
神戸・元町『パティスリーモンプリュ』のサロンで味わう季節デザート
実は『モンプリュ』閉店まで残り5年!
ショーケースに並ぶケーキは余分な装飾は廃し、どれもキリッとシャープで端正。甘みや酸味の輪郭ははっきりと。また主題である季節のフルーツやリキュール、コーヒーなど用いた素材の香りも立っています。1つ1つが個性的で誰に薦めても間違いのない味。林 周平シェフの『パティスリー モンプリュ』は、神戸を代表するパティスリーです。
週末や長期休みの時期には全国からファンが来店します。例えばパティシエの卵である製菓学校の生徒さん、観光客や親子連れ、壮年の男性1人客などファン層が広いのも特徴です。皆さんせっかくお店まで来たからにはサロンでイートインをと、いつも待ち客の列ができています。
毎日厨房に立ち、若いスタッフたちと共に手を動かす林さんは、今年の年末に60歳を迎えます。曰く開業当時から『モンプリュ』は65歳で閉店すると決めて始めたそう。こちらののお菓子がいつでも食べられるのは神戸在住者のちょっとした自慢なのですが、それもあと5年かと思うと少し寂しい気がします。
『モンプリュ』のお菓子はなぜ美味しいのか
日本のホテルでキャリアスタートした林さん。その後念願だったフランスでの修業に。『ニッコー・ド・パリ』と、フランス本国にも多大な影響を与えた『ジャン・ミエ』で働き、現地の菓子とそのスピリットを存分に吸収して帰国しました。『シーサイドホテル舞子ヴィラ』や『御影髙杉』製菓長を務めた後に独立し、元町にて『モンプリュ』を開業しました。
吟味した材料を用い、菓子が完成するまでの各工程の最適解を導き出し、手間を惜しまず作られる『モンプリュ』の菓子。例えば何十種類ものチョコレートやリキュールを使い分け、メレンゲもクリームも一瞬のタイミングをも逃すことなく立てる。甘いものは甘く、酸っぱいものはしっかり酸味を補い際立たせてと、表現が明確です。こうした緻密な工程の積み重ねで『モンプリュ』の菓子の味は成立しています。林さんは当たり前のことと、事もなげに語りますが、この精度で徹底して積み上げられているフランス菓子は、そうないのです。
定番のケーキ「ピュイ・ダムール」は、メレンゲの魔術師とも評される林さんの仕事が凝縮された一品です。上部の白いシブーストクリーム(イタリアンメレンゲとカスタードクリームを混ぜたもの)と土台にはシュー生地。カリッとキャラメリゼされた表面の食感とほろ苦さ。シブーストの中に潜ませたフレッシュのグレープフルーツのほのかな苦味とフレッシュ感がアクセントです。様々な食感を1つのケーキの中に集めて魅せる絶妙なるバランス。 こうした不動の定番の他にも、季節ごとのケーキも折々に登場します。「ペシュ・ペシュ」は桃のババロアとジュレ、桃のバタームース、松の実入りのダコワーズを重ねた夏限定の商品。桃の香りをしっかり感じ、各層の食感の違いも楽しい一品です。 同じく夏のケーキ「ニコロ」は少し弾力のあるライムのムースに、ライムの皮と果汁でしっかり酸味と香りを表現しています。中央には木苺のムースを挟んで、酸味と酸味を重ねた爽やかな仕立て。暑い季節でもさっぱり食べ切れるケーキです。
サロンで楽しむ、アシェットデセール
イートインは年間通して可能で、週末は行列のため各組着席から1時間制です。ショーケースのケーキはもちろん、本格的な皿盛りのデザートを食べられるのもこちらならでは。
桃が出始めると毎年楽しみにしているのが「ピーチ・メルバ」。開業時からの定番人気で、店で追熟させた桃をコンポートにし、煮たシロップはジュレにします。オリジナルレシピの自家製ソフトクリーム「モワルー」の上にコンポートを乗せて、桃のリキュールもほんの少し。上にはフランボワーズのソースをたっぷり掛けて。桃をそのまま食べるよりも桃らしさを感じる、ふくよかな甘みと舌触り。キリッと引き締める木苺の酸味に目が覚める思い。暑気払いにぴったりのグラスデセールです。
この夏のアシェットデセールからもう1品。「タンバル・エリーゼ」。クッキーの器の上には自家製のアプリコットのソルベ「ソルベ・アプリコ」と香り豊かなバニラアイスクリーム「グラス・バニーユ」。クレームシャンティイを絞った上に、薄氷のような飴を飾ります。周辺には木苺のソースをあしらって崩しながら味わう冷たい一皿。フレンチのコースの最後に出てくるデザートを食べているかのよう。こちらは1日限定5皿の提供ということで開店と同時が狙い目です。
ソースやアイスクリーム、または儚い食感の飴細工など、イートインでしか実現できないデザートの表現もさすがの精度です。
data
- 店名
- パティスリー モンプリュ
- 住所
- 兵庫県神戸市中央区海岸通3-1-17
- 電話番号
- 078-321-1048
- 営業時間
- 10:00〜18:00(イートインは16:00LO)
- 定休日
- 火・水曜、他不定休
- 交通
- 元町駅から徒歩5分
- 席数
- テーブル16席
- メニュー
- シュー・ア・ラ・クレーム480円、ミルフィユ700円、ベルガモット680円、マカロン238円、ムラング・ヴァニーユ600円。紅茶715円、コーヒー550円。
recommend