町中華、のれん話
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姫路市民に愛される町中華・東来春。心惹かれる外観だが、入り口をよく見るとどこか違和感が……。
裏表が逆になっている、のれんの謎
姫路城を目の前に、大手前通りを一筋西側へ入ると、まるで銭湯のような様相の建物がそびえ立っている。タイル張りの壁に、中国格子の窓。ライターさんに連れられてロケハンに訪れた「東来春」は、姫路市民に愛される町中華だ。
入り口には中華らしい真っ赤なのれんがかかっているが、よくよく見ると裏表がひっくり返っている。その日はとくに気に留めず、シュウマイや中華そばなどのお料理を美味しくいただいた。
1週間後の、取材当日。今日もやはり、のれんはひっくり返っている。どうして裏表が逆なのか、とライターさんが尋ねると、昔は字を右から書いてたからね、といったようなお答えが返ってきて、そうかあえて反対にしているのか、東・来・春の漢字って全部左右対称だものなあ、となぜか納得して取材を終えた。
東来春のシュウマイ、中華そば、焼きめし。和風だしをベースにした、地元に愛されるメニュー。
食堂のような内観にもぐっとくる。
数日後、撮影の日。ホームページの写真を見てみると、のれんは表を向いている。外観を撮影するときは元に戻してもらおう、と思いながらの姫路旅、3回目。店の前で待ち合わせたカメラマンさんがすごい建物ですねえ、と言いながら数枚写真を撮る。のれんはやっぱり逆である。
一通りの撮影を終え、さて最後に外観をとなり、従業員の皆さんに声をかけると
「逆……?」
と視線が一斉に入り口に向く。格子の扉越しに、のれんの裏側(というか表側)が見える。皆さんが訝しんでおられるので、こちらも段々と不安になってくる。
「あれ……今のままであってますか?」「左から読むから……うん」
「そうか、あってるのか……」
「ん?」
「ん?」
「あれ、逆やね!」
慌てて従業員さんが二人がかりでのれんをひっくり返しに外へ出ていく。あらためて正しい位置に収まったのれんを眺めると、表側はしっかり日に焼けていて色が薄くなっている。その可愛らしい間違いに、なんだか微笑ましい気持ちになった。
数日後、上がってきた写真を見ながら「うーん、ひっくり返ってるけど、こっちの方がいい写真だなあ」と編集長と班長が言う。すみません、東来春の皆さん。ひっくり返っているけれど、この写真使わせてください!
中華らしい赤いのれん。お店の外観写真は3月号本誌にて。
■店名
『東来春』
■詳細
【住所】兵庫県姫路市西二階町111
【電話番号】079-222-1570
【公式サイト】https://7293touraisyun.jimdofree.com/
あまから手帖2023年3月号『中華の町へ』
おそらく関西の雑誌史上、最もディープに攻めた中華料理特集。「鉄鍋炖」に「第三の王将」…、中華の沼は深いのだ。
Writer ライター
あまから手帖 編集部
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