「RED U-35 2025」 グランプリは、郷土愛を込めた須藤良隆シェフ(La Plage/新潟)。

大阪・関西万博の会場で、食の未来を担う若手料理人たちが火花を散らしました。35歳以下の料理人が夢と覚悟をかけて挑む登竜門「RED U-35 2025」が、ついにグランプリ“レッドエッグ”を決定。世界が注目する万博の舞台で、日本の“食の次世代”が輝きを放ちました。

大阪・関西万博の会場で熱戦!

新時代の若き才能を発掘する日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35」。夢と野望を抱く35歳以下の料理人(クリエイター)を見いだし、世の中に後押ししていくことを目的として、2013年にスタート。これまでの料理コンテストとは一線を画す大会です。
2025年大会の最終審査は、10月4日(土)に「辻調理師専門学校」で実施。この日は三次審査を勝ち抜いた「シルバーエッグplus」9名が、「日本から世界へ EARTH FOODS 25」をテーマに、一皿で表現する試食審査に挑みました。翌5日(日)には、その中から選ばれた5名の「ゴールドエッグ」によるファイナルステージが、大阪・関西万博会場のEXPOホール「シャインハット」で開かれたのです。

受賞者
書類、映像、面談、そして最終の“食”による審査を経て選ばれるのは、未来の料理界を担う卵たち。一次審査を通過すれば「ブロンズエッグ」、二次審査通過者は「シルバーエッグ」、三次は「シルバーエッグplus」、最終審査を通過すれば「ゴールドエッグ」。そして頂点のひとりだけが「レッドエッグ」になる。情熱が形となる、年に一度の挑戦。
辻調での最終調理審査
ゴールドエッグに勝ち進めなかった挑戦者たちも見事な活躍をみせた。「シルバーエッグ plus」の山名新貴さん(千葉・イタリア料理『KURKKU FIELDS (perus)』)
辻調での最終調理審査
「シルバーエッグ plus」の田村 和儀さん(京都・フランス料理『wavie』)ほか
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ファイナルステージのテーマは「食べる」って何?

大阪・関西万博のシグネチャーイベント「EARTH MART DAY」の一環として開催されたファイナルステージでは、ファイナリスト5名によるプレゼンテーション審査が行われました。テーマは「食べる」って何?。

ゴールドエッグに選ばれたのは、こちらの5名
李 廷峻(イ ジョンジュン)さん(東京・韓国料理『HASUO』)
向田 侑司さん(東京・中国料理『ウェスティンホテル東京 龍天門』)
須藤 良隆さん(新潟・フランス料理『La Plage』)
佐藤 歩さん(京都・日本料理『菊乃井 鮨青 肉雲収』)
丸山 千里さん(東京・フードクリエーター)

ステージ画像
多くの観客が見守る中、ファイナルステージがスタート。審査員長は、狐野 扶実子さん(食プロデューサー・コンサルタント)。審査員も錚々たる顔ぶれ。脇屋 友詞さん(Wakiya一笑美茶樓 オーナーシェフ)、佐々木 浩さん(祇園さゝ木 主人)、君島 佐和子さん(フードジャーナリスト)、辻󠄀 芳樹さん(辻󠄀調理師専門学校校長・辻󠄀調グループ代表)、野村 友里さん(eatrip 主宰/料理人)、米田 肇さん(HAJIME オーナーシェフ)、小林 寛司さん(villa aida オーナーシェフ)、吉武 広樹さん(Restaurant Sola オーナーシェフ)
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ファイナリストたちは、それぞれの専門ジャンルや活動の場を超え、「食べる」という行為の根源的な問いに対し、真摯に向き合った熱いプレゼンテーションを展開。
なかでも、新潟・佐渡島から参加した須藤 良隆さんは、佐渡島の食文化と伝統の継承をテーマに、食を通じて未来をつなぐという強いメッセージを発信。曰く、「消えゆく島の伝統、食文化を守るために。料理で島留学を考えています」。プレゼンテーションの途中では、佐渡島の伝統芸能である「鬼太鼓(おんでこ)」の演奏を披露するというサプライズもあり、審査員や会場を驚かせました。

