tupera tuperaさん(後編)楽しい食卓に“おもしろい”を加えると…
関西ファン !
関西ラバーな著名人インタビュー連載「関西ファン!」今回のゲストは、亀山達矢さんと中川敦子さんご夫婦のクリエイターユニットtupera tupera(ツペラツペラ)さん。前編は京都のお気に入りのお店を教えていただきましたが、後編は家族の食卓について伺いました。いつものお料理に“おもしろ”エッセンスを加えた、真似したくなる愉快な料理コレクションは必見です。
亀山流、“おもしろい”のある食卓
――普段の家での食事は、どちらが担当しているんですか?
亀山(以下、亀)どっちもです。その日の気分や仕事の状況によって。
中川(以下、中)そう、京都は食材が豊富なので、作るのも楽しいんです。
料理は得意ではないけど作るのは好きというお2人。「珍しい食材が揃う京都は買い物も楽しいんです」と中川さん。
――どんなお料理が得意なんですか?
中:味やメニューよりも、亀山の場合は、食卓を楽しくしようっていうのがすごくあるんです。
亀:特別な日は特に。「今日は五山の送り火だ」って日は、バジルパスタを作って、玉子をのせてにんじんで「大」って書いてみたり。娘の誕生日には、陸上をやっている娘が「スパムおにぎり食べたい」っていうから、スパムを並べて飛び石を渡る娘を作ったり…。
上/五山の送り火の日の力作。下/亀の飛び石に見立てたスパムおにぎり。勢いよく飛ぶ娘さんの躍動感がすごい!
中:子どもが小さい時は外食もしづらくて、友人家族が集まって持ち寄りパーティーをすることも増えました。そしたら、皆の料理がすっごく上手で。私たちは料理じゃ太刀打ちできないなって(笑)。それで、簡単で楽しいメニューを考えたんです。例えば牛のしぐれ煮の缶詰でおにぎりを作って、海苔で牛の模様を付けて。紙に描いた顔を付けたら、牛にぎりの完成!
亀:そしたら子どもたちががワーって喜んで、めちゃくちゃ盛り上がった。
中:わたしたちが勝負できるのは、こっちだなと(笑)。誕生日も、ケーキを手作りする時間がなくても、美味しいのを買ってきて、手作りのピックを飾ったら、オリジナルの特別なケーキになるんです。
上/可愛すぎる牛おにぎり。下/動物たちの賑やかなピックが、勢いよくケーキから飛び出しているみたい。
亀:家族でご飯を食べる時間が好きだし、お酒も好きだし。だから、普段の食事も家族が揃う夕飯は、丼みたいに、すぐ食べ終わっちゃうご飯が嫌なんです。滞在時間が長いやつがいい。
――滞在時間!(笑)
中:手巻き寿司とかね。
亀:「よし、今日はおもしろ手巻き寿司しよう!」って。手巻き寿司って普通に楽しいじゃないですか。でも敢えてそこに“おもしろ”ってつけるんですよ。
中:スーパーに行って、普通にお刺身セットとか、シーチキンも買うんですが、“おもしろ”の目線で「これ巻いたらいいかも」と思うものをみつけて買ってくるんです。あとは、在庫処理がてら冷蔵庫をのぞいて巻けそうなものを考えることも。
亀:オイルサーディンの缶詰とトマトとアボカドを混ぜて巻くとかね。
――お子さんたちも楽しいでしょうね。
中:いや、子供たちは「やれやれ」って感じですね(笑)。父ちゃんが「おもしろいのやるぞ」ってしつこくいうから…。で、結局は定番のツナマヨばっかり減るとかね(笑)。
亀:以前「父の日」に、子どもたちが覚えてなくてスルーするから、パスタ作ったんだけど、盛り付けを“父”にしたんですよ。毛筆で書いたような…。
皿から哀愁が漂いまくっている「父の日」の パスタ。
―― (写真を見て一同爆笑)
中:これは、かなりシュール(笑)。でもイケてなくていいですよね。
