正和堂書店おすすめvol.4:“食べて、飲んで、生きていく。” 「ランチ酒」

大阪市、今福鶴見駅からちょっと歩いたところにある『正和堂書店』は、小西さんご家族が経営する街の本屋さん。実は鞄からチラ見せしたくなるオリジナルブックカバーが大人気の書店さんでもあります。本はココロのごちそうといいますが、ブックカバーに包んで大切に持ち歩きたい、おいしい本を書店員の小西さんにご紹介していただく連載「ブックカバーの下はごちそう」。第四回は、原田ひ香さんの人気グルメ小説シリーズ第一弾「ランチ酒」。

ランチ酒 (祥伝社文庫) /原田ひ香・著

タイトルと装画から、「さぁ飲んで食って、また頑張るかー!」という内容を想像していましたが、良い意味で裏切られた本作。ただのグルメ小説だとは思わないでいただきたい!

原田ひ香「ランチ酒」
ランチ酒 (祥伝社文庫)
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バツイチ・アラサーの犬森祥子の職業は、深夜の「見守り屋」。様々な事情を抱えた客からの依頼で、一晩中、人やペットなどを見守る仕事。「ランチ酒」は、そんな彼女にとって1日を終えるための食事であり、唯一の楽しみです。「ランチ酒」と共に描かれるのは、孤独を抱えて生きる客に思いを馳せたり、離婚後は元夫と暮らす一人娘の幸せを強く願ったりしながら、明日もまた踏ん張って生きようとする祥子の姿です。

「私は食べて、飲んで、生きていく。」という言葉が印象に残ったランチ酒があります。

御茶ノ水の「牛タン定食」のお話。
いつもは入る店をしっかりと吟味する祥子ですが、この日は最初に目に入ったチェーン店の牛タン屋に入ります。そしてメニューで一番目立つ定食を注文すると、何も考えずひたすら好きに食べ、飲む。祥子を打ちのめした、この日あった出来事を乗り越え、生きて行くために。

そうそう、選ぶことすらしんどい時がありますよね。でも、嫌なこと辛いことがあっても、お腹は空きます。何を食べるか選ぶのに気力が出なくても、とにかく何でも良いからウマいものでお腹を満たすことが「生きる」ことなのだなと、深く心に残りました。

食べることが大好きなあなた、ぜひ読んでみてください。「食べること」がより尊くなるはず!

大阪の街の本屋さん『正和堂書店』が選ぶ、おいしい本連載「ブックカバーの下はごちそう」

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正和堂書店

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大阪・鶴見にある1970年創業の街の本屋さん。3代目の小西康裕さんが「読書時間がより楽しくなるように」とデザインしたオリジナルブックカバーが大人気。2代目の典子さん、3代目の康裕さん・敬子さんご夫妻(と4歳の長女)、康裕さんの弟・悠哉さんなど、一家で奮闘するSNSの総フォロワー数は20万人!
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