合わせ直々に選び抜いた銘酒「黒龍」が5種。「福井県産コシヒカリのリオレ」には「九頭龍 貴醸酒」を…と、デザートに至るまで見事なペアリング。
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堀内シェフと、アラン・デュカス氏。 (撮影:船井香緒里)
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堀内シェフは最後にこう話してくれた。「修業時代、デュカスシェフから教えていただいた“固定概念をなくしてオリジナリティを出せ”という言葉は今も胸に留めています。なかでも私が常に考えていること。それは、地域の食材を大切に扱うこと。次に“その食材を使う意図があるのか”を常に自分自身に問いただすこと。そして“素材らしさと驚き、両者のバランス”を大切にしていきたいです」。

デュカス氏は「彼の料理は進化しているよ」と、満面の笑みを浮かべていた。

(左から)『黒龍酒造』8代目蔵元・水野直人氏、福井県 副知事 中村保博氏、『ル・ジャルダン』堀内 亮シェフ、アラン・デュカス氏、「ダイナースクラブ/三井住友トラストクラブ株式会社」代表取締役社長 五十嵐 幸司氏。
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この日、『ル・ジャルダン』で開かれた一日限りのスペシャルイベントを皮切りに、フランス生まれのグルメイベント「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク」が、今年もやってくる。15年目となる今回は、北海道から沖縄まで全国約500店のフレンチレストランが参加。9月20日(土)〜10月20日(月)の31日間、誰でも気軽に特別価格のコース料理を楽しめます。有名レストランガイドで星を獲得した店や、メディアで注目を集めるシェフの料理を気軽に楽しめる、またとない機会です。どうぞお見逃しなく。

【開催期間】2025年9月20日(土)〜10月20日(月)
【開催場所】全国の参加フレンチレストラン500店以上
【コースメニュー】前菜、メイン、デザート、食後の飲み物を 、ランチ、ディナーともに 3,000円 / 6,000円 / 10,000円の いずれかの価格で提供。 ※価格と内容は各レストランによって異なります。 ※すべて税・サービス料込み。
【予約方法】ダイナース クラブ フランス レストランウィーク2025公式サイトにてオンライン予約、もしくはレストランへ直接電話予約 https://francerestaurantweek.com/
主催:ダイナースクラブ フランス レストランウィーク事務局
特別後援:在日フランス大使館
特別協賛:ダイナースクラブ(発行会社:三井住友トラストクラブ株式会社)