
京都・亀岡『無国籍蕎麦会席 拓朗亭』霧の里山で味わう名物尽くしのコース
contents
十割蕎麦専門店から蕎麦会席店へ
『拓朗亭』は麺食堂として1985年に創業。94年に“生粉(きこ)打ち”とも呼ばれる十割蕎麦の専門店に転身しました。店主の矢田昌美さんは、麵と言えばうどんが主流で本格的な蕎麦屋がほとんどなかった関西に十割蕎麦のブームを起こした立役者です。
「私は吉田拓郎さんの大ファン。“たくろう”から苦労が無いようにと“く”の一字を取り、漢字を“朗らか”に変えて屋号にしました。生粉打ち専門店にして以降は毎日行列ができるようになり、駐車場を確保する目的で2006年に国道9号線沿いに移転。その後、現在の地に再移転しました」
移転の理由は、辺りの田園風景に溶け込むように建つ古民家がひと目で気に入ったから。けれどもその建物は老朽化が進んでいたため断念。店舗は新築しましたが、古民家内にあった古い蓄音機や陶器類などの一部は店内に飾られています。
移転後、矢田さんは“蕎麦屋やめます”と宣言。多くのファンを驚かせました。
「元々、私は京都のホテルや洋食店などで働いて、いろんなジャンルの料理を作ってきました。その経験が生かせるコースを仕立て、そのなかのひと皿として蕎麦をお出しする無国籍会席料理を楽しんでいただこうと考えたのです」
ここでしか出合えない料理が次々と
名物が余すところなく味わえる「正コース」は、ノンアルコールビールをサイダーで割った特製ウエルカムドリンクで始まります。続いて運ばれるのは、カクテルグラス入りの“ひとつ前 古都白瀬(ことしらせ)”。蕎麦の実の中心部分だけを挽いた一番粉で打つ蕎麦にジェノベーゼソースをかけた、パスタ感覚の冷菜です。
3皿目はオールドフレンチスタイルのオイスターカークパトリック。牡蠣の殻を使ったグラタンです。4皿目は、“ローマ法王のさしみとやら”は料理名からしてユニークなカルパッチョ。見た目も豪華な海の幸のミルフィーユです。
5皿目に供されるのが網目状の衣をまとったエビの天ぷら。“丹波霞(にわかすみ)”の名で呼ばれています。
「これは、群馬県にある会席そば・草庵さんが創作され、“花衣”という名称で登録されている天ぷらです。私はそれを97年に初めて食べたのですが、見た目にも食感にも衝撃を受けました。同時に、自分でもこれを作って、うちに来られるお客様にも味わっていただきたいと思うようになったのです。けれども、私は草庵の御主人とは師弟関係にあるわけではなく、そのようなケースで教えを乞うのはタブーと先輩方から教えられてきましたから独自にコピーするしかありません。何度も群馬に通い、14年かけて完コピ。2017年、花衣ではなく丹波霞と名称を変更することで、めでたく製造の許可を得ることができました」
丹波霞が完成したことも、蕎麦会席店への転身を決意させるきっかけのひとつになったと明かす矢田さんは元・落研だそうで、メニューのネーミングからもわかる通りユーモアにあふれています。右腕的存在のお嬢様と奥様も明るく、店内には笑い声が絶えません。
コースは、代名詞にもなっているおろし蕎麦、2021年の亀岡牛ハンバーグ・カレーコンテストのカレー部門で市民グランプリを受賞したスパイスカレー、ドルチェと続き、心身を満たしてくれます。
data
- 店名
- 無国籍蕎麦会席 拓朗亭
- 住所
- 京都府亀岡市稗田野町太田油田11-2
- 電話番号
- 0771-24-4334
- 営業時間
- 11:30~15:00(予約優先)、夜の開始時間は応相談
- 定休日
- 不定休
- 交通
- 大井ICから車で7分
- 席数
- テーブル16席(最大20席)
- メニュー
- かすみセット(昼のみ)2580円。コース/3650円、5630円、8800円~。
- 公式サイト
- http://taroutei.com/
recommend