鍾乳洞がある喫茶『ホラ!あな』。名物はジビエ料理

関西一、いや日本一クラスの珍喫茶かもしれない。なんと鍾乳洞を併設しているのだ。正確に言うと、店内から地底へ続く入り口があり、約2億5千万年前にできた鍾乳洞「不動窟」へ行ける。しかも喫茶ではジビエを使った本格的な洋食やパティシエ自慢のスイーツがいただける。暑い夏、川上村でクール&スリリングな体験はいかがだろう。

「いらっしゃいませ!鍾乳洞ご利用ですか?」

入ってすぐに「鍾乳洞ご利用ですか?」と聞かれる喫茶店は日本でもここだけだろう。ログハウス風の建物の扉を開けると、爽やかな店主が迎えてくれる。都会のカフェと言っても通用しそうなオシャレなインテリアの店内を進むと、「不動屈入口」と書かれたドア。スタッフに「行ってらっしゃい!」と送り出され、眼下に渓流を見ながら、129段の階段を恐る恐る降りる。仄暗い谷底に着くと、ほら穴が口を開いて迎える。ヒイィ、もう訳が分からない。

喫茶『ホラ!あな』のゲート
奈良県吉野郡川上村を通る国道169号沿いに現われるゲート。
喫茶『ホラ!あな』外観
建物には看板がない。「カフェ」「鍾乳洞」の旗が並んでいる不思議な光景。
喫茶『ホラ!あな』洞窟入り口
店内に一度入り、また外へ出るというシステム。
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喫茶『ホラ!あな』ヘルメット
帽子に見えるのはヘルメット。色々おしゃれだ。
喫茶『ホラ!あな』階段
店内ドアを開けると、川に向かって降りる急な階段が。
喫茶『ホラ!あな』ほらあな入り口
辿り着いたのはほらあなの入り口。お堂が建っている。
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洞窟内に入るとたちまち冷気に包まれる。温度は14℃程度とのことだ。蛍光灯だけが照らす隘路は進むほどに細くなり、岩から染み出す水で濡れている。ところどころに地蔵や石像があり、ここが信仰の場であることを感じさせる。

喫茶『ホラ!あな』の不動屈鍾乳洞
中はひんやり!酷暑が嘘のようだ。
喫茶『ホラ!あな』の不動屈鍾乳洞
それぞれの場所に「母の胎内くぐり」「奥の院」「大天井」「小天井」「三途の川」などの名が付けられている。
喫茶『ホラ!あな』の不動屈鍾乳洞
足元が滑るので注意。鎖を頼りに歩く。
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屈まないと頭がぶつかるぐらい天井の低い通路を、鎖を頼りに5分ほど降りていく。急に広い空間が現れ、ザアアアと轟音が響く。なんとそこには、滝が流れている。傍には不動明王の像が見守り、水を汲むひしゃくもある。白いライトが光る中を勢い良く流れるこの水は、長寿の水と言われ、近隣の人々が汲みに来るそうだ。

喫茶『ホラ!あな』の不動屈鍾乳洞の不動の滝
落差35mの滝は、かなりの勢いで流れる。
喫茶『ホラ!あな』の不動屈鍾乳洞の不動尊
地元の男性とおぼしき人が、水を汲みに来ていた。
喫茶『ホラ!あな』の不動屈鍾乳洞
奇岩に覆われた地底。全長140mとわりとコンパクトなので気軽に行って帰れる。
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不動の滝を過ぎても道は続き、子供でも頭がぶつかるほど低い穴の中を進むと、地底湖のように青い水が湛えられた場所に出る。美しさに見惚れながらさらに歩くと、行き止まりの空洞に出る。何千万年もの間、水に侵食され溶けたのであろう奇岩が辺り一面を囲み、この世の景色とは思えない幽玄な雰囲気だ。水音だけが反響する洞窟の中でしばし我を忘れそうになるが、現世に帰るべく、また鎖を伝いながら戻る。再び129段の階段を登り、この世に戻ってきた気分で扉を開けると、「お疲れ様したー!」と元気な声で迎えられる。ギャップ!

喫茶『ホラ!あな』の不動屈鍾乳洞
アップダウンが激しく、鎖は必須。
喫茶『ホラ!あな』の不動屈から階段
ほらあなを出ると遥か上に喫茶が。あすこまで戻るのか……。
喫茶『ホラ!あな』の不動屈鍾乳洞看板
天然記念物であることを示す説明板。
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なぜ喫茶店に鍾乳洞がくっついているのか

『喫茶ホラ!あな』は、奈良県の指定然記念物である不動窟鍾乳洞を委託管理している喫茶店だ。鍾乳洞は2億5000年前に形成され、約1300年前に修験道の開祖である役行者によって発見されたと伝わる。長らく修験道の「裏行場」の一つとされたため、洞内には不動明王や不動の滝が祀られている。洞窟の長さは140mほど。夏も冬も13〜14℃をキープしており、夏は涼しく、冬は温かい快適空間である。

