年代物のオーディオを据えたコロッケ専門店『NISHITOMIYA』
カオリンの「シェフのBGM」
2021年10月、『西冨家コロッケ店』が屋号を変え、河原町から神宮道近くに移転し、ナチュラル・ワイン酒場に。ウォークインセラーを設えた広いフロアには、ワインの陳列と同調するかのようにLPレコードがびっしり。ヴィンテージ・オーディオから流れるサウンドにも気持ちよく酔えます!
600枚のLPを82年造のJBLで
雑居ビル1Fのどんつき。ガラス張りの扉を開けた瞬間、心が踊った。
広々としたフロアにはウォークインセラーがあり、フランス産を中心としたナチュラル・ワインが1600本近く。セラー右横の棚には、ワインの陳列と同調するかのようにLPレコードがびっしり! その上部には、82年製造のスピーカー「JBL(4312)」が横向きに鎮座。
店主の西冨 学さんに聞けば、空間としてのバランスを考えて、横に置いたらしい。そしてアンプは、72年製「SANSUI」のAU-9500ときたもんだから、オーディオ好きのワイン党には堪らない空間なのだ。
かつて河原町で親しまれていたコロッケ酒場『西冨家コロッケ店』が、店名を変え、メニューをブラッシュアップさせて神宮道近くに移転したのは2021年10月のこと。移転前は、カウンター席のすぐそばに厨房がある小さな店だった。コロッケの揚げ油が気がかりで、大好きなオーディオ機器を置くことも躊躇していたのだろう。
移転後、「思いっきり、自分が好きなものだけを集めた」広々とした空間には、西冨さんならではのセンスが細部にまで宿る。
自然派ワインと軽やかなサウンドを
まず、ヴィンテージのスピーカー「JBL」から流れるサウンドが、カッコイイ。
私が昼飲みにおじゃました時は、アメリカのシンガーソングライター、リヴィングストン・テイラーの名盤「Man's Best Friend」が流れていた。フォーク・ソングが持つ素朴さと、AOR(アルバム・オリエンテッド・ロック)の洗練が入り混じるそのトーンは、昼飲みに似合う。
最初の1杯には、自然な造りがなされたアルザス地方のオレンジワインを。その甘夏っぽいニュアンスに、ちょっとポップで軽やかなサウンドがすーっと共鳴するのだ。
西冨さんの音楽のルーツを辿れば、小学生の頃にさかのぼる。 昭和55年生まれの西冨少年は、AM、FM問わず音楽番組が大好きだった。いつしかニーナ・シモンやソニー・ロリンズをはじめとするジャズ、さらにはソウルなどブラックミュージックにのめり込む。
「スピーカーもアンプも年代物。店で流すレコードもあえてその時代のものが中心なので、合う気がします」。とはいうものの、店では、あまりマニアックにはなりすぎないよう、日々の客層に合わせて曲をチョイスしている感じも受ける。
「BGMって、飲食を自然に楽しめる一つの要素に過ぎないんです」。ナチュラルなそのスタンスが、またカッコイイのだ。
アルザス・クラインクネヒトのオレンジワイン「is the New White」グラス800円~。
コロッケも、ビストロ定番の味も
拡張したのは、音のある広々とした空間だけでない。メニュー構成もしかり。
昼には、自家製パンを用いたコロッケバーガーをはじめ各種サンドを。
テーブル席に加え、立ち飲みカウンターも設けるディナータイムには、「ウフマヨ」といったシンプルなアテから、魚介や肉のメインまで、ビストロの定番メニューが黒板を彩る。もちろんコロッケも健在だ。奈良漬けとレモンピール、タコのガリシア風といったように、香りや味わいの重ね技が面白い。
ふと耳を澄ませば、ヴィンテージ・オーディオから流れるサウンドは、ジャズ・サックス奏者、ソニー・ロリンズの名作「NEXT ALBUM」。音量は控えめ。
その耳心地の良さもあってか、すーっと喉通りがいいナチュラル・ワインがとめどなく進む。
昼のコロッケバーガー1000円。メークインと男爵イモを用いたコロッケは滑らかな舌触りが印象的。自家製バンズに挟み、バーベキューソースと共に。
■店名
『NISHITOMIYA (ニシトミヤ)』
■詳細
【住所】京都市東山区西町126 ビスタ三条白川1F 南側
【電話番号】070・8513・0452
【営業時間】12:00〜14:00LO、18:00〜22:00LO
【定休日】水曜、木曜の夜
【お料理】昼/コロッケバーガー1000円、夜/コロッケ単品180円〜、ニース風サラダ950円。Gワイン800円〜、Bワイン4000円〜。
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Writer ライター
船井 香緒里
Kaori Funai