市原隼人さん(前編)「おいしい給食」は、いまできる自分の全て。

市原隼人さん(前編)「おいしい給食」は、いまできる自分の全て。

関西ファン !

2024.05.20

文:椿屋 / 撮影:佐伯慎亮

関西ラバーな著名人インタビュー連載「関西ファン!」。今回のゲストは、俳優・市原隼人さんです。主演を務める人気シリーズの劇場版第3弾「おいしい給食 Road to イカメシ」の、5月24日の公開を前に、作品の見どころと「給食」について伺いました。

目次

“人間の隙”を楽しんでほしい 市原流・甘利田節が炸裂! 学校給食の最強献立は、コレしかない!

“人間の隙”を楽しんでほしい

5月24日(金)公開の『おいしい給食 Road to イカメシ』は食ドラマとして人気のテレビシリーズの映画版第3弾。2019年にテレビ放送が始まった「おいしい給食」シリーズは、1980年代の中学校を舞台に学校教育や食文化を通して描く、人間味あふれる空前絶後の給食スペタクルコメディであり、笑って泣ける食育エンタテインメントです。主人公は、給食のために学校に来ているといっても過言ではない “給食マニア”の数学教師・甘利田幸男先生。主役を熱演する市原さんに、作品の見どころと「給食」について伺いました。

――今回の劇場版最新作はどんな作品か教えてください。

ドラマシリーズからコンセプトは変わらず、お子さまが見ても目を背けるようなシーンがないように、また、人生のキャリアを積まれた方がご覧になってもしっかりと楽しめる骨太なエンタテインメントをつくり上げました。

――シリーズを通して、1980年代の学校で繰り広げられる人間模様が魅力的な作品ですよね。

劇場版第3弾は、1989年の函館が舞台です。令和の時代になって、日本人が忘れかけている“侘び寂び”すなわち”古き良き心”というものを思い出せるような作品になっていますので、人間臭さといいますか、人間の隙といったものをぜひとも楽しんでいただきたいです。他人に笑われつつも、滑稽ながらも、好きなものを好きと胸を張って人生を謳歌しようとする甘利田を見て、「ああ、人生ってもっと楽しんでいいんだな」と、日々の活力にしていただけたら嬉しいです。人生の糧となるようなセリフもたくさん出てきますので、それらに込められた甘利田の想いを汲んでいただけたら幸いです。

市原隼人さん甘利田先生は、自身の憧れでもあるという市原さん。

――作品づくりにおいて心掛けていることはありますか?

いまできる自分の全てを尽くすこと、です。“笑わせるのではなく、笑われたい”という気持ちで、甘利田幸男という人間のユートピア(理想郷)にどんどん埋没していきました。

――この作品には、社会派なメッセージがたくさん込められていますね。

生きていると、ときに基準が分からなくなってしまうことがたくさんあると思います。国が違えばルールも違う、法律も違う、規律も秩序も違う。また、ひとつの会社で理念が同じでも、上司が違えば、やり方も正解もプロセスも、全てが変わってしまうような世界で、何か信じられるものを自分の中にも持っていたい……それが私の中では「おいしい給食」という作品だといえます。

劇中に、甘利田はシンプルだが、世の中はシンプルではない。というようなセリフが出てくるのですが、本当に現代は矛盾だらけの世の中だからこそ、生きる上での在り方としての本質や人間の本質といったものを詰め込められたらよいなと。人と人との懸け橋となる作品になれたら、嬉しいです。とはいっても、根底はコメディなので、肩の力を抜いて、甘利田が右往左往する姿を見て笑っていただきたいです。そして、胸を突かれるような言葉の数々を感じていただける何かがあることを願っています。

市原流・甘利田節が炸裂!

――「おいしい給食」シリーズといえば、甘利田先生が給食への愛を表現するダンスやオーバリアクションも魅力ですよね。

原作のない完全オリジナル作品であるこのシリーズは、監督とのこれまでの5年間の信頼関係があってこそですが、自由に肉付けをすることをさせてくれる作品です。給食を食べるシーンも、食べる前に高揚して踊っているシーンも、全部自分で事前に動きを構築して撮影に挑んでいます。

――やっぱりそうなんですね!

