「毎日登山」の人気峰・金剛山で鍛錬ハイク後、河内長野ではしご酒

「登山の後の一杯は、登頂にも勝る至福の瞬間!むしろそれ目的に山に登る」と語る“酒飲みハイカー”ミツルさんとアラフォーの自称山ガール・おばやしが、初心者向けトレッキングと「下山後すぐに酒が飲める店」を訪ね歩く。

今回足を運ぶのは金剛葛城山系の主峰・金剛山(標高1125m)。毎日登山の舞台として、年間約50万人が訪れる人気の山。ハイカーたちの間でお約束なのが、山頂広場に設置された定点カメラに写ること。そのミッションを達成するべく、同地に向かうミツルとおばやし。下山後は金剛山登山の拠点となる河内長野駅前で酒場を探す。

【下山後酒場3箇条】
1.遅くとも16時から営業している。土日祝日のみの営業でも可(下山するのはだいたい夕方早めだからね)
2.下山(登山)口から徒歩圏内、あるいは公共交通機関一本で行ける(すぐ飲みたいからね)
3.立ち飲みではなく、椅子席がある(休みたいもんね)

厳しくも歩きやすい千早本道コースで歴史探訪

ミツル
南海河内長野駅にやってまいりました!今回目指す金剛山は、車で向かえば、大阪市内から一時間ほどで登山口に着きますが、私達酒飲みの場合は、電車とバスを乗り継いで向かう必要があります。

バスが発着する河内長野は、金剛山登山の拠点。今日はこのまちで下山後の一杯を決めるつもりです!
おばやし
河内長野って遠いイメージがありましたけど、電車なら大阪駅からおよそ40分。意外と近いうえにちょっとした旅行気分も味わえますね。それに河内長野駅構内には、お菓子が山積みで売られている『お菓子のデパート よしや』もあって、行動食の買い物にも困らないわ!
ミツル
お菓子の物色はええから、はよバスに乗りますよ!乗車する「金剛山ロープウェイ前」行きバスは時間帯によっては30分に一本しかないから!
奈良・大阪「金剛山」地図
南海河内長野駅からバスに乗り「金剛登山口」バス停下車し、公衆トイレの先にある登山口からスタート。千早城址を経由する千早本道(ちはやほんどう)コースを登り、転法輪寺や売店がある山頂を目指す約2時間の行程。山頂広場で眺望を楽しみ、定点カメラに写ってから下山。その後バスで河内長野へ戻る。なおバスの本数は少ないので、帰りの便も確認してから山行計画を立てておきたい。
おばやし
金剛登山口バス停、到着!ふぅ〜大阪府内にありながら、山深い雰囲気で別世界のようですね!え〜と、私達が向かうのは「千早城跡」のほうなのね。そしていきなり出た〜先が見えない急な階段。これは手ごわそう!
奈良・大阪「金剛山」登山口
登山口からいきなりの階段に手すりを持ち、登っていくおばやし。千早城址まで階段の急登が続く。
ミツル
そうなのだ。その昔、楠木正成が峻険な地形を利用したこの山城に籠城し、北条軍11万の軍勢を退けたと伝わる。まさに金剛山の一部は難攻不落の城だったのだ。 それゆえに登山口に立つ案内板にもこう書いておる。

「千早城址は絶対に落ちないパワースポットだ。受験・選挙・企業業績、すべてのパワーは千早城にある。」
おばやし
むむむ〜、千早城への思いがアツすぎて、やや違和感を感じますが、簡単には落とせない(登れない)ありがたい場所ということは、なんとなくわかります・・・。はぁ〜、確かにこの階段はしんどい!
ミツル
長くて急な階段はつらいですが、たまに森を抜けてくる風が心地よい。周囲はスギやヒノキのなかにモミジも混在して、紅葉の時期には美しく彩ってくれるはず。

ほら! 登り始めて20分ほどで千早城址の広場ですよ。この広場の隅から下を覗いてみれば、ここが非常に急斜面の上にあることが分かる。これでは敵も登るのに難渋したであろう。まさに難攻不落だ。
おばやし
ふ〜ん、城趾と言っても、天守閣なんかがあるわけではないのですね〜。いまいちこういうのにロマンを感じなくて、なんかスイマセン。

