才能溢れるパティシエールが紡ぐフランス菓子。大阪・昭和町『Pâtisserie LUNE』。
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チョコレートとキャラメルの名手
この春オープンした『Pâtisserie LUNE(リュンヌ)』は、フランス菓子を愛する読者にぜひ訪れて欲しい一軒だ。腕を振るう武田さんは大阪市内の『パティスリー ショコラトリー オーディネール』と、2024年春に惜しまれつつ閉店した『なかたに亭』で3年ずつ修業して店を開いた。
ショーケースに並ぶケーキはどれも直球のフランス菓子だ。おすすめを尋ねると自身の原点の味として「エスコフィエ」を推薦してくれた。こちらは辻調グループのフランス校時代に、武田さんが初めて自分で考えたケーキがベースとなっている、キャラメルのタルト。
土台はアーモンドパウダーの風味豊かなタルト生地。その中にバニラブリュレとスポンジ。上はキャラメルクリームをたっぷりと。フォークを入れると中からトロリとキャラメルソースが溢れ出る仕立て。このほろ苦いキャラメルソースが全体をキリッと引き締める。「キャラメルは、焦がし加減で味の表現が幾重にも違ってくるんですよ」と。
フランス校でこのレシピを課題提出したところ、製菓に不可欠なあらゆる技術が詰まっていると評価され、翌年から生徒のレッスン用課題として採用されたのだとか。独立に当たり、レシピを見直し、自身のスペシャリテとして登場した。
もう一品『なかたに亭』の中谷哲哉シェフの代表作「カライブ」に似たビジュアルに惹かれたこちら。食べると全く別物で、武田さんオリジナルのチョコレートムースだ。
「チョコバナナって鉄板の味の組み合わせじゃないですか⁉︎ そこから考えました」。
うっとりするほど滑らかなチョコレートムースの中に、生のバナナをキャラメリゼしたペーストを潜ませて、これが全体を繋ぎ、まとめている。サクシャリっとしたフィアンティーヌ生地を土台のチョコスポンジの上に敷き、小気味よい食感のアクセントを付ける。チョコレートのコクとバナナのコク。どちらも存在感を発揮しており、そのバランスが絶妙だ。ムースは濃厚でリッチな味わいなのに軽やかで、もう1個食べられそうなキレも感じる。
生菓子のショーケースには他にもプリンやシュークリームなど、お子さんから年配の方まで、食べやすいお菓子もある。一方、焼菓子コーナーで、またまた茶色い美味しそうな一品を発見。これはシュー生地を利用した「シューラスク(キャラメル)」。シュークリーム用のシュー皮を、卵白とキャラメルパウダー、粉砂糖を混ぜた液にじっくり浸して、オーブンで3時間カリカリになるまで焼く。このキャラメル味も「エスコフィエ」とはまた違った甘さと苦さで、見事。味違いで、黒糖バージョンが登場する日もあるそうで、そちらもチェックしたい。
『なかたに亭』から引き継いだボンボンショコラ
『なかたに亭』ではショコラを担当していた武田さん。閉店が決まって多くの人に愛された同店のボンボンショコラが消えてしまうのは残念だと感じた。中谷シェフにその想いを伝えると「レシピをそのまま引き継いでいいよ」と言われた。
ヴァローナ社のチョコレートを軸に丁寧に作られる、個性的なフレーバーのショコラたち。赤いドーム状の「フランボワーズ」は、じゃりっとした粒感と目が覚めるような酸味の自家製フランボワーズジャムを混ぜ込んだダークチョコのガナッシュが主役。「ラム」は、高級ラム酒「ロンサカパ」の奥行きある複雑な風味と、波照間島産黒糖を合わせたガナッシュの余韻が長い。
1粒ずつじっくりと味わいたいボンボンが、ここに受け継がれていたことが、とても嬉しい。
ショコラもキャラメルも多面的で、キレがあって、1つも同じものがない。才能溢れるパティシエールの今後の活躍が楽しみでならない。
data
- 店名
- Pâtisserie LUNE(パティスリーリュンヌ)
- 住所
- 大阪府大阪市阿倍野区阪南町3-18-27 オーナーズマンション昭和町1階
- 電話番号
- 06-6654-6679
- 営業時間
- 11:00〜19:00(カフェは12:00〜17:00LO)
- 定休日
- 火曜、水曜不定休
- 交通
- 昭和町駅から徒歩7分
- 席数
- テーブル8席
- メニュー
- プリン400円、ジャンドゥジャ702円、サブレ・カフェ788円。
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