北欧発の人気コーヒー店『FUGLEN』が関西初登場。町の日常に溶け込む店に

1963年にノルウェー・オスロで創業し、世界10都市以上に展開するコーヒーショップ『FUGLEN』。世界各国から吟味したスペシャルティコーヒーと、北欧のヴィンテージ家具で揃えた空間、北欧のライフスタイルを体現した憩いの場として、各国で厚い支持を得ています。2012年に日本に初めて上陸した北欧発の人気店が、2025年12月、関西初の常設店『FUGLEN KYOTO』をオープン。新旧のコーヒー店が個性を競う京都で、早くも地元の人々の新たな憩いの場となりつつあります。

京都の日常に根ざした憩いの場に

「京都は以前から開店を望んでいた憧れの地。北欧のヴィンテージ・デザインを大切にする空間は、古いものを長く受け継ぐ京都の土地柄と親和性が高いと思っていました」とは、マネージャーの中嶋絢香さん。

待望の『FUGLEN KYOTO』がオープンしたのは、賀茂川の西側、閑静な住宅街が広がる北区・紫竹エリア。繁華街や観光地の賑わいから離れた界隈は、今宮神社や大徳寺といった寺社、古くから続く商店街が点在し、地元の暮らしが息づく、いわば普段着の町です。
少々意外なロケーションですが、『FUGLEN』のコンセプトは“町に溶け込むお店”。地域の日常に根ざした場にとの思いが、この立地に表れています。

「徐々にお店のことを知っていただいて、地元の方々も気軽に立ち寄りたくなる場所にしていきたい」と中嶋さん。学校や病院なども近く、年輩客から親子連れ、コーヒー好きの若い世代まで、幅広い世代が入れ代わり立ち代わり。ご近所さんと挨拶を交わすような、肩肘張らない接客も手伝って、すでに足繁く通う地元の常連客もいるそうです。

『FUGLEN KYOTO』外観
北山通沿いにあり、全面ガラス張りのオープンな店構え。
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北欧のデザインと和の意匠が調和

創業以来、“コーヒー・カクテル・ヴィンテージデザイン”をテーマに、昼はカフェ、夜はカクテルを楽しめるバーと、2つの顔を持つのが『FUGLEN』ならではのスタイル。その中にあって、『FUGLEN KYOTO』は、初めてコーヒースタンド形式で開店。カウンターとテイクアウトを主体に、アルコールもほぼ置かず、営業も夕方まで。通りからフラットにつながるような店構え、店先にベンチも設え、ふらりと立ち寄りやすい雰囲気に。地元のお客との距離を近づけるオープンな空間は、界隈の街並みにしっくりと馴染み、まさに気軽に一息つける拠り所の趣。

関西ではまだ馴染みがないゆえ、通りがかりに興味を持って話しかける人も多いとか。「初めて訪れたお客さんとのコミュニケーションを通して、お店のことを改めて伝える機会ができるのは嬉しい」と、じっくりと地元とのつながりを広げています。

『FUGLEN KYOTO』内観
元は和洋菓子舗だった建物を改装。木の温かみが心地よいミニマルな空間に
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『FUGLEN KYOTO』内観
棚の上にはさりげなく陶器の作品が。コーヒー豆の販売は200g・2200円~
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とはいえ、インテリアは『FUGLEN』を象徴する、ノルウェーのヴィンテージを配した落ち着いた雰囲気。ノルウェーでBiriと呼ばれる、ストロー材を用いた壁紙や1950〜60年代の照明や陶磁器といった調度と共に、ここではさらに、日本の陶芸作家の焼物や器、注連縄など和の調度もディスプレイ。北欧と和のデザインの親和性を生かした空間も魅力の一つです。

店内の随所に、京都の土地柄を取り入れた店作りにもまた、“町に溶け込むお店”のコンセプトを体現。すでにここにあったかのような、近しさと居心地の良さを生み出しています。

多彩な風味が際立つノルディックロースト

個性際立つスペシャルティコーヒーは、6、7種を提案。厳選した豆の持ち味を生かす、浅煎り焙煎は『FUGLEN』の代名詞です。実は、コーヒー消費量が常に世界トップ3に入るノルウェー。それゆえ、飲み疲れしない、軽やかな浅煎りを好んできたお国柄が、味わいにも表れています。

様々な産地の多彩な風味を楽しめるよう、メニューはシングルオリジンのみ。ベリーや柑橘などの果実味、ナッツやスパイス、ハーブなどの香りが織りなす、柔らかな酸味と鮮やかなフレーバー、ほのかに香ばしい余韻が何とも心地よい。豆の品揃えは時季替わりゆえ、時に同じ産地の異なる銘柄が数種類揃うことも。そんな時は、農園や区画の違いで変わる風味を、飲み比べてみるのも一興です。

『FUGLEN KYOTO』コーヒー
ハンドブリューコーヒー750円。写真はホンジュラス・ラ・ティナ。みかんを思わせる柔らかな酸味と、みずみずしい甘みが余韻に広がる。この日は特別に清水焼きの陶器で提供。
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『FUGLEN KYOTO』フード
ブラウンチーズトースト1000円。パンは、京都の気鋭ベーカリー『Kurs』のカンパーニュを使用。
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また、ノルウェーならではのペアリングを楽しむなら、現地の朝食やおやつの定番、ブラウンチーズトーストをお供にぜひ。山羊乳や牛乳のホエイを煮詰めて作る伝統的なチーズ・Brunost(ブラウンチーズ)は、ねっとりとした食感と塩キャラメルのような香ばしい甘みが印象的。「ちょっとクセのある味に、じわじわとハマる方も増えています」と中嶋さん。後を引くコクと甘みが、浅煎りならではの柔らかな酸味と相まって、コーヒーが進むこと間違いなしです。

地域の人々に寄り添う新たな拠り所として、早くも町に浸透しつつある『FUGLEN KYOTO』。平穏な日常のアクセントとなる、小さなコーヒーショップは、界隈に欠かせない憩いの場になっていきそうです。

FUGLEN KYOTOのクッキー
福岡店のペストリーから届くブラウンチーズクッキー450円、アールグレイフィナンシェ 300円。
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writer

田中慶一

KEIICHI TANAKA

学生時代からのコーヒー好きが高じて、全国各地で訪れた喫茶店・カフェは1000軒超。老舗喫茶から最新のコーヒーショップまで取材に携わり、情報誌を中心に執筆多数。関西の喫茶店の系譜を辿った著書も刊行。