食を知り、楽しみ、深める。「いただきますアカデミー」開講。

小山 薫堂さんが代表を務める『オレンジ・アンド・パートナーズ』が主催し、京都芸術大学・食文化デザインコースが連携・運営する学びの場「いただきますアカデミー」が開講。
世代を超えて、食文化を楽しく味わい、共有し、深めることを目指し、学生や一般の方を対象とした実践的な講座です。
11月某日、その第一回目を体験させてもらうことに。会場となったのは、京都・下鴨神社のそばに佇む老舗料亭『下鴨茶寮』、テーマは「漬物」。
“多くの方が食文化をもっと身近に、そして楽しく味わえる機会をつくりたい“という思いのもと、学びと味わいが一体となる時間は、日々の食卓をより豊かにしてくれる体験となりました。

京都芸術大学による、開かれた学びの場

「いただきますアカデミー」は、2025大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「EARTH MART」を手がけた小山薫堂さんが率いる『オレンジ・アンド・パートナーズ』が主催。食文化デザインコースが連携(パートナー)して運営する「いただきますアカデミー」。世代を超えて、食文化を楽しく味わい、共有し、深めることを目指しています。
このアカデミー参加対象者は、食文化デザインコースの学生はもちろん、食に興味のある人であれば誰でも参加できます(公式HPnoteInstagramで募集告知)
この日は、多数の学生も参加していました。学生、といっても高校を卒業したばかりの人たちだけでなく、食文化デザインコースには、学び直しをしたい社会人や主婦、食関係に従事する人などあらゆる立場の人たちが集います。

第一回目のこの日、『下鴨茶寮』には学生だけでなく一般参加者の姿も。1940年創業の『京つけもの西利』平井誠一社長とともに、漬物をテーマにした特別料理を楽しむひとときです。

平井社長と麻生さん
『京つけもの西利』平井誠一社長(写真右)と、京都芸術大学・食文化デザインコース専任教員の麻生桜子さん。
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『京つけもの西利』平井社長と学ぶ、漬物の継承と革新

漬物は、万博「EARTH MART」のプロジェクトで世界と共有したい日本発の食リスト「EARTH FOODS 25」に選ばれています。講座では平井社長が漬物文化の歴史や発酵の仕組み、健康面までやさしく解説。「漬物は保存食である前に“発酵の知恵”」と強調しました。

会場のお座敷風景
『下鴨茶寮』のお座敷には25名の参加者が集った。
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注目は、京都の伝統食「すぐき」から発見された植物性乳酸菌「ラブレ乳酸菌」。腸まで生きて届き腸内環境を整える力があり、西利では刻み漬や沢庵などを1日20gの小分け包装にした「乳酸菌ラブレ」シリーズを展開。さらに、ぬか漬には多様な乳酸菌が存在し、免疫力向上にも寄与するとの話にも、参加者は興味津々の様子。漬物が“脇役”という印象は静かに覆されます。

学び中
「日本の漬物の歴史」をはじめ、「漬物と健康」について深掘りする学びの時間。
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老舗料亭がつくる、漬物と料理の新しい関係

学びの後は昼食。お座敷でいただく特別コースでは、『下鴨茶寮』総料理長・本山直隆さんが「漬物を“素材”としてどう活かすか?」をテーマに腕を振るいます。

シェフ
『下鴨茶寮』総料理長・本山さんは、全10品の献立全てに漬物を使うという挑戦に出た。
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いくら
先附「甘麹熟成食パン すぐき スモークサーモン 玉子 いくら」
甘麹熟成食パンの自然な甘みとしっとり感に、細かく刻んだすぐきがアクセント。ひと口で発酵の豊かさを感じられる。
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お造り
向附「鯛 梅しそ大根 山葵」
造り醤油の代わりに刻んだ梅しそ大根を使用。梅の酸味が鯛の旨みを引き立て、後味はすっきり。漬物が料理の“調味料”としてここまで活きるのかと感心。
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八寸
焼八寸では、柿と奈良漬の白和えや、千枚漬で巻いたカニのほぐし身と菊花など、四季の移ろいを感じさせる品々が揃いました。さらに煮物や強肴、食事や水物に至るまで、すべての料理に漬物が調和し、素材の個性を引き立てていた。
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漬物の“未来のかたち”は、もっと自由でいい

食後はラウンドテーブルで意見交換。「こんな漬物があれば嬉しい」というアイデアが飛び交いました。「ワインとのマリアージュは?」、「若い世代向けに、ぬか漬をフリーズドライにしてスープに?」、「シリアルバーのように気軽に楽しめるスタイルも面白い」など新たな提案が続々。

平井社長は「漬物は素材としてもっと自由に使える」と話します。伝統を守るだけでなく、時代に合わせて進化させる——そんな未来像に、参加者は熱心に質問を重ねました。

学びの時間、食事シーン
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学びの時間、メモ
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学びの時間、意見交換
ラウンドテーブルでは、各テーブルで活発な意見交換がなされていた。
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食べることは日々の営みだからこそ、学びを深めるほど日常の食卓は豊かになります。この日の体験を一言で表すなら、「いただきますアカデミー」の理念そのまま。

「予約の取りづらい名店での食事会や、食の職人を招いてのトーク、街酒場や地域食の探訪など。ちょっと知的で、おいしくて、文化や人と出会えるようなひとときを、積み重ねていきたいです」。
そう語ってくれたのは、京都芸術大学 食文化デザインコース・プロジェクトマネージャーの林 律子さん。

誰しもが参加できる、食文化の学びの入口

「いただきますアカデミー」は、学生だけの学び場ではない。食が好きな人、料理を仕事にしている人、これから学びたい人…幅広い層に向けて開かれた場所。

イベントは不定期開催で、都度HPなどで募集するスタイル。林さん曰く、「フランクな食べ歩きからアカデミックなトーク会まで、いろいろな切り口のイベントを企画中です。参加した皆さんの毎日が、気づけばちょっぴり楽しくなっていた。そんなサプライズ&ハピネスに出会える場に育てていければ」。

参加してみたい方も、アイデアを持ち寄りたい方も、企画づくりに関わりたい方も。そして、「食材や地域の文化を紹介したい」と思う生産者やつくり手も。この場は、そんな声を歓迎してくれるでしょう。

集合
2026年度には、本誌編集顧問・門上武司さんによる講座「夜会」も開催予定。
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