中江有里さん【後編】ベトナム料理に徳島ラーメン!映画を通して現地の食を満喫

前編では、26年ぶりに主演を務めた映画『道草キッチン』への想いや、作品に登場する食について話してくださいました。
作品において、徳島で暮らすベトナム人たちとの温かな交流は物語の核を担うところ。後編では、映画完成後の映画祭や舞台挨拶で訪れたベトナムでのエピソードや、徳島でハマったソウルフードについてお伺いしました。

映画祭に招かれ、初のベトナム体験

――作中に登場する料理はどれもおいしそうで、『道草キッチン』は飯テロ映画でもありますね。

中江:
そうなんですよ。野菜をいっぱい使うのでヘルシーですし、色鮮やかで見た目にも美しいのがベトナム料理の魅力だと思います。私も大好きです。
映画『道草キッチン』イメージ4
ベトナム料理の代表格であるフォー(米粉麺)をはじめ、バインミーや揚げ春巻きなど、作中には野菜たっぷりの料理が登場する。ⓒ2025映画『道草キッチン』製作委員会

――これまでベトナムへ行かれたことはありますか?

中江:
今年の7月に「第3回ダナン・アジア映画祭2025」に招待されて、初めてベトナムを訪れました。

――では、現地で本場の料理を召し上がる機会もあったのでは。

中江:
おいしくいただきました。日本の立ち食いそばのような感じで、いろんなところにフォーがあって。空港で搭乗を待っている間にもフォーを見つけて、「ああ、ベトナムのフォーは日本のうどんや蕎麦みたいな感覚なんだな」って思いました。あと、カフェも素敵でした。

地続きの歴史に感じる“つながり”

――現地の映画祭で上映された際、客席の反応はいかがでしたか?

中江:
ベトナムに関する話や料理のシーンになると食いつきが違いましたね。自分たちの国や文化がどう描かれているのか興味をもって、非常に集中して観てくださっているのを感じました。私たちも、外国の映画で日本に触れるシーンがあると気になるのと同じですよね。そのとき初めて、この映画は日本で撮っているけれどもベトナムのことも描いているんだなって気づきました。
「ベトナムでこの映画を上映してほしい」といったお声も頂戴して、本当によかったなと思いましたし、ほっとしました。
向こうの方に映画を観ていただける機会を得られたことに感謝しています。
映画『道草キッチン』中江有里さん4

――映画をご覧になった人たちに受け入れられてよかったです。

中江:
今年はベトナム戦争から50年という節目の年でもあり、主人公の立もまた50歳。彼女の中では、ベトナム戦争は歴史として知っていること。もちろん、私自身にとってもそう。それが実は、徳島という縁ある土地で、自分に近しいところにベトナムの人がいたってことに気づく――。そういうふうに考えていくと、過去は無関係ではなく、歴史も自分につながりがあるものだというメッセージもまた、この作品の根底にあるものだと感じています。表面的にはファンタジックな部分もあるんですが、リアルな現実に根ざしている作品です。
映画『道草キッチン』シーン5
ⓒ2025映画『道草キッチン』製作委員会

3日で2杯!? 大の徳島ラーメン好き

――作品の舞台となった徳島で印象に残っていることはありますか?

中江:
私、実は徳島ラーメンが大好きなんです。先日も先行上映での舞台挨拶のために2泊3日で徳島へ行ったんですけど、着いて直行でラーメンへ行って(笑)。翌日も合間を見つけてラーメン屋へ。監督でさえ1杯も召し上がってないのに、3日のうちに2杯も食べて皆に驚かれました。
映画『道草キッチン』中江有里さん5

――お気に入りのお店があるのでしょうか?

中江:
ここ!ってお店があるわけではなくて。徳島ラーメンは「白系」「黄色系」「茶色系」の3タイプに分けられる上に、お店によっても微妙に違うので、本当にたくさん種類があるんですね。いままで茶色は何回か食べていて、このときは食べてみたいと思っていた黄色系を探して行きました。白はまだ至ってないので、いつかどこかで巡り会いたい!

――塩分過多ですね(笑)

中江:
だから、帰ってきてから2日続けてブロッコリーばかり食べるという(笑)。

――ブロッコリー最強! これぞ、節制!

中江:
ブロッコリーは好きなので苦じゃないんですが、周りの人が引くほど食べてました(笑)。蒸したてを塩で食べるのが一番おいしいですね。

――それは蒸し器で?

中江:
蒸し器で。うち、レンジないんですよ。前は使ってたけど、壊れちゃって。処分して、新しいのを探してはいたんですが、いいのが見つからなかったのと、レンジなくてもいけるなって。それに気づいちゃったら、もういらないわ!って(笑)。

――もしかして、炊飯器も……。

中江:
ないですね。ごはん炊くのは土鍋です。食べきりサイズしか炊かない。便利なものも、ないならないなりに、その生活に合わせていけば意外と何とかなるものです(笑)。

――五十路の日々を、肩ひじ張らずに挑みながら進む中江さんが、ライフサイズで体現した“立さん”。移住先の徳島で彼女がどんな人生を見据えて進んでいくのか――。ぜひ劇場でお確かめください。

映画『道草キッチン』中江有里さんシーン6
ⓒ2025映画『道草キッチン』製作委員会

作品データ:
【作品名】道草キッチン
12月12日(金) 京都シネマ
12月13日(土) 第七藝術劇場/元町映画館 にて上映
【公式サイト】https://michikusa-kitchen.com
【X】@mov_michikusa_k
【Instagram】@michikusa.kitchen
制作・配給:KYO+

profile

中江有里さん

女優・作家・歌手

中江有里さん

1973年大阪府生まれ。法政大学卒業。1989年、芸能界デビュー。NHK朝の連続テレビ小説『走らんか!』ヒロインで注目を集め、多くのドラマ・映画に出演。NHK BS2『週刊ブックレビュー』で長年司会を務めた。2019年から歌手活動再開。松本俊明氏とのユニット「スピン」を結成、2025年7月に『それぞれの地図』を配信リリース。著書に、小説『愛するということは』(新潮社)、『万葉と沙羅』(文藝春秋)など多数。読書好きで知られ、本にまつわる講演やエッセー・書評を多く手掛ける。最新作は『日々、タイガース 時々、本。 猛虎精読の記録』(徳間書店)。文化庁文化審議会委員。天理大学客員教授。

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椿屋

tsubakiya

映画は「ひとり、劇場で!」がモットーの映画ライター。2024年鑑賞数は267本。人生の映画ハシゴ最高記録は1日7本。各媒体で、着物・グルメ・京都ロケ地といった切り口のレビューを担当する。超大作から自主映画まで、ノンジャンルな雑食。