あ、その先に神社があります。本丸跡に建てられた千早神社らしいです。こんな山奥にあるのにシュッとした立派な社殿ですわ。登山の安全祈願でもしよっと!
奈良・大阪「金剛山」千早神社
楠木正成を祀った千早神社で登山の安全祈願。山中では多くの人とすれ違う。多くの人は軽装で毎日登山として親しまれていることが見て取れる。
ミツル
千早神社が標高634m。ここからは本格的な登山道となり、もう一方の新道と合流してどんどん高度を上げていきます。とはいえ道はしっかりと整備されているので、歩きやすいはず。
おばやし
はぁ〜、確かに歩きやすいのは歩きやすいですけど、やっぱり階段ばかり。それにしても平日だというのに、人が多いですね。しかも老若男女問わず。さすが毎日登山が盛んな山ですね。

(女性ハイカーとすれ違う)こんにちは〜。よく登られるんですか、健脚ですね〜。え? 御年86歳!?なんというお元気さ! 私も頑張らないと!

大阪を一望する山頂はハイカー憩いの場

ミツル
この道はボランティアの人たちによって整備され、丸太で組んだ階段は子どもでも登りやすい段差にもなっているのだ。

もう少しすれば5合目になりますよ。標高800m付近の5合目ののろし台跡にはトイレやベンチもあるので休憩には最適です。
おばやし
子どもでも登りやすいって・・・。大人の私でもキツイ。わ〜い5合目!ベンチで休憩してファミマで買ったドライフルーツを食べよっと。
奈良・大阪「金剛山」5合目
登山道整備のために積み上げられた丸太はボランティアによって担ぎ上げられている。トイレと東屋がある5合目。ここから山頂までは残り1.2km。
ミツル
ほんと必要以上に行動食を摂取しますな・・・。ここからはしばらくフラットな道が続き、また階段が始まりますよ!
おばやし
ぎゃー! 6合目の先にさらに急な階段!しかも二手に分かれて、どっちを選べばいいのやら。右は急で左は少しなだらかながら、距離が長そう・・・。えい!苦しみは短いほうがいい!右の階段を進みます!
ミツル
その調子!この先にもいくつか分岐がありますが、いずれも右を進めば急登ながら、近道になっています。

8合目付近からは眺望も開けてきて、周囲はブナの森に変化してきました。こんな素敵な森が広がっているのも、この山が愛される理由の一つかもしれませんね。
おばやし
どっこらっしょっと!最後の急登を登り終えれば、平らな広場のようなところに出ました!

ん?なんか名前がずらりと並んだ看板がありますけど?なんすかこれは。
奈良・大阪「金剛山」ブナ林
山頂に近づくに連れ美しいブナ林が広がる。山頂付近に立つ毎日登山200回以上登頂の名簿看板は圧巻だ。
ミツル
これは金剛山の毎日登山で200回以上登った人の名前じゃよ。金剛山山頂には毎日登山の記帳所があり、そこで押印してもらうことで登った証になるのだ。ここに掲げられた人たちは、健康や鍛錬のために毎日登り、心身ともに鍛え上げられた歴代の猛者達と言えよう。
おばやし
にしても、トップは1万8千回以上って・・・。スゴすぎる!

さあて、山頂広場に向かいましょう!それにしても山頂周辺には、トイレや売店もあって多くの人たちで賑わってますね。それぞれ別々に登ってきても山頂で挨拶を交わす顔見知りの人たちがいるのを見ると、この場所が交流の場になっているのも分かります。

わ〜い!やってきました山頂広場。大阪の町並みから遠くに六甲山まで一望できます!
奈良・大阪「金剛山」山頂
山頂広場からは阿倍野から梅田まで連なる大阪市内のビル群を望むことができる。
ミツル
では「山頂定点カメラに写る」という大事なミッションを行う!大阪の眺めを背景に「金剛山山頂」の看板の前に立ち、ポースを決めよ。シャッターは毎時10分ごとに切られる。山頂の時計がその時間を正確に刻んでいるので、タイミングを逃さないように!写真は以下のホームページでチェックできる。
http://www.kongozan.net/live/kongolivetemphis6_12.html

