『旨い料理 旨い酒 じょうじ』2号店も開店した勢いづく上等居酒屋

『旨い料理 旨い酒 じょうじ』2号店も開店した勢いづく上等居酒屋

団田芳子の「わたホレ新章」

2023.05.18

文・撮影:団田芳子

拙著“わたホレ”発刊後、5年が経った今、50の掲載店のいくつかは大きく変化した。第10回目は、2号店を開店し、勢いづく上等居酒屋『旨い料理 旨い酒 じょうじ』。その開店の内幕を披露します。

目次

超ド級魚介てんこ盛りのワケ! 深江橋店には限定メニューも 店舗情報

超ド級魚介てんこ盛りのワケ!

「姐さんとはもう10年以上の付き合いですもんね」と、じょうじが言うからビックリした。そんなに経つ?「そうですよ、前の店からですもん。引っ越してもう10年近いんですから」と嫁のゆうちゃんも口を揃える。
調べてみたら仰る通り。2012年2月号あまから手帖の『居酒屋パラダイス』特集のためのロケハンが初対面だった。

『旨い料理 旨い酒 じょうじ』店主夫妻

緑橋というレアな場所、中央大通り沿いのざっくばらんな居酒屋風の店だったが、出てくる魚も野菜もとびっきりの上物で、そのくせ値段は手が届く範囲に収まるし、何より店主のじょうじのキャラクターが最高で、いっぺんで気に入ってしまった。

“じょうじ”こと渡辺錠治さんは、和歌山生まれ。
子供の頃からの料理好きで、もてなし好き。そんな彼が、京都の料亭や和歌山の割烹、大阪の寿司屋で腕を磨いて、2005年に開いた店だった。

数年後、ちょっとだけ移動して、モダンでスタイリッシュな和食店になった。
中央大通りから一本裏手の静かな住宅地の洒落た一軒家。初見で入るには勇気がいるけど、扉を開けると、じょうじが陽気に迎えてくれる。

『旨い料理 旨い酒 じょうじ』中央大通り近くの緑橋本店緑橋本店は住宅地の中に潜む隠れ家風。

『旨い料理 旨い酒 じょうじ』中央大通り近くの緑橋本店、カウンター店内は、スタイリッシュなのだけど、気取らない。陽の気に満ちている。

漁港のアンチャン風の弾丸トークや店内にべたべたと貼られた達筆メニューに、肩に入っていた力も抜けるはず。
そして、造り盛り合わせなど食べたなら、度肝を抜かれること間違いなし。

造り盛合せとにかくいつ行っても超ド級の最上級魚介がドカンと盛り込まれてくる。「惜しみなく」が、じょうじの信条。

ある冬の、仕入れた食材ある冬の「じょうじ」渾身の仕入れ。大間の本鮪、戸板の白甘鯛、答志島のとろ鰆、気仙沼ノドグロ、ズワイガニ香箱、泉州の赤貝、加太の鯖、萩の特大天然車エビ、真妻の山葵。

深江橋店には限定メニューも

そんなじょうじが、コロナ騒動の最中に、2店舗目をオープンした。
店を任されたのは、“モトキ”こと山本元貴さん。彼とじょうじの縁を結んだのが、何と『あまから手帖』のあの記事なのだ。
「10年前に『あまから手帖』を見て、この料理スゴイなと思って食べに行ったのが最初です」とモトキ君。

「お前、料理人やな」とじょうじに看破され、話すうちに修業先の1つ(京都の『木乃婦』)がかぶっていることが判明。「なんや、後輩(先輩)か!」。以降、ふたりは交流を深める。

モトキ君は、上町の『居酒屋 ながほり』、本町の『よし田』で修業して、「そろそろ前に立つ時期やろ」とじょうじに背中を押されて2号店の店長となった。

2号店は、深江橋の中央大通り沿い。カジュアルな大人の居酒屋風だ。「中心部やなくても、魅力ある店を作れば来てもらえる」との信条は、本店で実証済み。

『旨い料理 旨い酒 じょうじ』深江橋店の外観2号店・深江橋店の外観は、にぎやか。

食材の仕入れは親方・じょうじが担当。本店同様とびきりの食材を揃えている。
「超一級品ばっかり。ホンマに料理人冥利に尽きます」とモトキ君。お値段は、本店よりカジュアルで、深江橋店だけのメニューもある。

特製パスタ深江橋店オリジナルの特製パスタ。じょうじ名物・ズワイガニの身とミソたっぷりの超絶カニクリームコロッケの生地をソースに仕立てて。パスタの姿をしたカニそのもののような味わい。

私は、緑橋店と深江橋店と順繰りに通っている。
先日、閉店間際の本店に駆け込んだら、深江橋店の営業を終えたモトキ君も顔を出してくれた。
カウンターの中で、じょうじとモトキ君、年は若いけどモトキ君の兄弟子にあたるユキア君の3人が、ワチャワチャとふざけあってる姿は、本当に楽しそうで笑えてくる。

3人衆キャッキャッとふざけあうじょうじ3人衆。右から、じょうじ、ユキア君、モトキ君。

だけど、モトキ君はこっそり私に告白した。
「親方はアホな話もするけど、礼節とか職人の基本を教えてくれる」と。
「一級品の魚を手に入れるために、親方はデータ取ってるんです。この時期はどこの産地の魚がいいか。値段、味、状態全部」と、尊敬の念を口にしていた。

「休日も正月も365日市場に通って魚屋と信頼関係を作った」と言っていたじょうじ。その上で、馴染みの魚屋が困っていたら、「1匹2匹とは言わん。全部いったる!」と剛毅な仕入れもする。
最高の食材が集まるのは、陽気さと情、それに地道な努力の賜物なのだ。

さて、2番手・ユキア君も着々と力を付けてきているこの頃。この先、3店舗目オープンなんてこともあるかもと期待している。

■店名
『旨い料理 旨い酒 じょうじ』
■詳細
【公式サイト】https://w-jorge.com/

緑橋本店
【住所】大阪市東成区東中本2-2-25
【電話番号】06-6977-2470

深江橋店
【住所】大阪市東成区深江橋3-2-8
【電話番号】06-6720-8627

Writer ライター

団田 芳子

団田 芳子

Yoshiko Danda

食・酒・大阪を愛するフリーライター。旅行ペンクラブ会員。小宿の会塾長。料理人には怖れと親しみを込め“姐(ねえ)さん”と呼ばれる。講演、TV・ラジオ出演も。著書に『私がホレた旨し店 大阪』(西日本出版社)、 『ポケット版大阪名物』(新潮文庫・共著)ほか。

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