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正和堂書店おすすめVol.6:答えは必要?「 考えごとしたい旅 フィンランドとシナモンロール」

大阪市、今福鶴見駅からちょっと歩いたところにある『正和堂書店』は、小西さんご家族が経営する街の本屋さん。実は鞄からチラ見せしたくなるオリジナルブックカバーが大人気の書店さんでもあります。本はココロのごちそうといいますが、ブックカバーに包んで大切に持ち歩きたい、おいしい本を書店員の小西さんにご紹介していただく連載「ブックカバーの下はごちそう」。
2025年最初の回は、益田ミリさんによる「考えごとしたい旅 フィンランドとシナモンロール」。
人は答えがある方が安心するし、それを求めてしまいがち。だけど、もっと力を抜いて、心も揺らいでいいんじゃないですか。ゆるっと構えて、新年の希望を考えてみましょう。

考えごとしたい旅 フィンランドとシナモンロール (幻冬舎文庫)/益田ミリ・著

唐突ですが。フィンランドはいい。
何がいいって、色んなものの塩梅がちょうどいいのです。
数年前にフィンランドを訪れる機会があり、ヘルシンキを一人で歩きました。

コンパクトな街に、石畳みの街並みと、デザインと、港がうまく融合しており、そしてほどよく都会。うまくできてる! が街の印象でした。

今年初めにご紹介するのは、そんなうまくできてる街、フィンランドへの一人旅を書き綴った益田ミリさんのエッセイ。
巻頭には、たくさんのシナモンロールをはじめとして、カフェでのご飯やフィンランドの街並み、建築など写真が盛りだくさんです。

ミリさんがカフェでお茶をしながら、街を歩きながら「考えたこと」も余すところなく共有されています。

考えごとしたい旅 フィンランドとシナモンロール
考えごとしたい旅 フィンランドとシナモンロール(幻冬舎文庫)。ミリさんが色々なカフェを訪れて名物のシナモンロールを食べ比べしたり、トラムで観光地を巡り、デパ地下でお惣菜を買ったり。 通りを歩く人々をぼんやり眺めながら、時間とか、人生とか、自分について考えた日々が綴られています。
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「自分を守ることは大切である。しかし、守りすぎるとかえって逃げ場がなくなることもあるのではないか。」という問いの一文がありました。
この考えに、答えはありませんでした。

私も、年齢を重ねると臆病になり、自分を守るようになりました。
勇気を出して踏み出せば良い場面でも、それができないことがわかっていて、前にも後ろにも進めなくなる。 そういう時は、目の前の霧が晴れるのを、じっと待つ。

とにかく時間が過ぎるのを待っていると、ふとした時に、これおいしそう、ここ行きたいな、と前向きな気持ちが湧いてくるのです。 自分のなかで結論が出なくても、自然と前に進めるようになる。

ミリさんの考えに答えがなかったように、案外、白黒付けなくても解決していくものなのかもしれません。


旅先の風景や出来事を通して、思考が流れていくようなミリさんの言葉。
「なにかと答えがほしくなるけれど、そんな一つ一つの出来事や考えに明確な答えなんてないよな。 その時はそう思っても、また後で違う考えになったりもするし、心は揺らいで当然だよなぁ・・」と思いながら、久しぶりに、本を読む事を純粋にゆるりと楽しめました。


さて、本書の冒頭、ミリさんは元旦に真新しいスケジュール帳を開き、ズズーッと線を引き、記しました。

「フィンランドに行きたい」

これが、以後3度訪れるフィンランドひとり旅のはじまりでした。
2025年、「希望」を「現実」にするために。私もスケジュール帳に記したいと思います。さて、何から書こうか…。

『正和堂書店』連載「ブックカバーの下はごちそう」

大阪の街の本屋さん『正和堂書店』イチ押しのおいしい本連載。ほっこり心に寄り添う本、揃ってます。

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正和堂書店

seiwado book store

大阪・鶴見にある1970年創業の街の本屋さん。3代目の小西康裕さんが「読書時間がより楽しくなるように」とデザインしたオリジナルブックカバーが大人気。2代目の典子さん、3代目の康裕さん・敬子さんご夫妻(と4歳の長女)、康裕さんの弟・悠哉さんなど、一家で奮闘するSNSの総フォロワー数は20万人!
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