郷土愛を綴る薪火レストラン、大阪・福島『Oshima』

 紅ズワイガニのスモークや鹿肉のローストなど、薪火をフル活用した‶鳥取色″のコースがいただけるフュージョンイタリアン。個性派揃いの福島エリアの中でも異彩を放つ、注目の一軒です。

新福島駅からすぐの路地裏に

 ジャンルを問わず飲食店が増え続けている福島エリアは、路地裏に名店がいくつも潜んでいることでも有名。今回ご紹介する『Oshima』も、そのうちの一軒です。

 店の場所はJR東西線の新福島駅から400m足らずですが、看板がささやかなので通り過ぎないよう要注意。界隈ではあまり見かけない深緑色の壁と窓際に積まれた薪が目印です。

『Oshima』外観
『Oshima』の2階席
2階には最大8名まで入れるテーブル席があります。
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薪火×鳥取食材がテーマ

 この辺りに炭火焼の店は数え切れないほどあるけれど、薪火の店はないでしょう?そこに故郷の食材を絡めたら、目立つ存在になれると思って」。そう朗らかに話す店主の大嶋進哉さんは、鳥取県東部の八頭(やず)町生まれ。

 薪火を使おうと決めたのは、お風呂を薪で沸かしたり、薪火でスルメを炙って食べていたりしていた幼い日々の楽しい想い出から。カウンターの正面には薪窯が鎮座する。

 鳥取の方々から取り寄せている食材は、高名な鳥取和牛や大山(だいせん)どりのみに留まらず多種多彩。とっとり琴浦グランサーモンや若桜(わかさ)吉川豚などのマイナーなブランド食材もたくさん。「薪火の香りと相性が良いので」と、鹿やイノシシなどのジビエも積極的に使っています。

『Oshima』店内
薪材は鳥取・大山地方から。ナラの木を使っています。
『Oshima』薪火イメージ
「薪火独特の香りが食材の風味をグッと持ち上げてくれます」と大嶋さん。温度管理に目を離せない手間も愛おしいそうです。
『Oshima』店主の大嶋さん。
店主の大嶋さんは1978年鳥取生まれ。大阪の調理専門学校を卒業後に兵庫や大阪のホテルやレストラン勤務を経て2019年にこちらを開きました。
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ストーリーに満ちたコース構成

 昼なら7品前後、夜は9品ほどと、料理はコースのみ。「背景があるほど、おいしさも感じていただけると思っています」と、大嶋さん。

 紅ズワイガニを使った前菜は、薪火でスモークしたカニ身をカリフラワーのピューレやトマトと合わせた冷製仕立て。カニ煎餅をイメージしたカリサクの自家製カニチップスをデコレーションしています。メインディッシュの鹿ロースのローストに添えているのは、タコスを意識したホウレン草のクレープ。鹿肉のミンチと共に中に巻いている白インゲン豆は、「幼なじみが地元で頑張って育てているんですよ」と嬉しそうに話します。 ジャンルレスな発想で‶創る″料理には、郷土の美味を一つでも多く印象付けたいという想いが溢れています。

『Oshima』の前菜
紅ズワイガニの冷菜。紅茶色のジュレはいうなればカニ酢替わり。シェリービネガーの酸味を利かせたハイビスカスティーです。
『Oshima』の鹿肉のロースト
鹿ロースを薪火でロゼ色に焼いたメインディッシュは鹿のだしを使った赤ワインソースで。隣のホウレン草のクレープの具材は、メキシコの豆料理・チリコンカンがヒントだそうです。
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 この日のデザートは、「砂丘の砂を振りかけます」というユニークなプレゼンテーション付き。食後のコーヒーは、大嶋さんのご両親が営む『オオシマコーヒー』が焙煎したオリジナルブレンド。最初から最後まで、大嶋さんにしか描けない鳥取色のコースが待っています。

『Oshima』のデザート
アールグレイのブリュレ、鳥取の白バラ牛乳で作ったハチミツ風味のバニラアイス、鳥取産の愛宕梨(あたごなし)の盛合せ。砂丘をイメージしたキャラメル風味のクランブルを目の前で振りかけて仕上げます。
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