給食を食べているシーンは長回しで撮ったり、何回も何回もテイクを重ねています。毎回ほぼ8割くらいカットされますが(笑)。

――え! 8割カットされてあの長さなんですか!?

そうなんです。100m走では110mを走り切るつもりでなければトップスピードが出ないのと同じで、常にスピードの向こう側を目指す心積もりで取り組みました。

――給食にかける並々ならぬ情熱が爆発しているシーンだからこそ、気にかけていたことなどありましたか?

基本的な所作はある程度、念頭に置いてつくりました。例えば、汁物に箸を付けてからごはんをいただくなど、細かいところまで丁寧に描くことで、ご覧いただく方に何か感じていただけたらと思っています。

「おいしい給食 Road to イカメシ」イメージ献立表を眺めては、ウキウキを隠しきれない甘利田先生。果たして甘利田先生は函館ならではの逸品にありつけたのでしょうか?(画像提供:「おいしい給食」製作委員会)

「おいしい給食 Road to イカメシ」イメージ左/駄菓子屋店主サキ役の高畑淳子さんをはじめ、石黒賢さん、六平直政さん、小堺一機さんなど脇を固めるベテラン勢との競演も見逃せません。右/給食道のライバルであり仲間である教え子・粒来ケン(田澤泰粋)に対する甘利田先生のデレ発動はレアな見どころ!(画像提供:「おいしい給食」製作委員会)

――甘利田先生が愛用しているマイ箸の導入は、脚本に書かれていたものですか?

輪島塗の箸ですよね? はい、脚本に書かれていて、season2から登場しています。

――箸が刀のようなのは……

あれは、私が考えました(笑)

――完全にサムライでしたね!(一同笑)

出来ることをフルに活用しながら、実食シーンはほぼアドリブで演じ切っています。

学校給食の最強献立は、コレしかない!

――多くのインタビューで、NO.1給食は「きな粉パン」だと答えてらっしゃいますが……

きな粉パン一択ですね!(笑)

――それは、実際に食べた給食だけではなく、撮影中に登場する献立を含めても、ですか?

(やや食い気味に)きな粉パンが一番好きです! 給食でしか出合わない特別感があります。きな粉パンって大人になってからはなかなかいただく機会がなかったので、この作品で再会して「ああ、やっぱりいいなぁ」と。あの特別感に惹かれるんだと思います。

――お料理好きの市原さんなら、ご自宅で簡単に再現できるのでは?

揚げパンはつくったことなかったな……。挑戦すれば、作れそうな気もしますが、やっぱりきな粉パンは給食で食べてこそ、だと思います。まさに、特別感!

――続く後編では、大阪でお気に入りのあの味について。そして、市原さんにとっての「食」をお伺いします。

「おいしい給食 Road to イカメシ」イメージメインビジュアルの躍動感あふれるポーズは、市原さん本人が実際に跳んでいるとのこと。サンダルの裏側までしっかり見えるほどの跳躍力に脱帽です。ちなみに、右手に持っているのが甘利田先生愛用の輪島塗箸。


市原隼人さん

神奈川県出身。小学5年生のときにスカウトにより芸能界に入り、2001年、映画デビューとなる「リリイ・シュシュのすべて」(岩井俊二監督/ロックウェル・アイズ)で主演を務めデビュー。2008年、「ROOKIES」(TBS)での演技により、第58回ザテレビジョンドラマアカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK)や「正直不動産」(NHK)など、話題作への出演も多数。趣味は、料理・バイク・カメラ。幼い頃から器械体操や水泳を習い、ボクシング経験からアクションを得意とする。写真家・映像監督としても活動中。

【instagram】https://www.instagram.com/hayato_ichihara/?hl=ja
【映画公式サイト】
映画『おいしい給食 Road to イカメシ』 https://oishi-kyushoku3-movie.com/


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