町中華の旅とご縁の話

町中華の旅とご縁の話

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2023.02.24

文:「あまから手帖」編集部・足立琴音 / 撮影:木下清隆

3月号のロケハン・取材の中で出会ったいくつかの町中華。今回取り上げることが叶わなかったところも含め、何度も訪れたくなるお店ばかりだった。

目次

再訪したくなる町の中華屋との出会い 店舗情報

再訪したくなる町の中華屋との出会い

とある町の中華屋さんに取材を断られ、がっくり肩を落として店を出た。その日は雨が降っていて、駅から離れた閑静な住宅街には人影もない。こんな普段は用事がないところにもひっそりと魅力的な町中華があるんだな、と撮影したかった外観を眺めてから、後ろ髪を引かれる思いで歩き出す。

あのかわいいチャーハンも撮りたかったなあ……なんて、いつまでも引きずってもいても仕方がない。「じゃあ、個人的にまた寄らせてもらいます」という、自分の口から出た言葉を社交辞令にもしたくない。それくらい、いいお店だった。

お断りされることもある一方で、取材を歓迎してくれるお店もある。京橋の「上海ママ料理」は立ち飲み店が並ぶ細い路地を入ったところにあり、いい意味で雑然とした外観に一瞬だけ一人で入るのを躊躇する。だがカウンターに腰掛け、お酒を注文し、上海ママこと徐月萍さんの料理を食べてしまえば、するりと店に馴染める。
常連さんも多いのか、かみ合っているような、かみ合っていないようなママとのやりとりが耳に心地よい。

取材に応じてくれたママは、カメラを向ければノリにノッて中華鍋の前でピースサイン。トレードマークのピンクのエプロン、三つ編み、ニコニコ笑顔が印象的だが、実は大きな鍋を力強く振る姿が、めちゃくちゃにカッコイイ。去り際に取材陣との記念撮影にご機嫌で応じてくれる。そんなママを見ていて、また絶対に来よう、と思う。

上海ママ料理京橋にある上海ママ料理の外観。

上海ママ料理重い中華鍋で手際よく料理をつくるママ。

この仕事をしていなければ出会わなかった小さな中華屋さんがいくつかある。取材ができれば、お店のことをもっと深いところで知ることができるし、たとえお断りされても、それは小さなお店が長く続いていくために必要なことなのだろうと思う。どちらにしてもお腹がすけば、いつでも立ち寄る理由になる。食でつながるご縁というのはいいなあ、と改めて感じた2023年冬、町中華の旅。

上海ママ料理上海ママ料理のメニュー

■店名
『中華居酒屋 上海ママ料理』
■詳細
【住所】大阪府大阪市都島区東野田町3-4-10
【電話番号】06-6357-2783

掲載号
あまから手帖2023年3月号『中華の町へ』
おそらく関西の雑誌史上、最もディープに攻めた中華料理特集。「鉄鍋炖」に「第三の王将」…、中華の沼は深いのだ。

Writer ライター

あまから手帖 編集部

あまから手帖 編集部

amakara techo

1984年の創刊以来、関西グルメの豊かさをお届けしてきた月刊誌「あまから手帖」編集部。 旨いものを求めて東奔西走、食べ歩いた店は数知れず。パン一つ、漬物一つ掲載するにも、関西の人気店を回って商品を買い集め、食べ比べる真面目なチーム・食いしん坊。

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