「湖国 滋賀の幸 美食フェア」に向けて 料理人が食材生産者を訪ねる近江小旅
今回は、和邇(わに)からスタートして、北はマキノ町まで、湖西~湖北を巡って漁港や牧場、農園などを視察し、生産者の生の声を聞く、料理人にとってはアイデアが次々と生まれる嬉しい小旅。この旅で巡り合った食材の一部は、もちろん実際にフェアの料理に使われていますから、「誰がどの食材を?」と食べ歩いて探るのも一興ですね。
では、腕きき料理人たちの食材小旅を、追体験しに出かけましょう!
琵琶湖の恵み、湖魚をより美味しく『湖魚クラブ』
まずは、琵琶湖大橋から5kmほど北上した湖西・和邇漁港へ。漁業を営む横江拓郎さん・佳奈さん夫妻を訪ねます。横江さんは、琵琶湖の固有種である瀬田しじみやビワマスの漁を中心に漁を行い、淡水魚介を販売するほか、フナやコイ、外来魚のブラックバスなど、食用にされることが少ない魚の美味しさも伝えたいと『湖魚クラブ』を結成。飲食店と料理イベントを共催するなど、琵琶湖の水産業に広くコミットしている意欲的な漁師さんです。
この日、佳奈さんが見せてくれたのは、エリ漁で獲れた氷魚(鮎の養魚)を養殖した、言わば琵琶湖生まれの養殖鮎、通称「近江鮎」や、固有種のホンモロコ、ワカサギなど。これらの魚種はすでに琵琶湖を代表する湖魚であり、なかでもホンモロコは、養殖・天然が選べて冷凍でもあまり味が落ちないということで、料理人さんからの引き合いが増え続けているとか。また、冬によく揚がるというハスや、ブラックバスにもみなさん興味津々。特にブラックバスは、活きのいいうちに神経締めを施し、ドリップを除きながら1~2日熟成させてから冷凍させるという手の掛けよう。こうすることで身がモチモチになり、より美味しくなるのだそう。
その後、やはり水産業を通じて地域・自然との連帯を目指す『フィッシャーアーキテクト』の主宰者・駒井健也さんの漁船に乗せてもらい、みんなで穏やかな湖上へ。水深10~15mの場所に建てた漁解禁間近のエリや、竹筒を沈めて鰻やエビ類を誘い入れる「筒漁」を、実演を交えて紹介してくれました。京都の和食『麩屋町のざき』の料理長・上野貴吉さんは「小鮎は季節の天ぷらで琵琶湖産をよく使います。今気になっているのはブラックバスですね。横江さんの締めたものは、見るからに身質がいい」と大いに期待の面持ちです。
近江牛ひと筋130年、独自の肥育法を開拓する『大吉牧場』
続いては、高島・安曇川町の『大吉牧場』へ。明治29年創業、近江牛ひと筋という歴史のある牧場でありながら、精肉・肉加工品の販売店、近江牛レストランも運営する意欲的なグループカンパニーでもあります。会社を束ねるのは、4代目の永谷武久さん。但馬系のなかでも優良血統にこだわりつつ、日々のトライ&エラーで独自のデータを取り、最良の肥育方法を追求しているアツい社長さんです。
「僕らが目指しているのは、むやみと霜の降ったサシではなく、“小ザシ”と呼ばれるきめ細かなサシの入った肉質。粗脂肪が少なく、粗タンパクが多くなることで旨みを醸すアミノ酸が増え、赤身の美味しさが増すんです」と永谷さん。一方で、口溶けのよさの指標となる「MUFA(一価不飽和脂肪酸)」の数値を重視しており、去勢牛がMUFA55前後のところ、「先日出荷したウチのメスは68。脂肪の融点が低く、旨みが多いです」。
サシの入りすぎを抑えるために、米や麦を炊いて乳酸発酵させた発酵飼料を食べさせること、収穫後の稲わらから堆肥を作り、その堆肥を田畑に戻す循環型農業にいち早く取り組んだこと…。『大吉牧場』の理に適った施策を聞きながら、牧場から少し離れた街なかにある精肉店『大吉商店』へ。
