市原隼人さん(後編)お気に入りの大阪名物と、大好きな料理のこと

市原隼人さん(後編)お気に入りの大阪名物と、大好きな料理のこと

関西ファン !

2024.05.20

文:椿屋 / 撮影:佐伯慎亮

関西ラバーな著名人インタビュー連載「関西ファン!」。今回のゲストは、来る5月24日公開の劇場版第3弾『おいしい給食 Road to イカメシ』で主演を務めた俳優・市原隼人さん。前編では作品に賭ける想いをお話していただきました。後編では、10本もの包丁を使い分けるほどの大の料理好きで、食べるのも大好きという市原さんの食へのこだわりや、大阪のお気に入りのお店について語っていただきました。

目次

大阪は「なんか、ほっとする」場所 食を以て、自分を律することも 給食は、人生みたいなもの。

大阪は「なんか、ほっとする」場所

――過去の映画撮影では、何か月間か大阪・十三にいらしたとか。

はい。地元の方と呑みに行ったりもしました。撮影中、監督とベースでモニターを確認していて、「あれ、新しいスタッフさん増えたかな?」と思っていたら、「飴あげるよ」って頂いて、「ありがとうございます」ってやりとりしてたら全然知らない地元の方で(笑)。その近い距離感が、大好きでした。壁をつくらない大阪って、愛おしいと思いました。大阪に来ると、いつも何だかほっとします。十三にいたときも、ずっと前からここに住んでいたような……人間愛に溢れてる感じが好きなんでしょうね。それと、(心斎橋・アメリカ村の)三角公園の近くにある『甲賀流』のたこ焼きが、すごく大好きです。大阪に来た時は必ずあそこに寄ります。つい食べたくなっちゃうんです。

――2024年3月にオープンした「SkyシアターMBS」の杮落とし公演『中村仲蔵』(藤原竜也主演)に出演されていた際にも……

はい、大阪で大千秋楽を終えたあともお店に行きました。

食を以て、自分を律することも

――ご自宅でたこ焼きを焼かれることはありますか?

よく焼きます。具材はシンプルに、たこ、キャベツ、紅生姜、それと揚げ玉。スカスカなのが嫌なので、とにかく具をしっかり入れます。食べ応えのある具材でパンパンになったたこ焼きが好みです。

――つくることも食べることもお好きなんですね!

役者じゃなかったら、わがままボディになっていると思います。役柄によって身体を作るので、例えば、先日の舞台『中村仲蔵』での役どころが、相撲部屋で鍛えた設定で、脱がなきゃいけない役だったこともあって、そのために体重を上げてたんですが……終わってみたらあまりにもむくんでるし、これから入る別役のために少し絞らないとなと思い、今は7kg落としたところです。

体型維持だけでなく、体調が悪いときはもちろん、メンタル面においても何かあれば食で治す――食を以て自分を律していくように心掛けています。自分でつくったものを食べていると、体調の変化もよく分かります。薬に頼るのではなく、オーガニックな食事で改善していきたい。そういう意味でも料理は、本当に大事にしています。

市原隼人さん切った断面によっても舌触りや味に違いが出ることから、食材やジャンルによって使い分けるため、気づけば包丁は10本以上に。「夜な夜な包丁を砥ぐのがストレス解消になっています」とのこと。

――とても食に気を遣ってらっしゃるんですね。

食べる量をコントロールしたり、腸を活性化させる為に善玉菌をどうやって増やしていくかを考えたり。一日三食って誰が決めたんだろう?って疑問に思って調べていけば、5回くらいで小分けにする方が必要な栄養分は吸収されやすいんじゃないか?って思い至ったり。そうやっていろいろ考えていくと、和食って本当に素晴らしいと思うんです。だしの文化ってすごいな、素材の味をしっかりいただけるってありがたいなって。海外に行く機会が増えれば増えるほど、日本の味、和食の良さをつくづく実感します。

――ご自身で料理される際も和食が多いのでしょうか。

和食が多いです。そして、シンプルなものが好きです。

――これぞ!という得意料理は何ですか?

