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初心者には無謀か!? 須磨アルプスに挑戦、目指すは板宿『一平』/六甲山編その2

「登山の後の一杯は、登頂にも勝る至福の瞬間!むしろそれ目的に山に登る」と語る“酒飲みハイカー”ミツルさんとアラフォーの自称山ガール・おばやしが、初心者向けトレッキングと「下山後すぐに酒が飲める店」を訪ね歩く。前回、六甲山の西端・旗振山を登り、塩屋で一杯を楽しんだ二人。今回はほんの少し東進して、須磨アルプス踏破にチャレンジ。その後板宿の「下山後酒場」を目指します。

六甲山全山縦走の最初の難関

ミツル
今回は六甲山の楽しみ方の一つでもある「縦走」をチョットだけ味わっていただくことにしますよ。
おばやし
え?「縦走」?響きがなんかプロっぽいし、ちょっと体力的に不安なんですけど…。
ミツル
「縦走」とは尾根でつながった山々を連続して踏破していくこと。毎年11月に開催される「六甲山全山縦走大会」は、須磨浦公園から宝塚までの56km(公称)を一日で歩く、神戸の岳人にとっては一人前になるための登竜門として有名です。
おばやし
ご、ご、56km!? 私も岳人の仲間入りできるかしら。
ミツル
体力の消耗量に比例して、下山後の酒が美味くなる。この方程式を、身を持って経験することで、さらに酒飲みハイカーとしての深みが増すというものです。

今回目指すのは須磨アルプス。下山後酒場は板宿の名老舗酒場『炉ばた 一平』です。都市に隣接する山とは思えない絶景とスリルが味わえる須磨アルプスは、六甲山の縦走路のなかでクライマックスの一つなんですよ。
六甲山ルート
本日のルート。須磨駅から須磨磨アルプスを経て、板宿『炉ばた 一平』へ。ミツルの説教をよそに、「ついに本格的な六甲山を味わえる」とゆるいながらも気合いを入れるおばやし。難所、馬の背を越えられるか…。
ミツル
まずは須磨駅前からバスで登山口の高倉台へ。そこから栂尾(とがお)山~横尾山~須磨アルプス~東山~板宿と辿っていく約2時間のコースです。さあ登っていきましょう!
六甲山コース
おばやし
げげげ!いきなり階段がどこまでも続いてますやん。無理かも…。
ミツル
うむ。約400段あるこの階段は、六甲山縦走路の最初の難関として知られています。我慢が続きますが、振り返ればほら!先日登った旗振山や高倉台の住宅街が一望できますよ。
六甲山コース

「アルプス」の名に恥じない絶景

おばやし
ふう。階段の難所をなんとか越えましたけど、須磨アルプスはまだですか?
ミツル
まだ登り始めて20分程度ですよ。階段が終わると、しばらくすれば標高274mの栂尾山です。山頂には展望台もあって、なかなかの眺めが楽しめます。
六甲山コース
「流れてくる風も気持ちいいですね!もうここがゴールでもいい!」(おばやし)
ミツル
こらこら、ここからが本格的な縦走路です。さあ、先を急ぎましょう。
おばやし
げげ。せっかく登ったのに結構急な下りに…。
ミツル
ピークとピークを結ぶ尾根道はアップダウンがあって当然です。上りがあれば下りもある。まさに人生そのもの。そして下り終えれば酒場というパラダイスが待っています。

さあ次のピークである横尾山を目指しますが、須磨アルプスまでは場所によってはロープを使って下る急斜面や胸突くような急登もあります。気を抜かずに行きましょう。そろそろ標高312mの横尾山です。
おばやし
むむむ。眺望がなく、いまいち達成感がありませんね。
ミツル
まあ、それも山の表情のひとつ。眺望の良さだけが山頂の魅力ではありません。ほら、ここにひっそりと佇む三角点が実に味わい深い。
おばやし
……。
六甲山コース
ミツル
さて、ここから20分程度で須磨アルプスの絶景が待っていますよ。須磨アルブスは花崗岩が風雨で削られ露出した尾根です。鋭く切り立ったナイフリッジのような道もあることから「アルプス」に例えられています。ちなみに別名は「馬の背」。
おばやし
うわぁぁぁぁすごい!こんな場所が神戸にあるなんて!北は妙法寺の住宅街がすぐそばに迫っていて、南は須磨の町並みの先に海!風も通ってすごく気持ちがいいです。
ミツル
どうです。すごいでしょ?ただし足元は滑りやすいので気をつけて。また狭い箇所でほかのハイカーとすれ違うときは、お互い譲り合いの精神で行きましょう。ちなみに登山の基本は「上り優先」ということも覚えておいてください。
六甲山、馬の背
「登るのがしんどいから、つい下りの人を優先してました(汗)。しかし、手足を使ってよじ登ったり、アドベンチャー感覚を満喫できますね!須磨アルプス、驚きました!」(おばやし)

