華やかに味わい深く。値打ちの串揚げコース。大阪・心斎橋『本串家物語』

家族での会食や友人との食事会、来阪した客人をアテンドするにもぴったりの店だ。心斎橋駅からも程近いホテルの地下。料理人が1品ごとに仕立てる串揚げのコースは技ありの多彩な串の連続だ。

手間を惜しまず仕事を施す

心斎橋駅直結のオー・エム・ホテル日航ビルの地下2階に店を構え、2026年に10年目を迎える『本串家物語』。折々の食材を用い、料理長が手を掛けて仕上げた串揚げのコースが堪能できる。夜のコースは、おまかせで供される串の数により6600円から設定があるのも手頃で嬉しい。しかもその内容が充実している。串9種類の「皐月」コースは1品とて同じものがない多彩さだ。

料理は全て夜「皐月」コース7700円から取材時の献立。串は右から、車海老、牛ヒレ、甘鯛けんちん揚げ、寒鰆。通常は串は順番に1串ずつ提供。この日の小鉢はタコの柔らか煮。サラダ、デザートも付く。
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席には山椒塩、オリジナルソース、ピーナッツソース、だし醤油、おろしポン酢が用意されている。これで充分なのだが、ほとんどの串揚げにはトッピングで手作りのソースや薬味などが付いた状態で供される。カラリと揚がった国産牛のヒレにはおろしワサビ。脂が乗った鰆にはタルタルソースの上に赤キャベツやブロッコリースプラウトをあしらって。こちらの想像を超え、各素材に適した食べ方を提案してくれ、味の膨らみが何倍にも広がる。

揚場に立つのはホテルの和食出身の金山智一さん。小鉢ひとつとっても丁寧に味わい深く。その技が細部まで惜しみなく披露されているのが分かる。
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全ての献立を考え、調理をほぼ1人でこなすのは店主の金山智一さん。「大阪に来られるたびに来てくださるフランス人の方や、上のホテルにご宿泊の際に『ここで串揚げを食べるのが楽しみで』と折に触れ通ってくださる常連さんもいらしてありがたい限りです」と静かに微笑む。

木目調の店内は洗練されていて低めの椅子も居心地がよい。厨房をぐるり囲むコの字型のカウンター席は全17席。
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個性豊かな全9串

右上から時計回りに、洋風に炊いた大根の串揚げはトリュフのクリームソースに潜らせて。「ふぐ」はだし醤油のジュレに大根おろし、芽ねぎをのせて。お口直しにさっぱりと野菜のお寿司も付く。
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鶏のだしでコトコト、味を煮含ませた大根にパン粉を付けてラードと植物油の油で揚げる。ガラスの器に入っているのはなんとトリュフが香るクリームソース。玉ねぎに、舞茸や椎茸などのキノコをバターで炒めてしっかり旨みを引き出した上で、生クリームと合わせて煮詰め、仕上げにニンニク、トリュフ塩で調味。提供前にミキサーに掛けてふわっとカプチーノ状に。この串のためだけに仕込む手間入りのソース。せっかくなのでたっぷり纏わせて味わえば、まずパン粉の間にソースがよく絡み、コク深いキノコ風味が口いっぱいに広がった後にトリュフの香りが追いかける。これは間違いなくワイン! そしてフランス人のお客様が喜んで味わうというのも納得の味だ。一方、冬の旬魚・フグはというと、大根おろしに芽ねぎが乗った端正なビジュアル。下にだし醤油のジュレが添えてあり、こちらは日本の冬の醍醐味と感じさせる味の振り幅だ。

右から、チーズソースで味わう子持ち昆布。海老芋、鯖の羽二重あられ揚げ。お腹の具合に応じて単品を追加することもできる。
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各素材に仕事を施し、緩急を持たせ、飽きることなく食べさせる9串。これで7700円はかなりお値打ちだ。またどの串もしっかりとボリュームがあるが、重たくないのも特徴。まさに揚げに技あり。こちらではメレンゲを混ぜ込んだ特製のバッター液に潜らせて、表面を生パン粉で優しく覆って油の中へ投入する。このふわっと空気を含ませた特製のバッター液が、軽やかに食べさせるコツのひとつなのだとか。

「次はどんな串が?」とワクワクしながら待つ。1串ごとに料理人の仕事が光る楽しい仕掛けに自ずと会話も盛り上がる。ワインにシャンパンに日本酒などアルコールも充実しているので、楽しい夜の会食となりそう。つい杯が進んでしまっても駅はすぐそこ。季節ごとに変わるネタを楽しみに、また訪ねたくなる串揚げ店だ。

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