苦楽園の名バー『BAR THE TIME』が30年の歴史に幕

2024年12月27日(金)、関西が誇る老舗バーがその歴史に幕を閉じます。兵庫・苦楽園の『BAR THE TIME』。80代のバーテンダー・宇座忠男さんが華麗にシェーカーを振る姿も今月で見納めです。温かく、ほっこりと酔わせてくれた宇座さん夫婦に感謝を込めて──。ご報告させていただきます。

突然のお手紙が…

「二人で撮ってもらったこと、あんまりないから…」と照れながらも、カメラに笑顔を向けてくれたのは、80代となった宇座忠男さんと、千恵子ママ。今年秋に撮影した『BAR THE TIME』ご夫婦の素敵なツーショットです。

9月に飲みに伺い、お元気な姿を拝見した際は、「少しゆっくりと週3日の営業を続けていくつもりです」と仰っていたのですが…。

先日、一通の手紙が届きました。
「年末を区切りとしてBAR THE TIMEに幕を下ろす事に致しました」。

切り絵作家・成田一徹さんも愛したバー

サイドカー
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オレンジの華やかな香りが漂う、サイドカー1300円は名物カクテルの一つ。コースターには、切り絵作家の成田一徹さんの作品が使われています。バーを愛し、バーに愛された成田さんもまた、この店の常連の一人でした。

グラスの下には「MEN’S BAR」の文字が隠れています。「英米でスタッグ(牡鹿)バーと呼ばれる、男臭いバーをやりたかった」。2013年のインタビューで宇座さんは話してくれましたが、もちろん女性もウエルカム。私にとっても居心地よきバーです。

オーセンティックながら、アットホーム。広い店内にはテーブル席もあり、窓には夙川の四季が広がります。桜の時季はひときわ明媚でした。ほっこりと酔えて癒される。そんな時間が『BAR THE TIME』にはありました。

記憶に残るバーテンダー

弊社から12月2日に出たばかりの『神戸・芦屋・西宮100選』にも掲載した貴重な一軒が、発売後すぐに閉店してしまい、読者の皆様には申し訳なく思っております。ですが…。関西のバー文化を牽引した素晴らしいバーテンダーの尊い姿を、皆様の記憶に残せることができるのならば幸いです。

折り目正しい接客で、所作が一つ一つ美しい宇座さんのバーテンダーとしての時間は、残りあと少し。

「お客様にとって心に残る『ひととき』となりますように精一杯務めて参りますので
最後までどうぞよろしくお願い申し上げます」。

終幕を告げる手紙は、こんな一文で締めくくられていました。

兵庫・苦楽園『BAR THE TIME』
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『神戸・芦屋・西宮100選』は、「あまから手帖」に掲載した人気店、名店をジャンル別にご紹介!

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