“カステラ”とは何が違う?江戸で話題の「カスドース」”
まるまるの毬
西條奈加著 講談社/792円
吉川英治文学新人賞受賞作。江戸時代、国中で修業した治兵衛が、親子三代で営む菓子店「南星屋」。
そこを舞台に繰り広げられる時代小説だ。直木賞作家が贈る、家族の絆に心がほっとする話が満載。
私は、書店員歴20余年になりますが未だ“読まず嫌い”もありまして…。時代小説も普段は読みませんが、そのジャンルを開拓できたのが本書。文章も堅苦しくなく、漢字が連なった長い名前の登場人物も出てこないので、親しみやすくて。お菓子の名前が章タイトルの短編集になっていて、それぞれに人情味のある話で展開されています。
結果、どれも読後にほんわかと温かい気持ちになれる私好みの内容でしたが、一番興味を持ったのは「カスドース」の話。多分これ、今で言う“カステラ”のことだと思うんですけど、説明が文面だけなので一体どんなお菓子か想像するしかありません。でも、最近は材料の色や作り方、味や食感の描写、どの地域のものかなどの情報を頼りに、ネットで検索すれば写真が見つかる。それも、今っぽい本の楽しみ方かなって思います。
店長 越智里香さん