せ〜の!ばんざーい!
奈良・大阪「金剛山」山頂定点カメラ
山頂で知り合ったベテランハイカーから立ち位置を指導してもらい、定点カメラに収まるおばやしとミツル。心なしかおマヌケに見えてしまう。

河内長野の昼飲み酒場『呑々』から名酒場『酒菜亭 丸福』へ

おばやし
階段が続く下りは下りで結構しんどかったですね〜。しかもバスの時間が気になって仕方ない。でも順調に1時間半で下山して、ゆとりをもってバスに乗れましたね。ではいざ下山後酒場へ。
大阪・河内長野『呑々』外観
河内長野駅前のアーケードに佇む『呑々』。シャッターが閉まった店が多い中、昼間から掲げられた縄のれんが飲んべえハイカーの心の支えだ。
ミツル
河内長野駅周辺には飲食店も多く、下山後酒場の条件を満たすお店はいくつかある。その中でも孤高なムード漂うルックスが気になる『呑々』へ行ってみましょう。

営業時間が14時から19時までという、一般の方には変則的ながら、下山後ハイカーには最適な営業スタイルを貫く酒場です。
おばやし
ええ!? 14時から19時って、居酒屋としては攻めすぎの営業時間!でも15時〜16時くらいに下山することを考えれば、ほんと助かる。こんにちは〜。

え、、、立ち飲み?
ミツル
心配するでない。こちらはカウンターだけの立ち飲みスタイルのお店ではあるが、折りたたみ椅子が4脚用意されているので着席可能なのだ。ゆえに大人数での来店は避け、他のお客さんに配慮して楽しむのがハイカーとしてのマナー。ではさっそく私は瓶ビール(アサヒ中650円)を!
おばやし
なるほど。
では折りたたみ椅子をお借りして着席! 私は生ビール(中600円)にしますわ。
アテには何にしようかな〜。ふむふむ、メニューはカウンターの奥に掲げられたホワイトボードにあるのね。え〜と、らっきょ100円、シュウマイ220円って、安すぎやしません? ではでは鶏唐揚げ(220円)でお願いします。
大阪・河内長野『呑々』マスター、メニュー
「アテは基本買ってきたもんをそのままかチンやで〜」と異色の経歴を持つダンディーなマスター。もはや潔さを感じる安くてシンプルなメニュー表。
ミツル
ここは贅沢な酒肴をたらふく食べて楽しむと言うより、お酒でさっと喉を潤し、マスターや常連さんとの触れ合いを楽しむ店。営業時間が示す通り、長居は無粋なことよ。じゃあ私は缶詰(320円)のオイルサーディンとチーズクラッカー(160円)をお願いします!

ぷはぁ〜。やっぱりうまいのぅ。
さて改めてこちらを紹介すると、高橋さんはもともとプロを目指すほどの腕前を持つジャズドラマー。
しかしその道は諦めるも芸能関係の仕事に長年携わり、10年前の60歳で退職を機にこの店をオープン。料理は未経験ながら、その気さくな人柄で、ご近所さんに親しまれる存在となっている。
大阪・河内長野『呑々』オイルサーディン、鶏唐揚げ
缶詰はカウンターに10種類程度並んだ中からチョイスする。カレーを必ず食べる常連さんもいる。シンプルイズベストな唐揚げ。
おばやし
なるほど〜。マスターはダンディーで素敵♡軽い毒もたまに吐くけど、なぜか爽やかに感じてしまうわん。

お! マスターが冷蔵庫から何やら一升瓶を出してきたわよ! なんと常連さんにしか提供しない地酒(600円)を飲ませてくれるって! 温かいおもてなしも嬉しいなぁ。

さてさて、喉も潤って小腹も満たしたら、本格的になにか食べたくなっちゃった・・・。
大阪・河内長野『呑々』地酒
地酒は基本的には提供していないが、マスターの気が向けば、その時にあるものを冷蔵庫から出してくれる。
ミツル
せっかく河内長野まで来たなら、この地の人気酒場である『酒菜亭 丸福』へとハシゴをしようかのう。
マスターも推薦する河内長野の名店のひとつで、しかもここから歩いて3分。

17時オープンの一般的な営業時間なので下山後酒場の条件は満たさないものの、第四の隠れた条件である「条件を凌駕する魅力があればこの限りではない」を発動する。それに今回は『呑々』→『丸福』という河内長野特別ハシゴ酒プラン。細かいことは気にせずレッツゴー!