う~ん……何でもつくりますけど、強いて言えば、なめろうです。鯵のなめろうが大好きで、常につくってます。べちょべちょにならないよう、生姜の水分はちゃんと絞って。なめろうは、生姜と味噌の分量が命ですから! あくまで鯵の味を楽しめるように。茗荷も大葉も入れて、とにかく量もたくさんつくります。

――たくさんって大事、詰まってるって大事、なんですね(笑)

たくさん食べたいんです(笑)。食事管理をしていない時は、ステーキも800g食べたりしますから。身体にとっては良くないので、少しずつ食べる量を減らしていかなきゃなと思ってはいるんですが……。健康のために心が不健康になるのはおかしいので、たまにはチートデーをつくって、好きなだけ欲を消化していくのも大事だと、自分を慰めながら、いっぱい食べちゃいますね(苦笑)。

――幼い頃から料理が身近だったのでしょうか。

そうですね。小さい頃からキッチンが遊び場でした。母からは「あんた、油の中で遊んでたのよ」とよく言われます。それぐらい、キッチンをぐちゃぐちゃにしても楽しんで見ててくれる母でした。戦後を過ごした祖母も食を大切にしていたので、彼女の影響もあると思います。子どもの頃は外食もほとんどなく、調理する母の姿を真似て、物心ついた頃から包丁を持って手伝っていましたので、必然的に料理が好きになっていました。

市原隼人さん多趣味でも知られる市原さん。思い立ったら富士山にも登るし、海外へも飛ぶ。それもこれも「全ては芝居のため。何度も嫌いになって何度も好きになってきた腐れ縁のような役者という職業と向き合うなかで、プラスになる。だから、趣味は逃げ道でもあるんです」。特にバイクは、「ネガティブな想いや八方塞がりの感情を全部風の中に置いていけるんです」

給食は、人生みたいなもの。

――「おいしい給食」におけるアクロバティックな動きは、食を含めた日々の身体づくりの賜物ってことですね。
改めて撮影を振り返ってみて、いかがですか?

このシリーズは、とにかく物凄くハード。狂気な役どころや精神的に深い芝居、もっと複雑な恋愛モノとか、何億円かの保険をかけて行う海外ロケでの身体を張ったアクションなど、これまでさまざまな作品づくりに参加してきましたが、群を抜いて一番ハードなんです。シーズン3の脚本をいただいたときも、一か月ほどは台本は読めませんでした。しっかりと腹を据えて向き合わなければ出来ない作品だったので、体力的にも精神面においてもやり切れるのかという点で、当初はとても不安でした。現場に入ればとにかくやるしかないので、ひたすら壁打ちをするような、千本ノックの日々。毎日いろんなことを考えながら、意外と緻密な計算の上で積み上げていく芝居を紡いで紡いで――、毎日、自宅で夜な夜な次の日のイメージを膨らませて…気がついたら朝が来ている、撮影はそんな毎日でした。

市原隼人さん美しく揃えられたシャチホコばりの両脚に、プルプルしない背筋! コミカルな中に、全身全霊をかけた市原さんの熱量が伝わってきます。(画像提供:「おいしい給食」製作委員会)

――25年の役者人生において、ターニングポイントとなった作品はありますか?

自分のことは自分が一番分からないものなのですが……例えば、「学校に行く勇気がなかったけど、『おいしい給食』を見て勇気が出ました」や「家族の会話が増えました」など、作品の感想として届く数々の言葉に励まされ、ターニングポイントって他人様によってつくっていただくものだと認識しました。それからは、自分自身の固定概念を排除して、「とにかく芝居をしてなんぼだな」という心持ちで、どんなことにも挑戦するようにしています。

――作中のセリフから引用させていただきます。「最後にひとつ聞かせてください。あなたにとって給食とは何ですか?」

給食とは……。
生かすも殺すも自分次第、でしょうか。すごく充実したポジティブな時間にも出来るし、人生においてのネガティブな時間にもなるもの。給食って、和洋折衷がぐちゃぐちゃなんですよね。米にも牛乳(笑)。矛盾だらけでまとまりのない献立が、まるで人生みたいだな、と。正解なんてない。ただ自分が思ったものを信じて、自分なりに美味しく食べることが大切なんだと思います。

市原隼人さん


市原隼人さん

神奈川県出身。小学5年生のときにスカウトにより芸能界に入り、2001年、映画デビューとなる「リリイ・シュシュのすべて」(岩井俊二監督/ロックウェル・アイズ)で主演を務めデビュー。2008年、「ROOKIES」(TBS)での演技により、第58回ザテレビジョンドラマアカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK)や「正直不動産」(NHK)など、話題作への出演も多数。趣味は、料理・バイク・カメラ。幼い頃から器械体操や水泳を習い、ボクシング経験からアクションを得意とする。写真家・映像監督としても活動中。

【instagram】https://www.instagram.com/hayato_ichihara/?hl=ja
【映画公式サイト】
映画『おいしい給食 Road to イカメシ』 https://oishi-kyushoku3-movie.com/


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