
珍料理を見すぎて、何が普通か分からなくなった3月号
ピックアップTopics!
連日ガチ中華の取材で、見たこともない料理に遭遇しすぎて感覚が麻痺してきた私。「この料理結構普通ですよね」「いやおかしいよ!」という問答を編集長と繰り広げた日々。冷静になってみて、確かに凄いビジュアルだな…という写真をいくつかご紹介。
こんなに長くする必要ある…?「ビャンビャン麺」
「MAIDOU西安料理」 のビャンビャン麺。一鉢に 4本入っていたので、取材陣で1人1本ずつ食べた (撮影: 佐伯慎亮)
ビャンビャン麺の「ビャン」はパソコンで出てきません。一文字の中に「馬」とか「長」とかをいっぱい詰め込んだ57画という漢字です。そんな難読麺を食べられるのは道頓堀の「MAIDOU西安料理」。生地をビャンビャン伸ばして茹で、五香粉や八角がたっぷりのピリ辛ラー油をトッピングし、上からジャッと葱油をかけて完成。モチモチムチムチグニグニとすごい弾力です。ライターが何の気なしに麺を持ち上げたら、「終わらへん!」と焦っていました。60cmはありますね。
この黄色いの何?「重慶火鍋」
なんで九つに区切ってるの?黄色いの何?といろいろツッコミたくなる「火鍋江湖」の鍋(撮影:佐伯慎亮)
重慶料理って辛いですねえ。元は四川の一部だったというから当然ですかねえ。そんな重慶料理をいただける「火鍋江湖」は激辛鍋料理のオンパレードです。看板メニューのこの「九官格」は、九つに区切った枠をはめて、それぞれの枠で具材を煮込んだり、一番熱い中央部で肉をしゃぶしゃぶしたりする画期的な鍋。花椒や数種の唐辛子など香辛料をしこたま入れたスープは頭が痛くなるくらい辛い(でも旨い)。何で黄色いかっていうと、「牛脂」を大量にブチ込むからです。すんごいカロリーです。しかもベースがラー油だし。中国の火鍋は、スープを飲みません。
ベシッベシッと貼り付けるのは…「鉄鍋鈍」
見慣れ過ぎてこの鍋に何の疑問も持たなくなった。「盛興順」の鉄鍋鈍(撮影:鈴木泰介)
取材期間、3回ほど食べた「盛興順」の鉄鍋鈍。中国東北地方の農家で昔から食べられていた鍋で、卓上に埋め込んだ鉄鍋を下から熱し(家全体を温めるオンドル的な構造)、野菜や肉をブチ込んで蓋をして蒸し煮にする料理です。周りにベシッベシッと貼っ付けているのはトウモロコシでできたパン。これが旨い。スープに浸したり、具材をのせて食べたり。写真は、酸菜という白菜の漬物を煮込んだスープで、酸味が全くなく鶏や豚のダシと相まって、クリーミーとさえいえる濃厚さに。私はもう見慣れましたが、知らない人が「何これ!」と驚くのを見ると、やっぱ変なんだとつくづく思います。
ちょいちょい何かがおかしい「延辺料理」
朝鮮との国境料理ってだけで、もう凄そう。「金達来延辺料理」(撮影:佐伯慎亮)
朝鮮と中国との国境の料理まで現れました。道頓堀のビル地下にオープンした「金達来延辺料理」は、メニュー表からもうすでに異彩。まず、「サラダ」と言われて出てきたのがコレ↓
中国では冷たい和え物は全部「サラダ」と呼ぶ傾向があります(撮影:佐伯慎亮)
韓国や朝鮮は肉をよく食べるので、サラダにも肉を入れたくなるのでしょうか。写真は牛スネ肉がメインと言っても良いぐらいの和え物。これもやっぱり辛かったです。
そして先の写真の串焼きは、よく見ると一本異質なものが入っていますよね。そう、パイナップルです。中国ではパイナップルは焼いて食べるのがポピュラーだそうで、火を通すととろっととろけて酸味もなくなり、より甘みが増します。確かに日本でもバーベキューでパイン焼く人いたような気もする。
食材屋ももはや治外法権⁉
島之内周辺にはガチな中国食材店が多い。奥でイートインができる店も(撮影:佐伯慎亮)
最後にこの衝撃映像ですが、とある食材店の店頭です。豚肉がダンボールにそのまま無造作に入れて売られていました。日本とは思えない光景です。食品衛生法とか全く無視(笑)、ここだけ治外法権なのでしょうか。いつもこんな状態ではないので、仕入れてから陳列するまでに何らかのトラブルがあったのかな?とも思います。道頓堀の島之内寄りにあるお店ですが、こんな光景もなんだか見慣れてきた自分がもう元の世界に戻れない気がしてきました。
■店名
MAIDOU西安料理
■詳細
【住所】大阪府大阪市中央区道頓堀1-1-9 豊栄ビル 4F
【電話番号】06-7710-6758
■店名
火鍋江湖
■詳細
【住所】大阪府大阪市中央区島之内2-17-21 3F
【電話番号】06-6105-1616
■店名
盛興順
■詳細
【住所】大阪府大阪市中央区島之内2丁目10-12 ナニワホテルB1F
【電話番号】070-8388-9601
【公式サイト】https://seikojun-osaka.owst.jp/
■店名
金達来延辺料理
■詳細
【住所】大阪府大阪市中央区道頓堀1-1-5 B1F
【電話番号】06-6210-1749

あまから手帖2023年3月号『中華の町へ』
おそらく関西の雑誌史上、最もディープに攻めた中華料理特集。「鉄鍋炖」に「第三の王将」…、中華の沼は深いのだ。
Writer ライター

あまから手帖 編集部
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