
大阪・肥後橋の隠れ家中華『バレット』は、やっぱり変態デス!
団田芳子の「わたホレ新章」
今回は、“変態料理人”さんの登場です。いや、私が言ってるのではなく、自称されているのです。麻婆豆腐だと思って食べたら、白い具の半分がフグの白子だったり、ランチにしれっとひぐまラーメンを出したりする、大阪・肥後橋の隠れ家中華『バレット』です。
真面目に遊ぶ、アレンジ中華がアツイ!
拙著『わたホレ』に、“中華の自称・変態料理人”とキャッチを付けたこちら。
店主の白澤慎一さんは、仙台生まれで、「同級生がみんな東京へ行くから大阪へ来た」とおっしゃる天邪鬼な方。ホテル中華などを経験して、肥後橋のビル路地奥に秘密の小部屋的な店を構えたのは2012年。一風変わった料理がメチャクチャ美味しいと、食通がこぞってこの店のカウンター席の予約を取り合い、激アツの店として話題をさらった。
この方が、自称・変態料理人、白澤慎一さん。一癖ありそな面構えでしょ。
11年目を迎えた今、コロナ禍に席数を抑えて8からたった6席となり、ランチは不定期営業、夜はコース13200円2名以上1組貸切、土日祝日は66000円以上で貸切(8名まで可)、しかもInstagramのDMのみで予約受付、電話番号非公開というスタイルだ(2023年8月現在)。
それでも、1度、白澤ワールドを体感してしまうと、あの人を連れてまた行きたい、食べ好き仲間と貸し切りたい―という常連でいっぱい。
不定期営業のランチもインスタをチェックして詰めかけるファンで6席は3~5回転、30食も出るというのだからスゴイ。ちなみにランチメニューは、「麻婆豆腐定食」「エビチリ定食」などが定番だ。
たった6席のカウンターのみ。
しかし真骨頂はやはり夜。
オープン以来の定番は「エビのマンゴーマヨネーズソース」。コースの2番目辺りに登場するこいつが旨い。
マンゴーの香りと甘みたっぷりのソースは冷やしてあり、熱々のエビに掛けて供される。南国フルーツのまったりとした甘さと、サクサク熱々のエビとのコラボはたまらない。皿に残ったソースも最後まで食べたいから、エビを食べ終えても皿を引いてくれるなと頼むゲストが多いらしい。
「エビのマンゴーマヨネーズソース」。練乳と香り付けの中国の白酒(パイチュー)が決め手。散らしたピスタチオもよくマッチ。
お次は、「ワタリガニの紹興酒漬け」。これは冬なら上海ガニで出てくる。中華の定番なのだが、韓国料理のケジャンにも似ているか。実は私は久々に食べたのだが、ん?進化してる!
「1年半前くらいに砂糖を和三盆に変えたんですよ。今までもちょいちょいマイナーチェンジしてきたけど、今が一番食べやすいと思います」
いやぁ食べやすいとかいうレベルじゃない。食べ進むにつれニヤニヤが止まらなくなる旨さですよ。
「ワタリガニの紹興酒漬け」。実はアワビなどを一緒に漬け込んでいて、漬け汁が旨み満載になっている。だから何とも滋味深い。モダンな有田焼きから骨董風など、和の器に盛るのも白澤流。
「予防医学とか東洋医学とか自分なりに勉強しています。そんな中で、やっぱり食材も、片栗粉や小麦粉まで、なるべく国産のものにしたくなって。和三盆も使ってみたんです。白い砂糖とカロリーは変わらないんですが、血糖値の上昇は緩やからしいです」
うん、変態料理人さんは勉強家なのだ。そう、スーパー白子麻婆豆腐とかフォアグラ入り酢豚とか、 “変態”の名に恥じぬアレンジも、“真面目に遊ぶ”精神に則っている。ワンオペで、スナックみたいな小体な店で、よくもこれだけのことをと毎度感心感動。
そういえば、「4年後までには移転グレードアップします」宣言が出たと、拙著『わたホレ』には書いたのだったが。あれから5年。コロナ騒動もあったし、移転はまだ先?
「いつか奥さんの里の福岡に移転は考えているんですが」。え?福岡?ま、まだまだ先、だよね?
路地奥に潜む隠れ家風。
■店名
『バレット』
■詳細
【住所】大阪市西区江戸堀1-9-13 ネクサス肥後橋ビル1階
【公式サイト】https://www.bullet0725.com/
【Instagram】https://www.instagram.com/bullet_higobashi/
Writer ライター

団田 芳子
Yoshiko Danda