南茨木の隠れ家和食『池輝』で鳥取の美味に出合う

 境港から届く金目鯛の煮付けや大山(だいせん)豚のロースステーキなど、鳥取食材を生かした気取らない一品をいただける穴場の和食店。経験豊富な店主の丁寧な仕事が、遠方からも客足を呼んでいます。

住宅街に潜む気さくな和食店

 阪急南茨木駅から東へ歩くこと約15分。閑静な住宅街の一角にひっそりと佇む『池輝(イケテル)』は、2016年にオープン。黒塗りの壁に竹を配したモダンな装いと、いかにも常連が多そうなローカルムードに一瞬ひるみますが、どうぞご安心を。中で待っているのは、陽気で話好きな店主の温かいもてなしです。

『池輝』外観
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自慢の鮮魚は鳥取・境港直送

 「鳥取食材の魅力に目覚めたのは、‟坊主殺し“がきっかけでしたね」と約20年前の想い出を物語る、店主の池端利信さん。何やら物騒なフレーズですが、鳥取の赤碕などで採れる海藻・クロモの通称のこと。「繊維が太く独特のシャキシャキ感と粘りがあって、たちまち虜になりました」。
 当時はとある大手飲食店の料理長を務めていた池端さん。そこから数え切れないほど鳥取に足を運び続けて各地の生産者と縁を深めることに。独立する際に境港から魚介を直送してもらうことになったのは、ごく自然な流れだったそうです。
 「坊主殺しは不漁で入手困難ですが、春先ならハタハタ、夏場なら白イカや岩ガキがいいですね。白イカは5日ほど寝かせると、身が物凄く甘くなるんです。そうそう、秋から肥え始めるサワラのもっちり感も抜群の旨さですよ」と、鳥取トークが止まらない池端さん。大好きだという鳥取のブランド岩ガキ「夏輝(なつき)」は、ハイシーズンの7月にはマニアックな‟夏輝食べ比べ“を出すのが定番だと、楽し気に話します。
 事前予約でコース料理を頼むこともできるけれど、日替わりで40種前後揃うアラカルトを気の向くままに頼むのが、気軽で楽しいお店です。決めるのが悩ましいときは、ぜひ池端さんにご相談を。待っていました!といわんばかりに、笑顔で応えてくれるはずです。

『池輝』店主の池端利信さん
店主・池端さんの実家は料亭。おいしいものに囲まれて育った大の食いしん坊が料理人を志すのも、自明の理でした。
『池輝』の造り盛合せ
境港から届く鮮魚を織り交ぜたこの日の造り盛合せは、真アジやブリ、マグロ、4日間寝かせたヤリイカなど。写真は約2人前。鳥取から届く松葉ガニは時価。
『池輝』の金目鯛の煮付け
「上質な酢が味の決め手。煮付けに使うと深みと旨みが違います」という金目鯛の煮付け。身は柔らかくてふっくら。しっかり甘さがありながら、後口は軽く上品な味付けです。
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大山豚の熟成肉はぜひステーキで

 「赤身の旨みが濃くて、クセになりますよ」と池端さんが話す鳥取県産大山豚もおすすめです。数ある生産者の中から池端さんが選び抜いて愛用しているのは、氷温熟成させることでグッと旨みを上げた特上品。カウンターに備え付けられた鉄板の上で、ステーキやとんぺい焼きなどに仕立ててくれます。

『池輝』の大山豚の熟成ロースステーキ
大山豚の熟成ロースステーキ。程よく脂がのっていて、甘辛い味付けに日本酒が進みます。
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