なぜ、沖縄で大阪のパンか。“天然酵母×島cuisine”が動く!

“パンを架け橋として大阪と沖縄を繋ぐ”ユニークな取り組みがひそかに始動しています。仕掛け人は、関西を拠点に活動するパンコンサルタントの清水ひろゆきさん。今年1月に沖縄のレストラン『島cuisineあーすん』で沖縄在来種の豚肉「今帰仁アグー」と大阪『アルル』の天然酵母パンをペアリングするイベントが行われたのを杮落としに、今後も大阪×沖縄の食のコラボが各所で開催される予定です。

『ゴ・エ・ミヨ』唯一の“島キュイジーヌ”

那覇空港近く、小禄という町にある『島cuisineあーすん』は、沖縄食材を使った料理を味わえるレストラン。仏レストランガイド『ゴ・エ・ミヨ』に3年連続掲載され、イタリアンやフレンチの枠を超えた料理を島食材で作ることから、同ガイドでは唯一、「島キュイジーヌ」というジャンルで表記されています。

あーすん店内
可能な限り沖縄県産のものを、生産者から直接仕入れるという小林シェフ。スペシャリテは、今帰仁アグーを使ったハンバーグ。「あーすん」は「混ぜ合わせる」という意味の沖縄言葉だ。
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あーすん調度品
やちむん(沖縄の焼き物)など、器や調度品を見るだけでも価値あり。
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あーすん和室
和室もありしっぽりした雰囲気。デートや記念日のディナー使いも多いそう。
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「今帰仁アグー」に魅せられて

シェフの小林拓真さんは長野県出身。東京のフランス料理店や星付き日本料理店で修業し、オーストラリアに渡り多国籍レストランの料理長も務めました。2016年、「まだ知らない日本の食文化を深く理解したい」と沖縄へ移住。竹富島『星のや』で働く中で出合ったのが日本唯一の在来種と言われる今帰仁アグーです。沖縄で絶滅危惧となった島豚を、今帰仁村の生産者・高田勝さんが交配に成功して復活させ、年間わずか200頭に満たない数をレストランなどに出荷し「幻の豚」とも呼ばれています。

脂の融点が低いため口中ですっと溶ける今帰仁アグーに惚れ込んだ小林さんは、「こんなにおいしい肉も魚も野菜も米もある沖縄は、島の産物だけでフルコースを作れる」と考え、沖縄食材だけを用いたレストランを開こうと計画。2020年10月、一軒家をまるごと使った『島cuisineあーすん』をオープンさせました。

今帰仁アグー生産者の高田さん
今帰仁アグー生産者の高田さんは東大卒業後、進化生物学研究所へ入り、のちに養豚の道へ。
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大阪のパンと沖縄のアグーがなぜコラボ?

料理は基本的にランチとディナーのコース主体ですが、ディナーでは今帰仁アグーのハンバーグや煮込み、グリルなどさまざな手法で希少なこの豚肉が味わえるとあって、食通の間でたちまち話題に。

そんな噂を聞いて訪れ、今帰仁アグーが「復活した在来種」ということに注目して今回のイベントを持ち掛けたのが清水さん。東三国の『コーヒー&ベーカリー アルル』で初代店主から80年間継がれる“ルヴァン種”を使ったサワードゥブレッド(天然酵母パン)のおいしさを伝える活動をしており、「このアグーとパンには『種』の継承という共通したストーリーがある」と親和性を感じ、ペアリングイベントを企画しました。

イベントでは、最初に『アルル』のサワードゥブレッドや、沖縄市内のベーカリーの天然酵母パンを食べ比べし、酵母の違いやライ麦の含有量による味の違いを確認。「サワードゥブレッドは天然酵母パンの総称で、ルヴァンはその酵母の元種となるものです」といった清水さんの説明に、参加した約30人は興味深そうに聞き入っていました。

パンコンサルタントの清水さん
清水さん(左)は元海外ツアコンで、世界7万食を味わったという。無類のパン好き。
『アルル』のサワードゥブレッド
この日は『アルル』のサワードゥブレッドなどが登場。
あーすんイベント参加者
食べ比べて「それぞれ違う」と驚く参加者。
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「天然酵母パン=酸っぱい」の概念が変わる

