ランチ激戦区ならでは。割烹『天満橋 吉安』で平日1500円の和食膳

平日ランチは1種類のみの1500円。手間と心を尽くした和食膳が供される「天満橋 吉安」。開店から10周年を迎える隠れ家のような割烹です。

木箱を開けると思わず歓声が

食材も燃料費も高騰する昨今。ことに和食は高価になりすぎと思わずため息が出てしまう中、こんなにも良心的なお店があったとはビックリ。

まず赤い木箱の蓋を開けると、テンションが上がるのは必至。
ふっくらしっとりとしただし巻き卵に、蒸し鶏、青唐の焼浸し、エビのトマト炒めは和風のエビチリといった感じ。レンコンの塩バター炒め、サワラの幽庵焼き、オクラの天ぷら。猪口に盛られたひじきの煮物はちょっぴり甘めに柔らかく。
「焼く、煮る、揚げる、蒸す」の調理法を駆使し、彩り、食感まで考えつくされた8品は、もう会席の華・8寸のごとし。

「いやまぁ取り合わせです」と、店主は控えめだけれど。確かに昼でこれだけのものを作る吉安さんなら、夜の会席はさらに手の込んだ、もっと質の高い料理が供されるに違いない。それでも、この一膳は1500円の期待値を軽く超え、感動を覚えるレベルだ。

『天満橋 吉安』平日ランチ
界隈の方が仕事の合間に訪れるランチだから、スピード重視の一膳スタイルだが、熱いものは熱いうちにと、作り置きはしない。
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『天満橋 吉安』8種の前菜
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土鍋ごはんに味噌汁に甘味も

膳にはさらに、豚バラ肉のべっ甲煮が小鉢に。椀は真昆布のだしがしっかり効いた焼きネギとナメコの味噌汁。土鍋で炊く白ご飯がしみじみ美味しい。しかも自家製のジャコの佃煮までのっかっている。
香の物(春キャベツとキュウリのぬか漬けも自家製)と、季節のフルーツを使ったお手製の甘味も添えられてくる。
手間と心を尽くした和のランチセット。内容は日によって少しずつ変わるといい、毎日通う常連さんがいるのもうなずける。

『天満橋 吉安』豚バラ肉のべっ甲煮
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『天満橋 吉安』土鍋ごはんとジャコの佃煮
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『天満橋 吉安』甘味
この日の自家製甘味はイチゴ羊羹。優しい甘さにほっこり和む。
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開業10年、職人気質の店主が営む割烹

店主の吉安寿樹さんは、静岡出身。日本料理ならやはり本場・関西でと、大阪の料亭へ。さらに東京も見ておきたいと銀座の料亭へ移り、都合10年、腕を磨いてきたとか。ホテルや割烹でも経験を積み、「料理と酒は一心同体。酒に合う美味しい料理を作りたい」と、2016年にこの店を開いた。
ミナミやキタの繁華街より静かな街で、目の届く広さの店をと天満橋を選んだ。カウンター越し、「お客さまの反応がダイレクトに感じられてやりがいがある」と吉安さんは静かに話す。
一日中仕込みをしている料理好きの職人気質な方だ。

夜の会席コースも全9品8000円~とリーズナブル。酒は、高槻の「白菊屋」や茨木の「かどや」など信頼のおける酒屋と、旬の食材に合う酒を選んでいるとか。こちらも10数種100ml660円~と大変に良心的な値付け。

そうそう、土曜日限定ランチコースが3900円で用意されているので、遠方の方はこれを目指すのもアリかも。

『天満橋 吉安』店内
木目を基調とした和の店内。2人掛けテーブルや個室もあり。常連には50代くらいの味の分かった大人が多いのも納得の落ち着いた雰囲気。
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『天満橋 吉安』店主
一人客も多いという。カウンター越しに吉安さんの手際の良さを眺めるのも楽しい。
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writer

団田 芳子

danda yoshiko

食・旅・大阪を愛するフリーのフードライター。その地の歴史や物語を感じる食べ物・気質・酒が好物。料理人さんに“姐さん”と呼ばれると、己の年齢を感じつつもちょっとウレシイ。著書に『私がホレた旨し店 大阪』(西日本出版社)、 『ポケット版大阪名物』(新潮文庫・共著)ほか。