
素材を追求!自家製粉のオーガニック食事パンの店。神戸・王子公園『麦秋至』
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小麦を石臼で挽いて始まるパン作り
2004年に石川県で独立しパン屋を開いた大石 旭さん。2021年に地元に戻り新たに始めた店がこちら。石川時代は食事パンから菓子パンまで多種類のパンを焼き揃えていましたが、神戸では大きく方向性を変えました。
きっかけは広島県のパン職人・田村陽至さんの『捨てないパン屋』という一冊の本との出会いでした。「たくさんの種類を用意して余らせて廃棄するのではなく、種類を減らしてその分最高の材料を使ってパンを作る方が、お客さんにとっても、生産者にとっても、パン職人にとっても幸せなことなのではないかと思いまして」と大石さん。元々オーガニックにも興味を抱いていたことから、それまでとは全く違うパン作りに着手します。
以前の店では製粉メーカーで挽いた粉を仕入れて使っていましたが、開店に当たり、まずは原料探しから始めました。北海道の有機小麦「キタノカオリ」に「ハルヨコイ」、同じく北海道では有機のライ麦栽培に力を入れている生産者や製粉メーカーがあることを知ります。店内の工房に石臼を設置し、小麦を粒のまま仕入れて自家製粉することに挑戦。粉にした時の質感もその日の湿度や気温によって微妙に異なります。その呼吸を感じ取るように、ミキサーを使うこともやめて、手捏ねでその日その日の生地の状態を見ながら成形し焼き上げています。発酵時間もじっくり取り、パンには卵、乳、砂糖も使っていません。
噛み締めて粉の風味を存分に感じて
こんがりと焼けた「全粒粉の食パン」は、まずは薄くスライスしてそのまま齧って見るのもおすすめです。外皮のクリスピーな食感とは対照的に内部は水分をしっかり保ちしっとり。芳醇な風味が感じられます。トーストして小麦の風味が立ったところにバターだけというシンプルな食べ方が特にいいと感じます。
「ショーケースに並んでいるパンがあまりに茶色いので」と微笑む奥さんの和美さんが提案して2年ほど前から販売したのがスコーンです。お子さんたちに少しでも喜んでもらえるのではと和美さんが独学で提供を始めました。このスコーンがまた、店内で挽いた全粒粉の風味が特段に感じられる一品です。豆乳、砂糖、ベーキングパウダーなど使う素材は有機のものをセレクトして、7種類ほどの中から日々4種類ほどが並んでいます。
今後も今のスタイルをより深めていくこと。なるべく新しいことをしないことが大石さんの目標だそう。ショーケースに並ぶ茶色いパン達がその証です。取材をしている間も朝から杖をついた年配客が次々と来店してカンパーニュや全粒粉の食パンなどを買い求めて行きました。「一番小さなお客さんはいつもお母さんと来てスコーンを買っていく4歳の女の子なんです」と、微笑む大石さんご夫妻。素材を生かす直球の食事パンを作り続ける職人と、それを食べこなす老若問わない食べ手の層がいることに、パンの街・神戸の底力を知る思いがしました。
data
- 店名
- 麦秋至
- 住所
- 兵庫県神戸市中央区坂口通1-3-11
- 電話番号
- 070-8392-3663
- 営業時間
- 11:00〜18:00、土曜9:00〜16:30
- 定休日
- 日・月曜
- 交通
- 王子公園駅から徒歩9分、灘駅から徒歩10分
- メニュー
- ライ麦パン820円、カンパーニュ820円、有機小麦の食パン820円(いずれもハーフカット410円)。
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