京丹後市の農家パン「弥栄窯」への旅。

京丹後市の農家パン「弥栄窯」への旅。

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2024.05.27

文:「あまから手帖」編集部 写真:津久井珠美

6月号のパン特集では遠方のパン店を紹介する「旅パン」企画を掲載。京都市内から2時間ほどの距離にある京丹後市の「弥栄窯」を訪ねました。

目次

弥栄窯で流れる時間 店舗情報

弥栄窯で流れる時間

ゴールデンウイーク初日の朝7時。京阪電車をおり地上に出て、カメラマンの到着を待つ間、ほとんど人影のない祇園を眺める。静まり返った観光地の風景が眠い頭にうまく馴染まず、あれここ京都だっけと感覚が変になってくる。

久々に早起きしたのは、ここから車で2時間ほどの距離にある京丹後市の「弥栄(やさか)窯」へ取材に向かうため。「携帯の機種によっては電波が入らない」という、HPの案内文。わくわくが止まらない。

京丹後市に入ってからさらに北東へ向かう山道を走り、地域のコミュニティセンターで、一休み。そこから10分ほど車を走らせて、煙突から煙が出ている赤い屋根のパン工房が見えてくる。周囲は山に囲まれ、すぐそばを川が流れる。草むらを横断する毛虫、水辺に咲く白い花、心地いい風。数軒の民家と畑。意外にも移住者が多いという。

農家パン弥栄窯弥栄窯の工房。

取材1日目はパン焼き風景の撮影。工房の電気を落としてもらい、窓から差し込む自然光のなかで淡々とパンを焼く店主の太田光軌さんの作業と、真剣な表情に見入る。

農家パン弥栄窯薪窯でパンを焼く店主の太田さん。

農家パン弥栄窯焼き上がったカンパーニュ・ビオ (田舎パン) 。

2日目は工房前の屋外に、即席の椅子とテーブルを用意していただいて、奥様の治恵さんも一緒にインタビューの時間をとってもらった。川の音を背景に、朝日が昇るという山の稜線を眺めながら、光軌さんの語りに耳を傾ける。

農家パン弥栄窯工房の窓からは朝日が昇るようすを眺められるという。

仕事だというのに、弥栄窯に流れる時間に、とてつもなく癒されてしまい、京丹後の風景を惜しみながら車に乗り込む。

また2時間かけて京都市内へ戻ってくると、車の込み合う道路と人が溢れているいつもの京都。ああそうだ、これが京都だ。車をおりて人ごみに紛れると、仕事しなきゃなあーという気持ちになる。いや、街にいないと、わたしはきっと〆切を守れないのだけれど。

なんとか今月も校了にこぎ着けたのだが、じつはまだ、心が弥栄窯の時間の中にある(別の仕事である方の「田舎にのんびりなんてないですよ」という話を聞き、そうだな、あくまで私は外の者なんだよなあ、という反省もしつつ)。

■店名
農家パン 弥栄窯
■詳細
【住所】
京都府京丹後市弥栄町須川3084
【TEL】
090-2938-1019(電話は月・火・水曜の9:00~18:00のみ)
【営業時間】
完全予約制。第1~3、5土曜に弥栄窯の工房ほか、京丹後市の2店舗、隔週で神戸と京都市内の卸店にて受け取り。予約の詳細はHPを参照。
【SNS】
https://www.instagram.com/yasakagama/

6年ぶりのパン特集。食パン、バゲット、クロワッサン、サンドウィッチ、ベーグル、プレッツェル……ししゃもパン(!?)ありとあらゆる「今、食べたいパン」を編集部が激選。

Writer ライター

あまから手帖 編集部

あまから手帖 編集部

amakara techo

1984年の創刊以来、関西グルメの豊かさをお届けしてきた月刊誌「あまから手帖」編集部。 旨いものを求めて東奔西走、食べ歩いた店は数知れず。パン一つ、漬物一つ掲載するにも、関西の人気店を回って商品を買い集め、食べ比べる真面目なチーム・食いしん坊。

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