メインイベントのディナーでは、今帰仁アグーを使ったリエット、チラ汁(頬肉の汁)、ハンバーグ、豚肩ロースグリルといったアグー尽くしの料理が次々と登場。それぞれに「80年継ぎ足しルヴァン種」「レーズン酵母配合」「ライ麦多め」など特徴が違う天然酵母のパンを合わせて味わい、酵母や麦の種類による食べ合わせの変化を実証。参加者は「パン単体で食べると酸っぱいのに、料理と合わせるとこんなに調和するものなんですね」と驚いていました。

あーすんイベントの様子
イベントは店舗SNSなどで告知。県内外から参加者があり、遠方では大阪からも!
あーすんイメージ
あーすんイベントの様子
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あーすんアグーのリエット
アグーのリエット、沖縄で有名なジョンさんのチーズなどを乗せたカナッペ。
あーすん今帰仁アグーのチラ汁
今帰仁アグーのチラ汁。長命草やルッコラなど地産のハーブ、薬草入り。
あーすんサワラ
サワラも沖縄で揚がる。淡い味付けをパンの酸味が補完する。
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あーすん今帰仁アグーの豚肩グリルとハンバーグ
今帰仁アグーの豚肩グリルに、食感の良い大豆を合わせて。右はカカオで香りを付けたアグーのハンバーグ。
あーすん今帰仁アグーの豚肩グリルとハンバーグ
料理は全て天然酵母パンに合うようレシピを特別に調整している。
あーすんイベント
酸があるパンなのでワインとのマリアージュも面白い。
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あーすん今帰仁アグーのビール煮込み
今帰仁アグーのビール煮込み。これもカカオのソースで仕上げ、まるで牛肉の赤ワイン煮込みのような上品な舌触りと芳醇な風味に。
あーすん今帰仁アグーのビール煮込み。
ルヴァンの酸とソースの酸の相乗効果で深いコクが生まれる。
あーすん「ちんびんタルガヨー」
締めは「ちんびんタルガヨー」。沖縄の柑橘「タルガヨー」の黒糖クレープ的な意味合い。
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これからもパンで繋がる、大阪と沖縄

『あーすん』ではもともと天然酵母ではないパンを提供していましたが、今後『アルル』の80年継ぎ足し酵母を使って沖縄のベーカリーにパンを焼いてもらう予定とか。「天然酵母パンと在来種の食材は、どちらも“テロワール”を感じるので相性が良い。沖縄でも内地でも、パンをフックに沖縄食材を食べてもらえる機会を増やしたい」と小林シェフは語ります。

コーヒー&ベーカリー アルルのルヴァン・ナチュレ・カンパーニュ
『コーヒー&ベーカリー アルル』のパン。
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「島cuisine@大阪」イベント続々

今後も清水さんが手掛ける食の交流は続く予定。3~4月は下記のイベントが決定しています。

・3月からパン飲みスタンド『good stay good』(中崎町)で、80年継ぎ足しルヴァン生地に沖縄の生ウコン、島唐辛子、島らっきょうを乗せて焼いた「沖縄ピザ」を販売。

・4月から『コーヒー&ベーカリー アルル』とイタリアン『コンパシー』(立売堀)で、「島キュイジーヌ」がテーマのメニューと80年継ぎ足しルヴァンの天然酵母パンを日曜限定で提供。

・4月から『cafe woo』(兵庫県多可町)で、沖縄のハーブ「コヘンルーダ」や生ウコンを使ったエチオピアスパイスコーヒーを提供。

大阪は大正区に「リトル沖縄」があり、沖縄との関わりが深い土地。そんな大阪で沖縄と食を通じた新たな交流が生まれることは意義深い動きと言えます。今後も、大阪の各所で沖縄の“島cuisine”に触れる機会が増えるかもしれませんね。

あーすんイベント
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amakara.jp編集部

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関西の食雑誌「あまから手帖」(1984年創刊)から生まれたwebメディア「amakara.jp」を運営。カジュアル系からハレの日仕様まで、素敵なお店ならジャンルを問わず。お腹がすくエンタメも大好物。次の食事が楽しみになるようなワクワクするネタを日々発信中。