一生大切にしたい、台所道具のこと/黒沢祐子【食べる門には福来たる】

仕事に全力を注いだり、家族を支えたり。私たちは、常に“誰か”のために忙しい。
だからこそ、本当は一番大切にしたいはずの自分の心を置き去りにしがちです。自然体で丁寧な生き方にファンの多い、ウエディング・ライフスタイルプロデューサーの黒沢祐子さんに、「食」を軸に自分を喜ばせるためのヒントを教えていただく連載「食べる門には福来たる」。

第11回は、料理好きの黒沢さんが一生付き合っていきたいほど愛用している台所道具についてお話を伺いました。

道具が人生を豊かにしてくれる

キッチン周りのアイテムは、スタイリッシュ過ぎるものよりも温かみのある方が好きなんです。
そして、愛着のある台所道具でお料理をして、お気に入りの折敷に食事を御膳のように並べてゆっくりお酒を飲む、というのが私なりの休日の楽しみ。自己満足の世界なんですけど、それがいいんです。

使うほど暮らしに馴染む「野田琺瑯」

栃木県の老舗「野田琺瑯(ほうろう)」の道具はどれも、シンプルでやわらかな雰囲気がとても気に入っています。

最初に手にしたのは、小さなお鍋だったかな。いまは、切った野菜などを置いておくバットから、味噌作りに使うような大きな保存容器、オイルポットまでいろいろなバリエーションを揃えています。日本製という安心感もありますし、とにかく丈夫で使い勝手もいいんです。

使い込むうちに表面が剥がれても、それもまた味というか、どこかアンティークのような風合いが出るのもいいですよね。大量生産では醸し出せない手作り感やいびつさが、暮らしに馴染むなぁと日々感じています。

野田琺瑯
「野田琺瑯」のトレイなど。これ以外にも、お味噌を入れる用の大きなサイズのものも愛用しています。
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食卓の幅が確実に広がる焙烙

焙烙(ほうろく:ゴマなどを炒るための小さな鍋)も、私にとっては欠かせない道具ですね。使い道が少ないと思う方もいらっしゃるかもしれないんですが、実はこれが本当に万能なんです!

例えばほうじ茶や緑茶の茶葉を煎ると香ばしく香り豊かになりますし、栗はほくほくになっておいしいんです。お塩の水分を飛ばして、サラッとまろやかにすることもできますよ。ちょっとした一手間なんですが、焙烙があることで食の楽しさが増したように思います。

フライパンでもいいんですが、陶器だからじっくりと熱が入りますし、少量だけ気軽にサッと使えるのでおすすめしたいポイントです。

炮烙
炮烙でほうじ茶の茶葉を炒ると、香りが立って一層おいしくなります。
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道具を“育てる”という楽しみ

最近は土鍋の面白さにもハマっています。
やっぱりご飯がおいしく炊けるし、抜群の保温力も魅力。温かいまま食べたい鍋物や蒸し物、煮込み料理などにも大活躍してくれています。

サイズや種類の違うものを駆使しているんですが、2日に一度は登場するほど愛用しているのは、作家の吉田直嗣さんのもの。2合炊きくらいの小さなお鍋を使ってお米を炊いたり、一人鍋にも使っています。あとは、三重県の土楽窯(どらくがま)のお鍋もお気に入りですね。

ただ、土鍋って少し付き合い方が難しいんです。
お米の水加減などもそうですが、最初は扱い方がわからずにヒビを入れてしまったこともありました。
そこからより丁寧に向き合うようになって、お米を炊くときのシューっという音に耳を澄ませて対話してみるのも楽しくなりました。「あ、仲良くなれた!」って(笑)。 こんなふうにじっくりと育てていくような過程も含めて、愛おしい暮らしの相棒ですね。

長く愛したいものに囲まれて、日々の暮らしや人生が豊かになっていると実感しています。

手前が土楽窯、後ろのふたつが吉田直嗣さん作。
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連載「食べる門には福来る」ウエディング・ライフスタイルプロデューサーの黒沢祐子さんに、「食」を軸に自分を喜ばせるためのヒントを教えていただきます。自分も、大切な人もハッピーになれるヒントが満載。

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writer

黒沢祐子

yuko KUROSAWA

ウェディング・ライフスタイルプロデューサー。
東京、神戸で7年以上ウェディングの現場を経験し、「より密にお客様と対峙したい」という思いから、2008年よりフリーランスへ。会場探しから共に行うスタイルが好評で、2016年にYUKOWEDDINGを設立。現在までに1000組以上のカップルを担当する。
一方で、2020年の鎌倉移住をきっかけにライフスタイル事業をスタート。現在は東京を拠点に、美容、ファッションなど総合的にプロデュース。2022年より、プライベートサロン「Y’s room」を主宰。
instagram@yukowedding