
価値観に新しい風が吹く。「もぐ∞」/正和堂書店のおすすめ
contents
もぐ∞(河出文庫)/最果タヒ
ひとつの食べ物からこんなに広く思考を巡らせ、ポップな言葉で綴られたエッセイは、 これまで読んだことがあっただろうか?
最果タヒさんの食べ物への情熱が溢れるエッセイ「もぐ∞」。
最初は独特の食べものへのアプローチに
「え!どういうこと?」と思うのですが、その文章の面白さと説得力に、最後には「ほんとだ、絶対にそうだ、すごい!」と妙に納得してしまい、自分の価値観に新しい風が吹く感覚を得るのでした。
小籠包に期待するのをやめた「グッバイ小籠包」や、愛が世界を救うことに思いを馳せた「抹茶ソフト現代詩」など
お気に入りのエピソードがたくさんあります。
なかでも「アイスクリームは魔法味」では、タヒさんにとって何一つわからないというアイスクリームについて綴られています。
「きっとこの青色1号や赤色3号とかは、大人が私たちに内緒にしている魔法の類に違いない。」
「どうして冷たいの? なんで凍っているの? なめらかに溶けるの?」
きっとアイスクリームの国があるのだと、子どものころに思っていたというタヒさん。
そんなファンタジーな世界は、大人になりルールに従うことを受け入れれば、一気に現実となる。
だから、アイスクリームのことは大人になった今でも何も知りたくないと言います。
確かに、知っていることが多い方が現実では何かと役に立つかもしれません。
でも、ある一部のファンタジーは、ファンタジーのままにしておくことで、なんだかワクワクするなと感じました。
余談ですが、このエッセイを読んだ後は、家族の間で「それはファンタジーやなぁ」という会話が増えました。 めちゃくちゃ影響を受けている我が家です。
一つ一つのエピソードに新しい着眼点があり、新しい価値観をガツン!と体験できます。 巻末のおまけ「最果タヒ的たべもの辞典」も、プププと笑えておすすめですよ。

writer

正和堂書店
seiwado book store
大阪・鶴見にある1970年創業の街の本屋さん。3代目の小西康裕さんが「読書時間がより楽しくなるように」とデザインしたオリジナルブックカバーが大人気。2代目の典子さん、3代目の康裕さん・敬子さんご夫妻(と4歳の長女)、康裕さんの弟・悠哉さんなど、一家で奮闘するSNSの総フォロワー数は20万人!
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