大阪のディープな飲み屋街‟地獄谷“に潜む良店『天ぷらとお出汁 渉』

せんべろスポットとして有名な飲み屋街に2023年にオープン。鳥取出身の店主が営む専門店は、居心地よい空間とアラカルトで自由に楽しめる気さくなスタイルが魅力です。

有名な飲み屋街・地獄谷の一角に

『天ぷらとお出汁 渉(わたる)』があるのは、大阪・阪神野田駅から徒歩5分ほどの距離。野田新橋筋商店街の西側にある「地獄谷」との通称を持つ飲み屋街の一角だ。

迷路のように複雑な細路地に40軒もの酒場が乱立するそこは、昭和レトロな空気が匂い立つ独特のエリア。映画のロケ地としてもよく使われている。

『渉』外観
まだ新しさが残る真っ白な塗り壁が『渉』の目印。
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注文自由なカウンター形式

店主の安住 渉さんは、鳥取県南東部の智頭町(ちづちょう)出身。料理人修業を機に大阪に移り住み、14年勤め上げた「ホテルグランヴィア大阪」では日本料理店『浮橋』の料理長も務めていた実力派。その確かな腕前を生かしつつ、「もっと気軽に和食を楽しんでほしい」との気持ちから天ぷら専門店をこちらの細路地に開くことを決意。

天ぷらはエビや穴子、レンコンなどの定番を中心に常時10種ほど。そのほか茶碗蒸しや海老芋まんじゅう、海鮮春巻きなど魚介を生かしたサイドメニューが15品ほど。どれもアラカルトで自由に注文できるのが有難い。

揚げ油はクセがなく揚げ上がりが軽い米油を使用。天つゆは真昆布にウルメや鯖、イワシなどをブレンドした旨み豊かなだしがベース。そのまま飲んでもおいしい品の良い塩梅に整えて、素材の良さを真っ直ぐ引き立てることに重きをおいている。

『渉』店主の安住 渉さん
「やっぱり料理するのが好きで」と、安住さん。脳卒中で身体の左側が麻痺したハンデを乗り越え、料理人人生を貫いている。
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『渉』の天ぷら一例
天使のエビ500円は塩とスダチでいただくのがおすすめ。カリッと揚がった頭も美味。
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『渉』店内
穴子の一本揚げ850円。
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つまみにもなる季節の小鍋

「お出汁」と看板に謳うこともあり、季節の小鍋にも力を入れている。この日は冬を迎えて身を肥やしてきたサワラを主役に、ホタテ貝柱や牡蛎まで入った贅沢な内容。具材の旨みが溶け込んだだしは、思わず飲み干してしまうおいしさ。「この鍋だしをアテに日本酒を飲まれる方や、雑炊にして欲しいとリクエストされる方もいますよ」と安住さんが微笑む。

春はタケノコやハマグリを使うほか、秋は真昆布とマグロ節の一番だしをベースにした鱧と松茸の土瓶蒸しも人気が高いそうだ。

『渉』の季節の小鍋
季節の小鍋1200円。この日はサワラのほか、牡蛎や立派な椎茸が入っていた。柚子皮の香りが爽やか。
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『渉』の土鍋炊きご飯
注文ごとに炊き上げる土鍋炊きご飯も締めに人気。安住さんのご両親が鳥取で育てたコシヒカリを使っている。
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平日昼は弁当が1000円!

平日昼のみいただける弁当も、じわじわと人気を伸ばしている。メインのサワラとブリの幽庵焼のほか、鶏の竜田揚げ、ヒジキ煮、小松菜の炒め物、だし巻きなど季節替わりの副菜が8~9品も入った手の込んだ内容。

イートインだけでなく、テイクアウトも可能。事前予約もできるので、時間が限られたランチタイムに安心して楽しめる。

『渉』の弁当
平日昼限定の弁当1000円。この日のメインはサワラとブリの幽庵焼。鳥取のブランド長芋・ねばりっこのバター醤油焼のほか、下仁田ネギと明太シラスご飯など。
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「お得な弁当をきっかけに夜の来店もお待ちしています。天ぷら数品とビール1杯だけも、宴会利用どちらも大歓迎ですよ!」と安住さん。バーから焼鳥屋まで揃う酒場天国ではしご酒にいそしむのも良いけれど、2階の個室で鍋や天ぷらのコースに興じるという落ち着いた選択もまた、捨て難い。