蘇った組長!『ジュンジーノ』

蘇った組長!『ジュンジーノ』

団田芳子の「わたホレ新章」

2023.01.20

文・撮影:団田芳子

拙著『私がホレた旨し店 大阪』、略して“わたホレ”。発刊直前にお店がクローズしてしまい、それでも諦めきれずに他所の店の稿にムリクリ紹介した八島組長、もとい八島シェフ。発刊5年後の今、西天満に復活した組長の店を喜び勇んでご紹介します。

目次

私のイチオシ・イタリアン 組員集結の還暦祝い 関西イタリアンを牽引 夢のシェフズテーブル 気軽なワインバースタイルも! 店舗情報

私のイチオシ・イタリアン

「大阪で一番美味しい店はどこ?」とよく訊かれる。「イタリアンなら、八島淳次シェフの『ジュンジーノ』!」と私は即答する。だってね。カルボナーラってこんなに美味しいのか。ラグーソースとはこんなに軽やかで上品なのか、ジビエってこんなに夢のように旨いものなのか…って思わせてくれるんですよ。
絶賛する私に、「これが“リストランテの料理”です」と八島シェフは照れくさそうに、でも誇らかに言います。ポピュラーなパスタにも如実に表れる質の高さは、食材の選択、火入れなど全てにおいて最上の一点を目指すことで生まれる、らしい。

一度、組長の料理を食べてみてほしい。イタリアンってこんなに美味しいのかと、きっと瞠目(どうもく)するはず。

組員集結の還暦祝い

2022年のある日、「八島シェフの還暦を祝う会」が催された。題して「我らが組長!我らがジュンジーノ!八島淳次シェフ還暦祝いパーティー」。幹事は、今をときめくイタリアンのシェフたちだ。

本来なら、常連客もお招きして大々的にやりたいところだが、こんなご時世。仲間内だけでということになり、会場にはイタリアンのシェフたち数十人が顔を揃えた。「あまから手帖」元編集長・中本由美子嬢と共に末席に加わった私は、舞い上がった。めかし込んで、祝辞を述べるあの顔もこの顔も、関西で超有名なシェフばっかり。お祝いの高級ワインがバンバン抜かれたパーティーは、終始和やかな雰囲気。組長、愛されてるなぁ、慕われてるなぁ。

還暦祝いパーティー「60」の数字が描かれたティラミスと、照れくさそうな組長。

関西イタリアンを牽引

八島組長、もとい、八島シェフの料理人人生は、関西イタリアンの軌跡そのまま。

バイク欲しさに『アモーレ アベーラ』でバイトを始め、19才で青山『サバティーニ』へ。ここで基礎を学んだが、まだオリーブ油も生ハムもなく、サラダ油とボンレスハムで代用していた日本を飛び出して、23才で本国イタリアへ。星付きレストランで4年間腕を磨き帰国。1989年、地元・苦楽園にていよいよ独立開業。『オステリア・ダル・ジュンジーノ』の開幕だ。何だか妖しい雰囲気の店だったが、ここから手打ちパスタやジビエを関西に紹介し、自ら日本のイタリアン料理界を牽引し始めた。
その後は、神戸元町で、『エノテカ イゾラベッラ』、2012年、淀屋橋にて『ダ・ジュンジーノ』開店。

日本の食材を主役に据えても、決して日本料理を参考にしない。「ジュンジのジはジビエのジ」と自ら謳うお得意のジビエならば、「知識と知恵を総動員」して、本場の郷土料理をベースに、日本の食材を使って、エレガントな“リストランテの料理”に昇華する。

淀屋橋に移転してきてくれたときは、ホンマに嬉しかった。何しろイタリアワインの伝道師を自認する方だから、素晴らしいワインがガンガン登場するので、いつもヘベレケ。神戸から帰るのがツラかったんだ。
しかし、2016年閉店。「また復活しますよ」との言葉通り、2年後、ここ西天満にて蘇った。

新装オープン復活した『ジュンジーノ』は、アメリカ領事館お隣のビルの地下。

夢のシェフズテーブル

オープンキッチン

ここは、初のオープンキッチンスタイル。つまりは全席、シェフズテーブル!目の前で、八島組長が料理する姿を見られるなんて、組員にとっては天国のよう。とはいえ、案外人見知りな組長は、愛想が言えるはずもなく、真剣なお顔は、お初のゲストにはちょっと怖いみたい。
「怖い怖いって言われるのは、あなたたちマスコミが作ったイメージでしょ!」とご本人は言うけど、いえいえ。苦楽園時代の厨房から響く怒鳴り声を、私らは忘れられないのですよ。ま、もちろん、還暦を迎えた組長は、本当に穏やかになられて、眼差しも優しくていらっしゃるのですけどね。

厳しくも温かいそのお人柄は、慕う組員の多さでもよく分かるのだけど、もちろん、腕がなければ誰もついていきません。

あれは、もう20年近くも前だろうか。八島シェフの手打ちパスタを食べて、旨さにクゥーッと唸りながら、「何でこんなに美味しいの?」と、フードライターとしては失格の烙印を押されそうな、アホのような質問をしたことがある。
「食材がまず良いこと」と組長。うん、そらそうやろけどと、納得しない私に、「例えば、シャラン鴨といってもピンからキリまであるんですよ。そういうことをあなたたちはちゃんと知った上で記事にしてくれないと」。鯛にはピンキリあることを当たり前だと思っているのに、外国のブランド食材というだけで、十把一絡にしていたのは確か。勉強になりマス!

気軽なワインバースタイルも!

食材、火入れ、すべてにおいて最上の一点を目指す。そんな組長の料理が、今はものすごく気軽に食べられる。
というのは、最近、ワイン・バースタイルでも行けるようになったのだ。予約なしで、月~土曜の18:00~21:30LOまで、グラスワイン1300円~、お料理1800円~で、フラリと立ち寄ることが可能に!

「やたらペペロンチーノのオーダーが入るんですよ。そんなに他で食べられへんのかな?」と組長。それはね、組長のペペロンチーノが食べたいからですよ。ええ?ペペロンチーノってこんなに美味しいの?って、何度食べてもビックリするくらい美味しいんだから。

クレスペッレ組長が、たこ焼き屋に!?アンティパストの前のつきだしは、クレスペッレ(クレープ)。具はタコではなく、この日は鴨レバーと穴子。自家製グリッシーニを添えて。胃が開く旨さ。

パスタタリアテッッレ セモラ、ショウサイフグ、ハナビラ茸、ルッコラ

パスタタリアテッレ セモラ、ホタテのラグーとキノコ

仔羊ロース仔羊 ロース、モモ肉、コテッキーノ仕立て

■店名
『ジュンジーノ』
■詳細
【住所】大阪市北区西天満4-12-12 SHISA梅新東ビルB1
【電話番号】06-6365-8008
【営業時間】11:30~14:00LO、17:30~21:30LO
【定休日】日曜
【お料理】ランチ6600円~、ディナー8800円~。

Writer ライター

団田 芳子

団田 芳子

Yoshiko Danda

食・酒・大阪を愛するフリーライター。旅行ペンクラブ会員。小宿の会塾長。料理人には怖れと親しみを込め“姐(ねえ)さん”と呼ばれる。講演、TV・ラジオ出演も。著書に『私がホレた旨し店 大阪』(西日本出版社)、 『ポケット版大阪名物』(新潮文庫・共著)ほか。

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