亀:大人がそういうの楽しんだほうがいいんです。エンターテインメントやから。
ちょっと苦笑いの中川さん。仲の良さが伝わってきます。
野菜から生まれた名作たち
――お二人の代表作には「やさいさん」や日本絵本賞・大賞の「わくせいキャベジ動物図鑑」など、食べ物をモチーフにした作品も多いですよね。
亀:食育とか意識してるわけじゃ全くないんです。同じような本は作りたくないから、テーマはいろいろなんですが…以前、雑誌で手作りおもちゃの工作の連載をしていたんですね。その中に「やさいカードばたけ」っていう、クッキーの箱に野菜のカードを植えるおもちゃがあって。子どもが抜くと、“ジャガイモさん”とか。後に、これは絵本にもなりそうだな、とひらめいたんです。
――それでできたのが、「やさいさん」なんですね。
左が『tupera tuperaの手づくりおもちゃ』(河出書房新社)で紹介した「やさいカードばたけ」。ここから着想を経て、大ヒットした仕掛け絵本「やさいさん」(学研プラス)が誕生。「質感やデフォルメにもこだわりました」と中川さん。
亀:「わくせいキャベジ動物図鑑」は、地球から831光年離れたところにある、キャベツの形をした“わくせいキャベジ”にニンジン(人型のにんじん)やカバチャ(カバのようなカボチャ)といった生物を紹介する絵本なんですけど…。 前から不思議に思ってたんです。なんでモグラとサツマイモって似てるの?とか、北海道にはトウモロコシがいっぱいで、北海道にはキツネもいる。両方コーン…ってなるじゃないですか?
――!!!確かに!
「わくせいキャベジ動物図鑑」(アリス館)より。レトロな雰囲気をまとった美しい動物図鑑。本当にいるのかも、と思えるような楽しい設定にワクワクが止まりません。
ツペラツペラ流、スーパーのすすめ
亀:こういう生物多様性の奇跡的な出会いを探しに、スーパーに行ったら、いつもとぜんぜん見え方変わると思うんですよ。白菜ってサイに似てる、とかね。 こういう見立てって、きっかけがあれば、いくらでもできるんです。スーパーに行って、値段や新鮮さで選ぶんじゃなくて、おもしろ手巻き寿司をしようって回ってもいいし、変な形の野菜を見つけようっていうのでもいいし。京都は珍しい野菜もたくさんありますしね。ぶらぶらするの、楽しいじゃないですか。
中:本当に美味しい野菜って、茹でただけとか蒸しただけの、形も色もそのままというものを手づかみで食べるほうが、ヘタに料理するより、子どもは興味もちますよね。
亀:一度そういう目で見てみて。決してふざけているのではなく、遊びが大事なんですよ。
中:そう、真剣に楽しんでいるんです。
――ありがとうございました! 来年はこれまで以上に制作に力を入れたいとおっしゃるお二人。次の作品が楽しみです!
tupera tupera(ツペラツペラ)さん
亀山達矢さんと中川敦子さんによる夫婦ユニット。絵本やイラストレーション、工作など幅広い分野で活躍。「やさいさん」「パンダ銭湯」「しろくまのパンツ」などベストセラーを多数生み出し、「わくせいキャベジ動物図鑑」では、日本絵本賞を受賞。NHK Eテレ「ノージーのひらめき工房」のアートディレクションも行っている。2019年に第1回やなせたかし文化賞を受賞。2022年に活動20周年を迎え、オリジナル切手が発行された。箱根「彫刻の森美術館」にて「しつもんパーク」展を開催している(2024年3月31日まで)。10月13日より、ペンドルトン社とのコラボした限定ブランケットが発売される。
【公式サイト】https://tupera-tupera.com/
Writer ライター
あまから手帖 編集部
amakara techo