神戸最古の純喫茶「エデン」がなぜ愛されるのか、よく分かった

神戸最古の純喫茶「エデン」がなぜ愛されるのか、よく分かった

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2023.12.25

文・あまから手帖編集部・松崎聖子:撮影・赤鹿麻耶

1948年創業、現役の喫茶店では神戸最古といわれる「エデン」。なぜ76年にもわたって人々に愛され続けるのか。取材に伺って名店の真髄を見た気がした。

目次

頑固マスターがいるかと思いきや… 変わり果てたこけしが家族愛を語る 「ここは下町。だからみんな味に敏感」 店舗情報

頑固マスターがいるかと思いきや…

微妙に歪んだ外観。ヤシの木と緑のアーチに隠れた扉は、「こんな建物が令和の世に残っているのか」としげしげと見ずにいられない。扉を開けるとさらにセピアな空間。真紅のベルベッド張りのソファや、木彫が施された椅子、船室を思わせる低い天井。少し凹んだ板張りの床は、歩くとギッシギッシと大きな音を立てる。BGMのブルースも聴こえないぐらい。

「エデン」のマスターと常連客毎日通う、91歳の常連さんもいる

老舗喫茶=頑固店主がいる、と勝手に気構えてしまうが、マスターの堺井太郎さんはすこぶる気さくでフレンドリーだ。店の歴史を聞くとニコニコと喋ってくれる。父の堺井林さんが、1948年にオープン。船舶装備の会社に船のキャビンを模して店内を作ってもらったそうだ。

変わり果てたこけしが家族愛を語る

カウンター上に吊るされた謎の木の物体に目を止めると、面白い話をしてくれた。「これは、こけし。ウチは兄弟9人おったから、修学旅行やらでほうぼうに行くたびにこけし買って来ては飾って。カーテン代わりにしてたんやけど、胴体が取れたり煤で茶色くなったりで…」。家族愛がひしひしと伝わるエピソードだ。

「エデン」のこけし真っ茶色になってしまったこけし

「エデン」のこけし可哀想に、首だけになってしまったこけし

「ここは下町。だからみんな味に敏感」

「エデン」のハーフサンドイッチモーニングハーフサンドイッチモーニング700円。店のメニューで一番高級なぐらいだが、ランチ並みの量感はある

モーニングセットは400円からで、トーストは厚切り、700円のハーフサンドイッチセットは「ハーフ」と言えないボリュームだ。パンは近くのベーカリー「大和家」から。こだわっているのは「マーガリンではなくバターを使うこと」。マスターの持論はこうだ。「マーガリン使ったサンドイッチならコンビニでもどこでも一緒。せっかくここ来て食べるんやから、『これ、おいしい』って言ってもらわな。この辺は下町やから、普段食べてるもんとちょっと違うと分かんねん。下町の人は、鼻が利く」。なるほど、下町の人ほど美味しいものへの嗅覚が優れているのかもしれない。

店内には古い雑誌があちこちに積み重ねられている。どれも「エデン」が載った雑誌や冊子で、30年以上前のものもありそうだ。出版社は概ね、取材したお店には掲載誌(見本誌という)を送る。エデンぐらいの店になると、取材された数は100を下らないだろう。

「エデン」の看板極私的「いつまでも在り続けて欲しい店ベスト10」の一つ

編集者として、お店に自分が送った見本誌が置かれていると、やはり嬉しい。「エデン」に最初来た時、これらの雑誌の山を見て思ったのだ、「このお店はどんな小さな記事でも載った本を大事にしてくれるのだな」と。だから、その蔵書にあまから手帖1月号も加えてもらえると思うと誇らしい。

■店名
エデン
■詳細
兵庫県神戸市兵庫区湊町4-2-13
078-575-2951
10:00~17:00(LO)
モーニング~12:00(LO)
無休
新開地駅から1分

正月はもちろん、正月でなくとも年中めでたい天神橋筋界隈。昔は「おじさんの街」なんて呼ばれていた天満も、今やすっかり美食の街に…?桂二葉さんにもご登場いただき、あまから流に天神橋筋を一気通貫!

Writer ライター

あまから手帖 編集部

あまから手帖 編集部

amakara techo

1984年の創刊以来、関西グルメの豊かさをお届けしてきた月刊誌「あまから手帖」編集部。 旨いものを求めて東奔西走、食べ歩いた店は数知れず。パン一つ、漬物一つ掲載するにも、関西の人気店を回って商品を買い集め、食べ比べる真面目なチーム・食いしん坊。

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