板宿における昼飲みの聖地「一平」

ミツル
須磨アルプスを満喫したら、心は酒場へ。板宿を目指そう。馬の背から次の東山(標高253m)までわずか10分程度。そこから先は板宿まで下りなのでご安心を。先ほども言ったように、山は人生だ。ピークをすぎればダラダラと下る一方です。
おばやし
まさにミツルさんの人生!
ミツル
……。板宿までの道のりは、いくつか分岐があるので道標を見落とさないように。1時間程かかりますよ。
炉ばた一平
ミツル
目指す『炉ばた 一平』は板宿駅を出てすぐ。居酒屋激戦区で昼の12時から飲める店として、日の高いうちから賑わっている人気店です。地元の紳士淑女に混ざって、ハイカーの姿もちらほら見かけますよ。ただしカウンター、テーブル、座敷もありながら、満席の場合もあるので、予約してから行くのが賢明でしょう。

ここの魅力は、何より、昼間っから本格居酒屋メニューが楽しめること。しかも品揃えがエグいほど豊富で安い。もともとは今から58年前、先代が板宿商店街の中に「大衆酒場一平」として創業。40年ほどまえに現在地に移転して「炉ばた一平」としてリニューアル。その頃からお店を手伝っていたのが、現在の大将である横山武志さんです。
おばやし
ほんとにすごいメニューの数!100類以上もありますよ。しかも一品料理が250円からと安い!生ビール(中)380円ですよ!うれしいな~かんぱ~~い!クー――ッ!
ミツル
どうですか?アルプスを攻略したあとの一杯はまた格別でしょう?それにこのボリューム海鮮サラダ(680円)をご覧あれ。マグロ、トロ、タコ、ハモなど6種類ほどの魚介がたっぷり。通はこれを「ボサラ」とオーダーするのです。
炉ばた一平
おばやし
魚介もプリプリでおいしい!野菜もたっぷりだから罪悪感なくもりもり食べちゃいそう。
ミツル
その次はとん平焼(450円)をどうぞ。一見すればだし巻き玉子のようだが、もちろん中にはキャベツと豚肉が入った定番の一品。甘いソースとマヨネーズのジャンキーな味わいが逆にホッとする。ほかにもスタミナ回復に効きそうな山芋ステーキ(580円)もおすすめですよ。
炉ばた一平
おばやし
どれもおいしくてお酒が進みますね。みんち串(2本300円)とうずらの串カツ(2本300円)もいっとこうかな!
ミツル
こらこら、調子に乗って食べまくると、今度の山登りに支障をきたしますよ。私はそろそろほろ酔いになったので、お先に失礼して、近くのコンコルドビルにある『スナックりえ』に行くとします。あの店も昼から飲めて歌えますしね。今日はきっと高取山『安井茶屋』の店主・こうちゃんも来ているはず。では!
おばやし
あぁちょっと!ここのお会計だけはしておいてくださいね~!
炉ばた 一平

profile

藤川満

藤川満

神戸在住のフリーライター。全国各地の低山と酒場をフィールドに飛び回る。日本酒をこよなく愛し「日本酒では全く酔わない」が口癖。

おばやし零余子

おばやし零余子

兵庫県宝塚市在住の独身アラフォー編集者。酒と酒場好きで、年々大きくなる身体に危機感を覚え山登りに目覚めるが、一向に痩せる気配なし。最後の晩餐は雑煮。

脱力系山歩き酒飲み連載「下山go酒場」

ベテラン酒飲みハイカー・ミツルと、初心者ハイカー・おばやしが下山後の至福の一杯を求めてトレッキング。

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