佐藤さんプレゼン
「鬼太鼓(おんでこ)」の演奏を披露した、新潟・佐渡島出身の須藤さん
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また、ファイナリスト最年少の佐藤 歩さん(日本料理)は、黒板の映像を背景に、授業のスタイルを演出。子どもたちとの対話を通じて「食べることとは幸せになれること」を伝えました。いっぽう、フードクリエイターとして初のファイナリストとなった丸山千里さんは、食品の商品開発をしている料理人。加工品開発を通して「日本のおいしい食材を未来に繋いでいきたい」という想いを語りました。

グランプリ「レッドエッグ」に輝いたのは須藤 良隆さん!

厳正な審査の結果、第12回大会のグランプリである「レッドエッグ」に輝いたのは、フランス料理『La Plage』(新潟)の須藤 良隆さん(34歳)。

須藤さん
見事「レッドエッグ」に輝いた須藤さん。佐渡島の土地と伝統に根ざした、現代フレンチを提唱。最終審査のメニューは「佐渡の埋もれる宝」
佐藤さんの料理
地元・佐渡島をテーマにした一皿「佐渡の埋もれる宝」。クロモジの香りから始まるプレゼンに、会場は静かに引き込まれていった。ふぐを塩麹でマリネし炙ることで、生と焼きの香ばしさが交錯。発酵文化と自身の記憶を重ね、佐渡の恵みをフランス料理に昇華させた。
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須藤さんは受賞の際、「本当に自分が一番驚いています。ここまで来ることができたのも、支えてくれるスタッフ、仲間、家族、いろんな方々の力でくることができました」と感謝を述べ、賞金500万円の一部を故郷である佐渡島・新潟県に寄付し、地域の発展に協力したいという意志を表明。「島留学」といった活動を通じて、佐渡島の伝統・食文化を未来につないでいくことへの強い決意を語りました。
準グランプリには、フードクリエーターの丸山千里さんが選ばれ、日本航空による「Global Experience賞」は、佐藤 歩さん(京都・日本料理『菊乃井 鮨青 肉雲収』)が受賞。また、「岸朝子賞」は、今後の活躍が期待される女性料理人として丸山千里さんが、「滝久雄賞」は、料理人としての領域を超えた活躍が期待されるとして清野桂太さん(東京・イノベーティブ・フリーランス料理人)が受賞。さらに、「ドリームキッチン賞 by ABF Capital」は、スペイン『Txispa(チスパ)』で料理人として活躍する福島紗弥さんが受賞しました。

丸山さん
フードクリエーターの丸山千里さん。最終審査で「蟹と柑橘の抹茶ラーメン」を披露。
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丸山さん料理
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万博との連携が示す「食の尊さ」

総合プロデューサーの小山薫堂氏は、2025年の大会が大阪・関西万博の会場で開催できたことに感謝を述べ、このようなメッセージを伝えました。
「料理を通じて人を喜ばせたい――そんな思いで、多くの料理人たちが日々、命を懸けておいしさを追求しています。今回のファイナリスト5名だけでなく、全国各地で懸命に腕を振るう料理人、生産者の存在を、食事のたびに思い出していただければと思います。
“何を食べるか”が問われるこの時代に、おいしさを競い合い、食を通してメッセージを発信できること自体が、実はとても贅沢で、感謝すべきことです。食卓を囲むひとときが当たり前ではないと感じ、改めて“食の尊さ”と“その価値”を心に刻んでほしい――それが、RED U-35を通して伝えたいことです」。

全員集合
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食のクリエイターたちが「食で未来と世界を変えたい」という志を抱き、食の力で社会に貢献していくことを目指す「RED U-35」。大阪・関西万博という舞台で交わされた若き料理人たちの挑戦は、改めて“食の尊さ”を見つめ直し、未来へとその想いをつないでいく契機となった。