大切な人も自分も幸せになる“おもてなし”/黒沢祐子【食べる角には福来たる】

仕事に全力を注いだり、家族を支えたり。私たちは、常に“誰か”のために忙しい。
だからこそ、本当は一番大切にしたいはずの自分の心を置き去りにしがちです。自然体で丁寧な生き方にファンの多い、ウエディング・ライフスタイルプロデューサーの黒沢祐子さんに、「食」を軸に自分を喜ばせるためのヒントを教えていただく連載「食べる角には福来たる」。
第2回は、「おもてなし」についてです。
おもてなしは気張るものではなく、むしろ人生が豊かになる時間。大切な人と優しい時間を過ごしたくなったら、ぜひ。

「おもてなし」は誰かのためだけじゃない

前回、私は自宅に友人を招いての「おもてなし」が大好きということに少し触れましたが、今回はもうちょっと詳しくお話させていただきたいと思います。

私の”おもてなし好き“の理由の一つは、育ってきた環境。家族以外の人が頻繁に集まってくるような家庭で育ち、我が家でお客さまに手料理をふるまう母の姿を小さな頃からずっと見ていたことが原点なんじゃないかなと思います。

そんな背景に加えて、20年以上ウエディングの仕事に携わっているのはやっぱり、もともと人に喜んでもらいたいという性分なんでしょうね。誰かが笑顔になるお手伝いがしたいという気持ちが私の土台になっているんです。

おもてなしって基本的には自分以外の誰かに対しての心配りみたいなものだと思うんですが、私はそれを自分自身に対してもやっています。たとえば20代で一人暮らしをしていた頃から現在まで、自分一人分のごはんであってもきちんと器を選んだり、テーブルコーディネートをしたり。自分を大切に扱うという意味では、前回のご自愛の話ともリンクするところですね。
これはもう趣味みたいなものかもしれません(笑)

ホームパーティは日常の一コマ

おもてなしというとハードルが高く思われるかもしれませんが、私の場合は「外に食べに行く?それとも家にする?」みたいにかなりカジュアルな感じで友人を誘います。

ホームパーティって、リラックスして過ごすためのツールのようなもの。気の置けない仲間となら、18時くらいに集まってもあっという間に日付が変わっちゃったりもしますよね。
おうちならではのクローズドな雰囲気や、お料理やコーディネートも含めて空間をまるごと喜んでもらえるのがおもてなしの醍醐味。あとは、人が来るとなると自然と家の中が片付くのもメリットだったりします(笑)
家なら、どんどん空いていくボトルを横目に「一体いくらになるんだろ…」って金額のことも気にしなくていいですしね(笑)

「テーマ」をつくるともっと楽しい

お酒やチーズなどを各自で持ち寄ってもらって、それ以外は「手ぶらで来てね〜」というのが私のスタンス。テーマや季節を起点に、メニューやテーブルコーディネートを自分で一からプロデュースするのが楽しくて! 友人には「監督」と呼ばれています(笑)。

これはお仕事も兼ねていたんですが、最近は“ロゼワインに合う春のお花見”をテーマにしました。ちょっとエスニックなお花見をイメージして、ちらし寿司や中東っぽい春巻き、水餃子、クコの実やナツメを合わせて薬膳風に仕上げたイチゴとトマトの赤いサラダなんかを作ったかな。外食先でお料理のヒントをもらうことも多いですね。

テーブルクロスひとつで食卓の雰囲気が一気に変わるのもおもしろいんですよ。真っ白なクロスをベースにブラウンやブルーのランチョンマットを色のアクセントとして置いてみるのも簡単にかわいくなるのでおすすめ。季節やテーマに沿ったお花も生けるようにしています。
みんなに喜んでもらうためにあれこれ考えることが本当に幸せなんですよ。

テーブルコーディネイト
料理
淡路島のレストランで出合った料理からヒントを経て、食卓のレギュラーになったサラダ。
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お料理やテーブルコーディネート以外の要素で大切にしていることは、音や香り。
メキシコ料理ならメキシコの音楽を流したり、夜が深まってくるのに合わせて音楽のムードを変えたりも。アロマキャンドルは香りが邪魔するため食事中には焚かないのですが、食後にホッとひと息つく時間にはキャンドルの光だけでリラックスタイムを過ごします。

おもてなしは絆を深める時間

一人であってもパートナーと二人でも、普段から食の時間を大切にしています。だから、ホームパーティでも黒沢家定番のスパイスカレーを出すこともありますし、「いつものグラタンが食べたい!」とリクエストがあれば、「オッケー!じゃあメニューに入れるね」と応えたりもします。

自宅にお招きする人は基本的に仲の良い人たちばかり。若い頃とは違って“人間関係は太く深く”だと思っているので、仲間たちと本音で言葉を交わしたり、やりたいことや悩みを話したりできる時間は人生のなかでかけがえがない宝物です。

おもてなしは、自然体の自分のままで、大切な人たちとの絆を深める時間を作ることなのかもしれません。

連載「笑う門には福来たる」

ウエディング・ライフスタイルプロデューサーの黒沢祐子さんに、「食」を軸に自分を喜ばせるためのヒントを教えていただきます。自分も、大切な人もハッピーになれるヒントが満載。

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writer

黒沢祐子

yuko KUROSAWA

ウェディング・ライフスタイルプロデューサー。
東京、神戸で7年以上ウェディングの現場を経験し、「より密にお客様と対峙したい」という思いから、2008年よりフリーランスへ。会場探しから共に行うスタイルが好評で、2016年にYUKOWEDDINGを設立。現在までに1000組以上のカップルを担当する。
一方で、2020年の鎌倉移住をきっかけにライフスタイル事業をスタート。現在は東京を拠点に、美容、ファッションなど総合的にプロデュース。2022年より、プライベートサロン「Y’s room」を主宰。
instagram@yukowedding