
並んででも食べたい『六花』の輝く球体かき氷
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かき氷といえば、イラストでは富士山のような三角形に描かれるイメージだが、最近のトレンドは球体。神戸・駒ヶ林駅近くには常夏のかき氷店がある。
輝く球体を撮りに2時間並んだ話
連載・神戸のE面に登場する店は、93歳のお父さんが営む寿司屋だったり、“きたなシュラン”認定されている中華屋だったり、神戸にこんな店あったんやなあ、という新たな出合いが多い企画でもある。そして今まで掲載させていただいた店を並べてみると、8割がた電話を置いていない(もしくは出ない)。その場合、SNSも運営していないことが多い。
この企画での私の立ち位置と言えば、「取材ではないので、客として訪問させていただき、雑誌掲載用の写真を撮らせてほしい」と店側に交渉し許可を得ることが大きな役割でもある。前述の通り連絡手段のない店のエッセイが届いた場合、店まで直接出向くしかないのである。
10月号で取り上げた「六花(リッカ)」も例外ではなかった。10月号と言いつつ制作の時季はお盆真っただ中。「六花」はかき氷の店だ。入口からは行列が伸びており、2時間待ちだってと女性客がこそこそ話しているのが聞こえた。店を覗くと、奥の方で作務衣を着た男性が、陶芸家よろしくこちらに背を向けて氷を回している。
この日は直談判からのそのまま撮影という流れを狙い、カメラマンと一緒に訪れていた。2時間待ちと噂は聞いていたものの、1時間ほどで着席。注文を取りに来てくれたアルバイトの女性が「口に入るまで2時間です」と教えてくれた。ここからさらに1時間待つのか、と思ったが、果物を皮から剥いてソース作りをする様子や、氷を丁寧に削る店主の後ろ姿を見ていると納得せざるを得ない。私はキウイレアチーズを、カメラマンはモモを頼んだ。アルバイトの女性にお願いし、伝言ゲーム形式で撮影の許可をいただく。
きらきらと輝く球体は、ダイヤモンドのようだった。さらっさらふわっふわの氷に、種の食感も鮮明に感じる“まんまキウイ”なソース。美味しい。「六花」は年中営業しているため、ソースも時季によってラインナップが変わるらしい。
帰り際、初めて店主がこちら側を向く。「大したお構いもできませんで。『あまから手帖』さん掲載、嬉しいです」。とてもにこやかに応えてくださった。
「六花」のキウイレアチーズ1000円。

Writer ライター

あまから手帖 編集部
amakara techo