大阪『洋食YOKOO』の野望。「極カレー」でてっぺん取ったる！の巻

団田芳子の「わたホレ新章」

2023.06.19

文・撮影：団田芳子 / 一部画像提供：洋食YOKOO

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食べる

団田芳子

Yoshiko Danda

大阪・福島にある『洋食YOKOO』は、私の大のお気に入り。その２代目ヨコーさんを、拙著“わたホレ”では“恐るべしエエ人怪獣”と紹介しました。そのエエ人が、近頃何やらものすごい野望を持ったようなのです。

食べたいもんだらけのフレンチ洋食大阪名物てんこ盛りカレー､誕生物語店舗情報

食べたいもんだらけのフレンチ洋食

『洋食YOKOO』は1971年に開店した洋食屋さんだ。福島6丁目の交差点の角の煉瓦造りの佇まいは、町にすっかりとけ込んでいる。

2代目“ヨコーさん”こと横尾淳（あつし）さんが、父親の始めた店に入ったのは20才のとき。フランス料理を学び、ソムリエ資格も取得した彼が入って、町の洋食屋さんはフレンチのエッセンスを取り入れ、すこぶるオシャレになった。
オムライスやエビフライ、ビフカツなど定番洋食も外せないし、テリーヌやカルパッチョなどオードブルもバラエティーに富んでいるし…。食べたいものだらけでメニュー選びに困る店だ。

『洋食YOKOO』コース前菜コースの前菜は、フレンチ風の一皿。

『洋食YOKOO』オムライスやっぱり外せない、王道の洋食・オムライス。

そうして予約困難な人気店としての地位を確立。初代は安心して2代目にバトンタッチした。
その２代目・ヨコーさんが、“恐るべしエエ人怪獣”なのだ。ん？褒めてるのか落としてるのかよく分からない？もちろん褒めてマス。怪獣と言いたくなるほどの“エエ人”ぶりは、“わたホレ”に詳細に書きました。
ここでは、エエ人ヨコーさんの挑戦が止まらない日々を追いましょう。

『洋食YOKOO』店主・横尾淳さんこちらが“恐るべしエエ人怪獣”ヨコーさん。

新幹線の新大阪駅構内に支店を出したのは、2016年。

エエ人は、何をするにもちゃんと美味しくしないと気が済まない。常連の期待を裏切れない。だから、駅ナカでもオムライスはふわりとバターが香り、ビフカツはバラ色の絶妙な火入れで柔らかくジューシー。お陰で新幹線に乗るのが楽しみ。私の周囲のYOKOOファンも、車内で口福な時間を満喫する様子を続々とＳＮＳにアップ。

曰く「駅構内でこんなに旨いものを食えるというのは、世界的にも稀なのではないか」「ＹＯＫＯＯ特製ビフカツサンドやミルキーな玉子サンドは東京出張の必需品。家族のお土産もコレ」「行きにビフカツ、帰りにオムライスが出張のお決まり」などなど。

新大阪駅『洋食YOKOO』大阪のれんめぐり店内観 JR新大阪駅新幹線改札内にある『洋食YOKOO』大阪のれんめぐり店。

本店では、この春からランチを一新。
洋食セット、YOKOOセットなどがあり、私のお気に入りはYOKOOセット2480円。まず多種多様な野菜が彩りも美しく登場するサラダ、めっちゃ甘い玉ねぎのローストや、やけに美味しいポテトサラダなど日替わりの小鉢が来る。

食べ終えたのを見計らって、ご飯、お味噌汁、そしてメインの大皿が来る。これが豪華絢爛。ビフカツ、エビフライ、和牛ハンバーグの盛り合わせ！　絶対食べたいヤツが全部入ってるやーん！さらにデザートとコーヒーまで。セットと言ってるけど、これはもう立派なランチコース。しかも素晴らしいコスパ。

『洋食YOKOO』ランチある日のYOKOOセット。前半は前菜と小鉢（左）。後半はメインとご飯とお味噌汁。激ウマ！

大阪名物てんこ盛りカレー､誕生物語

そしてコロナ禍。「飲食店にできることは何か」とエエ人ヨコーさんは頭を絞り、「レストランの味をお家で！」と、レトルトカレーを開発することに。
「とにかく美味しいカレーを作ろう！」と決めたので、店で出すカレーと同じように、手作りのフォン・ド・ヴォーで重層的な味を作り出した。コスト？そんなもんは後で考えるんやと、とことん味にこだわったレトルトカレーが完成。「ビーフたっぷりごちそうカレー」。「あまセレ」でも購入できるこれが激ウマで、私史上レトルトカレーの最高峰！と思っていたんだが。

ヨコーさんってば、さらにスゴイものを作ってしまった。
「調べたら、レトルトカレーの一番人気が、東京のんなんですよ。確かに美味しい。けど、野望が湧き上がってきまして…」
エエ人の野望、それは、「食の都は大阪やろ！レトルトカレーのてっぺんも大阪で作らなあかんやろ」という、“育ててもらった大阪への愛”から生まれたものだったのだー！

出来上がったのは､その名も「大阪極（きわみ）カレー」。ビーフシチューのごとき贅沢な肉の旨み溢れるこのカレーは、限定3000食が9ヶ月で完売した。

そこで第２弾に着手。前作に続き、『射手矢農園』の玉ねぎ、『カタシモワイナリー』の赤ワインに加え、肉類は新たに堺の「大阪ウメビーフ」と､東大阪の「なにわポーク」をダブルで使用。するとマイルドなのに滋味深い、今までにない味わいに。
さらに、スパイスに大阪名物をもう１つ。和風香辛料の老舗『やまつ辻田』の稀少な国産・鷹の爪の小袋を付けた。これをご飯にパラリと掛けると、キリリンと味が引き締まって、辛くて良き匂いがして、旨さ倍増！

大阪が誇るべき大阪産（もん）５つの力で、レトルトカレーのてっぺん、本気で取る勢い。
「やっぱり食は大阪ですね。知られざる大阪産の良いものはまだまだありそうですよ」なんて言ってるから、極妻シリーズ全10作に追いつけ追い越せの極カレーシリーズになるかも？！

『洋食YOKOO』極カレー大阪名物で作った大阪極カレー。激ウマ！