念のために申し上げれば、同店も以前は通し営業で、下山後のハイカーの利用が多かったものの、現在は15時から17時は休憩時間となっている。

ただし11時30分から15時の昼営業時でも料理によっては、夜メニューもオーダーできて、しかもお酒も飲める。つまりその時間内に急いで下山すれば、下山後酒場としての利用もできないことはない。
大阪・河内長野『酒菜亭 丸福』外観
『酒菜亭 丸福』はアーケードから外れた場所にあるが呑々から歩いてすぐ近くだ。今年で創業55年で現在は二代目大将の福谷登さんが切り盛りしている。
おばやし
(出た、ナゾの拡大解釈・・・。頑なに死守してきた三箇条はなんやってん)

こんばんは〜。うわ! 開店直後なのにほぼ満席! なんとかカウンターに座れましたけど、この人気ぶりなら予約は必須ですね。

しかもこの豊富なメニュー! 揚げ物、串物、鍋物、魚介、ご飯に麺類まで、ゆうに100種類以上あるわ。これは迷っちゃう。え〜と、なになに? おすすめは定番のだし巻き玉子(520円)だって? じゃあそれを! あとは揚げシューマイ(420円)、馬刺し(1080円)、ホルモン鉄板焼き(690円)、それにをお願いします。飲み物は生ビール(中500円)で。

あ〜ん、でもオムライスやチャンポンなどのご飯物や麺類も魅惑的〜。
大阪・河内長野『酒菜亭 丸福』地酒、タルトマ塔
地酒は全部で6種類。6700円で一升瓶がオーダーできる。盛り付けも楽しいクリームチーズのタルトマ塔。
ミツル
太りやすい炭水化物をたまには我慢しなさい! え〜と私は河内長野の地酒「天野酒 吟醸原酒」(670円)を楽しみましょうかね。
アテはミノの湯引き(630円)とクリームチーズのタルトマ塔(580円)で。

お、来ました天野酒。
う〜ん、力強くもスッキリとして切れのある味わい。登った山の麓で醸された地酒は最高ですな〜。ミノの湯引きもコリコリした食感が心地よく、噛むと旨味が広がり美味。馬刺しも旨い!
大阪・河内長野『酒菜亭 丸福』馬刺し、だし巻玉子、ミノ、シューマイ
みずみずしい馬刺しは甘口の九州醤油につけて味わう。食べ応え十分なボリュームがあるだし巻玉子。おばやしが絶賛したミノの湯引き。ミツルの好みも聞かずにソースで揚げシューマイを味わうおばやし。
おばやし
熱々のだし巻き玉子もふんわりとして、しっかり出汁がきいてます! う〜んどれも丁寧な仕事ぶりが垣間見えておいしいですわ。
でもこれだけのメニューを全部食べるとなると、何回も通わないといけませんね。河内長野市民がうらやましい〜。今度来るときはお鍋を予約しようかしら。

と、いつもならシメにガーリック炒飯(850円)あたりを頼むところですが…この先、もっと大きな山にチャレンジすべく、消費カロリーを上回らないように気をつけて(もう上回ってる?)、、、今回はこれにて!

profile

藤川満

藤川 満

神戸在住のフリーライター。全国各地の低山と酒場をフィールドに飛び回る。日本酒をこよなく愛し「日本酒では全く酔わない」が口癖。編著に「にっぽん百低山 吉田類の愛する低山30」(NHK出版)がある。
instagram@fujikawamitsuru

おばやし零余子

おばやし零余子

兵庫県宝塚市在住の独身アラフォー編集者。酒と酒場好きで、年々大きくなる身体に危機感を覚え山登りに目覚めるが、一向に痩せる気配なし。最後の晩餐は雑煮。

脱力系山歩き酒飲み連載「下山go酒場」

ベテラン酒飲みハイカー・ミツルと、初心者ハイカー・おばやしが下山後の至福の一杯を求めてトレッキング。

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