喫茶『ホラ!あな』の水
帰還すると滝の水を汲んだ冷水が迎える。
喫茶『ホラ!あな』の内観
喫茶を利用しなくても、店内一角のスペースで休憩できる。
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鍾乳洞と喫茶店が一緒になった店は、百歩譲って他にもあるかもしれない(ないか)。だが『ホラ!あな』が特殊なのは、「ジビエを使った本格的な洋食が味わえる」ことである。そもそも、なぜここに喫茶店があるのか?誰がやっているのか?その謎を先に詳らかにしよう。

喫茶『ホラ!あな』の内観
山と川を一望できる見晴らしの良い店内。
喫茶『ホラ!あな』の看板
表向きは普通の喫茶店なのだが……。
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喫茶店はもともと川上村の持ち物で、建物は40年ほど前に建てられた。当時は観光地のレストハウスらしく土産物を並べ、うどんなど軽食を出すだけの休憩所だった。それが、前のオーナーが譲り受けてカフェになり、2022年4月からは現店主の木下倖仁さんに受け継がれた。

喫茶『ホラ!あな』の木下さん
木下さん。居酒屋勤務で培った発声を活かした朗らかな挨拶で迎えてくれる。
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ジビエとスイーツ目当てに来る人も

木下さんは大和高田出身なので地元人ではないが、「ご縁があってここを経営することになりました」と嬉しそうに話す。約20年間、大手の居酒屋グループで働いていた経験があり、「せっかくなら奥吉野で獲れたジビエの美味しさを知ってもらおう」と、上北山村の猟師が仕留めて処理した鹿や猪の肉を調理し、ハンバーグやカレー、ロースト丼などジビエメニューにして提供している。

喫茶『ホラ!あな』の鹿猪肉合挽ハンバーグ
鹿猪肉合挽ハンバーグは大ぶりのエビフライ、サラダ、スープ、ライスのセットで2000円。安い。
喫茶『ホラ!あな』の鹿猪肉合挽ハンバーグ
つなぎは飴色になるまで炒めたタマネギだけ。ぱんぱんに肉汁が詰まっている。
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「鹿は処理してすぐに冷凍させたほうが美味しいんです。刺身で食べられるぐらいです」と木下さん。鹿肉は固いと思われがちだが、背中の肉を高温のオーブンで焼き、そのあとじっくり火入れすることでしっとりした柔らかさになる。ジビエだけでなく、すぐ目の前の川で釣れたアマゴや鮎など川魚も名物。玉子サンドに添えられるアマゴフライにはファンも多いという。

喫茶『ホラ!あな』の鹿肉ロースト丼
鹿肉ロースト丼1800円。ショウガとニンニクで1日漬け込み匂いを抑え、旨みを引き出すという。
喫茶『ホラ!あな』の鹿肉ロースト丼
肉は表面をソテーして高温オーブンで焼き上げ、低温で蒸らしながら焼いて柔らかく仕上げる。
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滝の水で作るかき氷で酷暑も吹き飛ぶ

スイーツは女性スタッフの担当で、スキレットにのせたダッチベイビーやフルーツたっぷりのかき氷など鍾乳洞喫茶とは思えない映えメニューが揃う。ちなみに、店内には不動の滝から水が引かれ、料理もスイーツも全てこの水を使っている。アイスコーヒーもかき氷も、ひときわキンと冷えて澄んだ味わい。目の前の雄大な山河を眺めながら、特等席の窓際でいつまでも座っていたくなる。

喫茶『ホラ!あな』のかき氷
かき氷880円はフレッシュな桃がゴロゴロ。不動の水で作った氷は冷たさが長持ちする。
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喫茶『ホラ!あな』のアイスコーヒー
アイスコーヒーも雑味がなく、豆の香りがダイレクトに味わえる。
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店内には実に色々な人が訪れる。一人で訪れ当たり前のように鍾乳洞に入る男性、学生らしき男子グループ、地元人らしき夫婦、カップル。またここは今も修験の地でもあり、6月の花供入峰の日には大峯山の修験者が大勢鍾乳洞に入るという。「山伏姿のまま店に寄ってくださって、20人ぐらいでケーキを食べて行かれました」と木下さん。さぞかし迫力のある光景だったろうと想像する。

喫茶ほらあなのスイーツ
スイーツはくまさんのかくれんぼケーキやブリュレチーズケーキなどファンシー。
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吉野川
店は吉野川のほとりに建つ。
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鍾乳洞に潜り、大きな窓から山河を眺め、かき氷を食べていると、どんなにAIが進化してもこの体験を作ることはできないなとふと思うのである。

「喫茶 ホラあな」の看板
木下さんが受け継いだ時点で表記は「喫茶 ホラあな」に変えたが、公式情報は「ホラ!あな」のままだという。
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公式YouTubeで動画公開中!

実際に「喫茶ホラ!あな」の鍾乳洞に潜入する様子はこちらからご覧いただけます。

詳しくはこちら

writer

猫田しげる

nekota shigeru

北海道出身。20年以上、グルメ誌、新聞地域面、旅行本、レシピ本などの編集・ライター業に従事。各地を転々とした挙句、現在は関西在住。「FRIDAYデジタル」などのweb媒体で記事執筆。めったに更新しない猫田しげるの食ブログ 「クセの強い店が好きだ!」と恐ろしくフォロワー数の少ないInstagramをヨロシク!

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