大阪・西天満『鮨ろく』、2種のシャリで魅せる鮨の愉しみ

街中ながら静かな雰囲気で大人が通う飲食店も数多くある大阪・西天満。その地で20余年、真摯に鮨を提供し続ける名店がご紹介する『鮨ろく』です。

店主の技と心配りが光る西天満の名店

大阪地方裁判所があり、街中ながら静かな雰囲気もある西天満。2006年からこの街で『鮨ろく』を営んでいるのが堀内紀久さんです。魚の捌き方を学んで料理の道に活かしたいと飛び込んだ北新地の江戸鮨の名店などで研鑽の日々を重ね、32歳の時に自らの店を開きました。

『鮨ろく』外観
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『鮨ろく』内観
店は中国総領事館から歩いてすぐ。カラリと扉を開けると美しいカウンターが目に飛び込んできます。
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現在『鮨ろく』で提供しているのは、おまかせの寿司のコースとおつまみと寿司コースの2種類。16500円の鮨コースはにぎり15貫とお味噌汁、たっぷりとにぎりを堪能できるシンプルな構成。そして22000円のおつまみコースは付きだしに始まり、にぎり8貫と造りや焼き物など5品を織り交ぜたお酒を進ませる仕立てです。
コースの流れで堀内さんが心を配るのが、にぎりを最初に出すタイミング。「スタートからなるべく早い段階でにぎりをお出しします。鮨を食べるというワクワク感を早く感じていただきたいことと、うちの鮨の味を提示したいという気持ちがあるんです」と語ります。

赤酢と米酢、2種のシャリが支えるにぎり

『鮨ろく』のにぎりについて、特筆すべきはシャリです。「マグロなどネタ自身の味が濃いものには強いシャリを、白身のネタにはその酢飯だと強すぎるので別のシャリを合わせているんです」と堀内さん。
まず赤身のネタに合わせているのは赤酢のシャリ。その赤酢も5年熟成させて旨みとコクがしっかりと感じられるものと酸味も効いたフレッシュな赤酢をブレンド。そこに塩のみで調味するのが『鮨ろく』流の赤酢のシャリです。そして白身など淡白な味わいのネタに合わせるのは米酢とフレッシュな赤酢をブレンドしたシャリです。あっさりとした後味の米酢に赤酢と塩、少量の砂糖を足して仕上げています。両方のシャリにはもちろん、『鮨ろく』の全ての料理にも使われているのが、沖縄で作られる粟国(アグニ)の塩。ミネラルを多く含み、塩味がまろやかなこの塩が料理を支えています。

『鮨ろく』マグロ
千葉県・銚子で水揚げされたマグロ。こちらは赤酢のシャリで。堀内さんの1日は大阪中央卸売市場で魚を吟味することから始まります。“自ら魚を選んで鮨をにぎることが大切”だと考える堀内さんの欠かせない日課です。
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『鮨ろく』コハダ
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『鮨ろく』木札
コースの料理を全ていただいても、もう少し食べたい時は壁にかけられた木札から注文を。
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多彩なおつまみで一杯、また一杯

ご自身が考えるおいしい鮨とは? と尋ねたところ「あくまでもイメージですが、鮨の外側だけをにぎって内側にはたくさん空気を含ませます。そうすると口の中で気持ちよくほぐれてくれるんです」と堀内さん。にぎる際にはそのイメージをしつつ、大事にしているのはネタとシャリの分量と味のバランスだと話します。

『鮨ろく』堀内紀久さん
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『鮨ろく』赤むつの塩焼き
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22000円のコースでは、にぎりの合間に多彩なおつまみが供されます。季節の野菜や素材をふんだんに盛り込むことを意識しているそうで、この日提供されたおつまみの一皿には赤むつの塩焼きが。鋳物のトレーに乗せてじっくりとガス火で火入れされた赤むつは、驚くほど身がふわっふわ! 素材が持つ柔らかな甘味に、辛味大根のピリッとした辛味と花わさびの香りが加わって口福感に包まれます。

季節ごとに堀内さんがセレクトする日本酒と合わせて、じっくり鮨をたのしめる。そんな豊かな時間を過ごすことができるのが、ここ『鮨ろく』の魅力なのです。