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正解よりも、いま、この時を生きる。「日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ―」/正和堂書店のおすすめ

大阪市、今福鶴見駅からちょっと歩いたところにある『正和堂書店』は、小西さんご家族が経営する街の本屋さん。実は鞄からチラ見せしたくなるオリジナルブックカバーが大人気の書店さんでもあります。本はココロのごちそうといいますが、ブックカバーに包んで大切に持ち歩きたい、おいしい本を書店員の小西さんにご紹介していただく連載「ブックカバーの下はごちそう」。

最終回は、森下典子さんの『日日是好日ー「お茶」が教えてくれた15の幸せ』。
納得のいく説明がほしい、効率的に生きたい、正しい道だけを選びたい…ついそんな風に考えてしまいがちだけれど、
時間をかけて、人生を深く理解し味わった時だけに見える景色があります。

日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ―(新潮社)/森下典子

「生きやすくなるコツ」や「人間関係が楽になるには」といった本に、つい惹かれてしまいます。
答えをもらって、すぐに効果を実感したいと思ってしまうからです。
書かれていることを実践して、最初は何となくうまくいっている気がします。でも次第にうまくいかなくなり、続かなくなって、また別の本に頼る…。

そんな繰り返しに疲れを感じていた時、ずっと気になっていた一冊に手を伸ばしました。 『日日是好日』。
「毎日良い日」ってことかな? そう思えたらどんなにいいだろうと、期待しながら読み始めました。

日日是好日
著者の森下さんが大学生の頃から二十五年間習い続けてきた「お茶」について綴ったエッセイ。就職につまずき、いつも不安で自分の居場所を探し続けた日々。失恋、父の死という悲しみのなかで、気がつけば、そばに「お茶」があった。がんじがらめの決まりごとの向こうに、やがて見えてきた自由。「ここにいるだけでよい」という心の安息。雨が匂う、雨の一粒一粒が聴こえる……季節を五感で味わう歓びとともに、「いま、生きている!」その感動を鮮やかに綴る。
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本書は「お茶が教えてくれた15のしあわせ」が章立てで構成されています。
頭で考えようとしないこと。今に気持ちを集中すること。雨の日は、雨を聴くこと…。
どの章も、足元にある日常の中で、はっとさせられることばかりです。
中でも印象的だったのは「第十四章 成長を待つこと」。

森下さんがお茶のお稽古を始めたばかりの頃、先生に「なぜ?」と質問しても、はっきりとした答えは与えられず、
「理屈なんかどうでもいいの。それがお茶なの。」と言われました。
そうして十五年が経ち、当時は理解できなかったことが、「そういうことだったのか」と、自然にわかるようになったといいます。先生は、教えないことで教えようとしていたのでした。
お茶とは、「季節のサイクルに沿った日本人の暮らしの美学と哲学を、自分の体に経験させながら知ること」だと森下さんは言います。だから、本当に理解するには時間がかかるけれど、わかった瞬間、それは確かに自分の血や肉になるのだと。

…あぁそうか。
私はこれまで、簡単に手順や正解をもらい、手早く楽になりたいと考えてきました。
ですが、自分で迷い、経験し、時間をかけて答えを導き出すことこそが
自分の人生にとって大切な学びになるんですよね。

「日日是好日」という境地に至るには、今の私にはまだ余裕が足りません。
それでも、心に余裕がなくなっていると感じたら、時々この本を読み返したいと思いました。

すぐにお茶を習うことはできませんが、まずは自分のためにお茶を淹れ、季節のおやつを用意し、そのひとときを存分に楽しみたいです。

深く、じんわりと、「今この時を生きている歓び」を感じさせてくれる一冊でした。

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正和堂書店

seiwado book store

大阪・鶴見にある1970年創業の街の本屋さん。3代目の小西康裕さんが「読書時間がより楽しくなるように」とデザインしたオリジナルブックカバーが大人気。2代目の典子さん、3代目の康裕さん・敬子さんご夫妻(と4歳の長女)、康裕さんの弟・悠哉さんなど、一家で奮闘するSNSの総フォロワー数は20万人!
instagram@seiwado.book.store