「ハネシタやサーロインはご存知でしょうけど、クリ身(腕の一部)とかチカラコブ(スネの一部)とか、あまり知られてなくて相対的に安価な部位も食べてみましょうか」と、キッチンでカットしてプレートで焼き始める永谷さん。「脂がスープみたいに軽い!」「部位によって食感が全然違いますね」「ラードの代用としては…なるほど、チチカブの脂が面白いかもしれませんね」とみなさんコメントが続々。美味しい近江牛には多くの料理人が関心を示す、ということですね。
循環型農業を志す農園でカブの甘さに驚嘆『みなくちファーム』
少し日が傾く頃に到着したのは、本フェアの“常連”、高島・マキノ町の『みなくちファーム』です。堆肥作りや植林、ファーマーズゲストハウスの運営まで行い循環型農業を展開する水口 淳さんの農園は、農場長の瀬口結以さん曰く「米・麦・大豆が2ha、野菜が6haほど」。その広大な田畑を、水口さん、瀬口さん、大橋さんとパートさん1人を加えた、たったの4人で回していると聞いて、一同ちょっとザワつきます。
原木椎茸のホダ場では「オガ菌」と「駒菌」の違いを教わり、「伝統野菜の万木(ゆるぎ)カブに、あやめ雪かぶ、日野菜、味こがね…」とカブ系の作物だけで何種類栽培しているのか、という畑の見学を経て、自慢の野菜の試食へ。
カリッ、パリッ、ポリポリと気持ちのいい音を立てながら、すべて生でかじりつくと「メチャ甘い!」「後から後から味が出てきますね」と感嘆の声。「肥料が効きすぎるとえぐみが出ることもあるんですが、私たちの田畑はすべて有機JAS認証を取っていますから、有機肥料を使って野菜を育てており、野菜本来の味がします」と瀬口さん。芦屋の『和心料理 Takasaki』の高﨑智浩さんは「真冬のサツマイモならどんな品種がありますか?」と、何か考えついた様子で相談を始めていました。
多彩な作物を育てる駅チカ農園『ひら自然菜園』
最後に訪ねたのは、大津・蓬莱の『ひら自然菜園』。JR蓬莱駅にほど近い、比良山系と琵琶湖に挟まれた丘陵地に延べ2.5haの畑を擁し、年間50~60種の作物が育てられています。「直売所・マルシェでの販売や、詰合せ野菜の定期便に力を入れています」とあいさつするのは代表の加地玄太さん。福祉事業所の利用者さんに農作業や野菜の洗い・袋詰めを手伝ってもらうなど、地域社会との交流にも心を配っている農家さんです。
「有機JAS認定は取得していませんが、それにごく近いレベルの有機農法を採っています」と加地さん。農薬も、微生物を用いた“天敵農薬”のように毒性の低いものを、どうしても必要な作物にのみ使っているそう。
階段状の畑を上って、あれはレタス、これは春菊、こっちは茎ブロッコリー、ケール…と案内しつつ「ちぎってそのまま食べてみてください」の言葉に、みなさんプチッとやってはパリパリ。「茎ブロッコリーは茎が細くて、皮むきをしなくても食べられるんですね。あ、甘い。青くささもないですね」「ケールは分厚めで、苦みもある。肉料理とバッチリ合いそう」と「取って食う」試食会は盛り上がります。「芽キャベツを包んでいる、可食部ではない葉の部分を飾りに使えないかな。枚数はどれくらい揃いますか?」とマニアックな質問も飛び交っていました。
生産の現場を巡り、事業者たちの生の声を聞く視察の小旅は、こうして日没とともに終了。料理人たちが新たに知った魅力的な食材、初めて体験した美味しさは、新たな料理に結実します。1月23日からの「湖国 滋賀の幸 美食フェア」で、その成果をぜひ美味しくお確かめください。
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- 備考
- 【記事に関する問合せ】
滋賀県みらいの農業振興課 食のブランド推進室
【電話番号】
077-528-3891
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