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門上武司の旅vol.16:山村の生産者と訪問者を共に喜ばせるオーベルジュ、徳島『ペルトナーレ』

年間1000軒以上外食する、関西を代表するグルマン・門上武司。その食欲は、御年70歳を過ぎてなお旺盛だ。「アレが食べたい」と頭をよぎれば、もう居ても立ってもいられない。日本全国どこへでも、トランクひとつで東奔西走。拠点の関西を飛び出して、各地の美食を訪ねる旅企画「皿までひとっとび」の第16回は、徳島・上勝町『ペルトナーレ』へ。

四国イチ小さな町のオーベルジュ

仕事柄、日々全国を旅しているが、四国に足を踏み入れる機会は少ない。食いしん坊が足を向けたくなるような情報がなかなか届いてこないのだ。かつては香川に何度も通ったレストランもあったが、シェフが東京に移住し、レストランの形態も変わって、訪れることがなくなった。

ところが今回、僕が愛してやまない、東京・国領にあるイタリア料理店『ドンブラボー』のシェフ・平 雅一さんから「徳島に素敵なイタリアンを出すオーベルジュがありますよ。この前、行ってきたんです。門上さんもぜひ!」と強力な推薦を得た。平さんが薦めるならと徳島・上勝町まで足をのばしたのだった。

徳島・上勝町『ペルトナーレ』外観
門前に立つまでオーベルジュとは気がつかない、古民家の趣をそのまま生かした造り。
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京都から名神・中国道などを経て、淡路島を縦断し、徳島に渡る。そこから県道で小一時間ほど山中に分け入れば現れる、四国でいちばん小さい町と言われる山村に、『ペルトナーレ』はある。

徳島・上勝町『ペルトナーレ』内観
宿泊スペースとしては、レストラン2階の「おもや」と一棟貸しの「はなれ」を備える。
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“媒介者”としての料理人

徳島・上勝町『ペルトナーレ』表原平(おもてはらたいら)オーナーシェフ
キッチンに立つオーナーシェフの表原 平(おもてはら たいら)さん(写真左)とスタッフさん。リノベーションされているが、奥のガラス戸の意匠などはザ・昭和。この新旧同舟も面白い。
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旧い民家を改築した建物の1階には、L字型のカウンター。中には焼き台があり、折しも夕食どき、表原シェフが機敏な動きを見せている。このライブ感と、日本家屋ならではの温かな雰囲気にひたりながら食事を楽しめるのは、ここならではの特長と言えるだろう。

この日、僕はランチコースを選んだ。コースはメインを選択できるプリフィクスというスタイルを採っている。

徳島・上勝町『ペルトナーレ』柿とストラッチャテッラのサラダ
ランチコース7700円(全4品、前日までに要予約)から、柿とストラッチャテッラのサラダ。ミルキーなストラッチャテッラが柿の甘みを優しく包む。
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まずは、柿とストラッチャテッラのサラダだ。柿は、地元で取れる刀根柿(とねがき)。これに、細かく割いたモッツァレラチーズと生クリームを混ぜ合わせたストラッチャテッラ・チーズを絡める。柿の甘さとチーズの酸味、コクが見事な調和を生み出している。心地良い幕開けとなった。
続いては、モクズガニの手打ちタリオリーニである。ソースはモクズガニの味噌とスダチ。

徳島・上勝町『ペルトナーレ』モクズガニの手打ちタリオリーニ
表原シェフのスペシャリテのひとつ、モクズガニの手打ちタリオリーニ。カニの殻や脚でとったブロードが旨みのベースになっている。
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カニ味噌の濃厚な旨みをスダチの酸味が引き締めて、いいアクセントになっている。タリオリーニの弾力のある歯応えとカニ身の味わい、ソースが三位一体となって、食べ手の気持ちを高めてくれる。
「柿もそうなんですが、町周辺の食材の作り手は高齢化でだんだん少なくなっています。生産の現場を活性化させるためにも、僕たちが率先して使っていかなければ。この場所で仕事をする者の役割だと思っています」と表原さんは語る。食材の生産者を潤し、その食材を目当てに訪ねる人を集める、その循環の媒介者としての料理人、という自負がビシビシと伝わってくる。

名店の薫陶をうけ、地産地消の先へ

徳島・上勝町『ペルトナーレ』調理シーン
アメゴのソテーは、フライパンで焼き目をつけた後、遠火の炭火でじっくり熱を加える。
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次はアメゴのソテーである。アメゴは、四国に生息湖川が多い淡水魚。上勝町では勝浦川という清流で獲れるそうだ。シンプルなソテーで味わう。皮目をしっかり焼いてあるアメゴに対して、野菜はほぼ生に近い状態で、噛めばあふれる旨みや水分がソース代わりになる。

徳島・上勝町『ペルトナーレ』アメゴのソテー
四国の清流を象徴する魚・アメゴのソテー。
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「この地で取れる川魚がメインで、海の魚はほぼ使いません」。牛肉は黒毛和牛の阿波牛がメインで、ジビエ類については北海道から鹿を送ってもらうこともあるという。

徳島・上勝町『ペルトナーレ』表原シェフ
山形で名を馳せ東京にも進出した『アル・ケッチァーノ』奥田政行オーナーシェフのもとで修業。2014年に徳島へ戻って上勝町で独立した表原シェフ。
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出身は、ここ徳島。この町のために自分ができること、やるべきことは何か、毎日模索中だと語る表原さんは、地産地消のその先へとエネルギーをみなぎらせる36歳。これから何度も四国へ渡って、じっくり付き合っていきたい一軒である。

徳島・上勝町『ペルトナーレ』外観
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各地の美食を訪ねる
門上武司の旅企画「皿までひとっとび」

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writer

門上 武司

kadokamitakeshi

関西の食雑誌「あまから手帖」編集顧問。年間外食350日という生活を30年以上続けるも、いまだ胃袋健在…。ゆえに食の知識の深さはいわずもがな。
食に携わる生産者・流通・料理人・サービス・消費者をつなぎ、発信すべく、日々奔走している。