民家そのもの! 『祥龍別邸』(神戸)で中華×韓国の完食困難コース

“隠れ家レストラン”とはよく言うけれど、ここまで本気で隠れている店はなかなかない。外観はごく普通の民家で、小さな看板すらない。じゃあどうやってお客さんが来るの?元町にある本店『祥龍』の常連客か、これを読んだアナタだけが迎えられる店なのです。1日1組のみの中華×韓国の口福な出合いを体験するの巻。

普通すぎる家の豪華すぎるダイニング

住宅街の中の普通すぎる2階建て。「MSDジャパン」という小さな看板があるきり。「こういうスタイルが、中国で今とても流行っているんです」とは、店主の林金龍(リン・キンリュウ)さん。

玄関で靴を脱ぎ、お邪魔しま~すと入ると、奥の扉の向こうには、ゴージャスなリビングが。シャンデリアがきらめき、大理石の立派なテーブルに、高級家具。バーカウンターまであるのだからビックリ。

祥龍別邸の外観
信じられませんが、ここがお店なんです。
祥龍別邸の内観
男性5人がかりで運び込んだという重量200キロの大理石のテーブルを囲めば、まるでリッチな友人宅で宴会しているよう。
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本店は元町の人気中国料理『祥龍』

2025年7月にこっそりオープンした『祥龍別邸』。別邸というからには本店があるわけで、元町の中国料理『祥龍』がそれ。本店はカウンターのみの小さな店ですが、2019年の開店以来、近在の華僑の人々の評判を呼び、今やはるばる遠方からこの店を目指して来る食通で賑わう人気店です。

何といっても、料理人・池 英恵(チー・エイケイ)さんのオリジナリティに富んだメニューと、おいしいものをお腹いっぱい食べてほしいという気持ちが溢れているのがこの店の魅力。そして別邸は、池さんとそのご主人・林金龍さんご夫妻が始めた、常連さんやその友人知人のみを迎える秘密の隠れ家なのです。

祥龍外観
元町の本店。手頃なランチがあり、アラカルトがいろいろ楽しめます。(撮影:編集部)
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中華と韓流のいいとこどりで

この隠れ家、金龍さんの事務所兼自宅を改装したから、金龍さんのお家、というわけで、 “金龍ハウス”とも呼ばれています。

金龍さんは、中国ハルビン出身の貿易業を営む実業家。奥様の池さんとは同郷で、お二人は何と中学時代からの付き合いだとか。「うちの奥さんの料理は最高」「うちのダンナさんは優しいですよ」と褒め合い、微笑ましいほど仲睦まじい。

池さんは、中国人の父と韓国人の母を持ち、両国の料理に精通。ハルピンで串料理専門店を、北京で高級レストランを営んでいた経験もあり、店では、中国東北料理を中心にオモニ譲りの韓式中華や、中韓ミックスのオリジナル料理も織り交ぜて、とってもユニークな料理を供してくれます。大変に職人気質の池さんは、市販品は一切使わず、ベースとなる白湯を豚骨や鶏ガラ、野菜などを数時間煮込んで毎日仕込み、ラー油や熟成唐辛子味噌など調味料までも手作り。その味わいの滋味深さといったら! 一度食べたら忘れられないはず。

祥龍別邸の夫婦
お料理担当は、奥さんの池さん。優しいダンナさまの金龍さんと。
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危険な蒸し豚⁉ 序章から飛ばすなかれ

では、ある日のお料理を披露しましょう。人数や仕入れによって内容は変わりますが、4人以上でコース1人8000円。飲み放題を付けると10000円です。

まずは、序盤の花形・蒸し豚と香味野菜のレタス包み。日本国産黒豚のバラを使用していて、肉が柔らかくとっても甘く感じます。付け合わせの自家製キムチや大根なます、キュウリ、もやしナムルなどなどをチシャの葉で豚肉と一緒に巻いて食すとたまらない旨さ。けれども食べすぎ厳禁。これはまだ序章なのです。

祥龍別邸の蒸し豚
蒸し豚と香味野菜のレタス包み。とろける旨さの豚肉と、パリリとしたレタス、シャキシャキの野菜たちの軽やかな食感が相まって、たまらないおいしさ。
祥龍別邸の蒸し豚
祥龍別邸のキムチなど
漬物も次々と出てきます。この日は4種。青パパイヤ、大根を細切りにするところからお手製の干し大根は、ピリリと唐辛子が効いているけど、噛むほどに大根の旨みがにじみ出る。もやしやキュウリ、干し豆腐の漬物なども、手が止まらない旨さ。
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豚肉なら池さんお得意のハルピン風スペアリブも記憶に残る一品。八角やパクチーなどの各種香辛料と一緒に長時間煮込んであるから、骨からスイっと離れて食べやすい。氷砂糖と日本の醤油をメインに使ったコクのある甘辛味は、やっぱりやめられない止まらない。

祥龍別邸のハルビン風スペアリブ
ハルピン風スペアリブ。バラ肉の余計な脂は除いてあり、案外あっさり。
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海老、キンメダイ、イイダコと海鮮も続々

肉だけでなく海鮮もお手のもの。麻辣大海老は、その名の通り、箸で持ち上げるのが困難なほど大きなエビがたっぷり。ラー油を絡めて炒めてあるのだそうで、ブリブリの身がほんのりピリ辛の味をまとい、噛めば海老の甘さがさく裂します。

祥龍別邸の麻辣大海老
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祥龍別邸のイイダコ
プリプリのイイダコの鉄板焼き
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祥龍別邸のキンメダイチゲ風
キンメダイはチゲ風で。赤い色のわりに辛さより、ブイヤベースのような魚介の旨みが溢れています。
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中国東北料理&韓国の融合も

中国東北料理なら、鶏とじゃがいものタットリタン。土鍋で熱々が登場。韓国と中国の融合したような料理は、池さんならではの創作料理。あっさり甘く、優しい味わいで、お腹の中からあったまります。

祥龍別邸のダットリタン
鶏肉と野菜を辛いスープで煮た韓国の煮込み料理「タットリタン」。
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“持ち帰り”前提で来る人多数!

別邸は、完全予約制で1日1組限定。とにかくサービス精神旺盛なご夫婦ゆえ、これでもかというほど次から次へと料理が登場します。品数は、人数分+2~3品といいつつ、10人なら14~15品は出てきそう。加えて、池さんお手製の漬物類(これがまた素晴らしくおいしい!)数種は料理の品数に入っていないのだから、本当に大きな卓上が料理で埋め尽くされるほど。この日も4人で伺って8000円+飲み放題2000円。あ、食べきれない分はお持ち帰りOKだからご安心を。

実は、金龍さんの扱う個人宅用サウナのショールームも兼ねていて、別室にて体験することもできます。食事の前や後に入って、整えていく人も多いのだとか。「熱すぎないので、少々お酒が入っていても、却ってスッキリして、これで二日酔いにもならないと喜ばれています」と金龍さん。

この隠れ家中華サロン、一度行ったら、きっとまた誰かを連れて行って、ビックリさせたくなりますよ。

祥龍別邸のサウナ
モデルはなんと金龍さんの娘さん。池さんお手製のキムチや漬物を日々食べているから、こんなに美しいのでしょうか。
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祥龍別邸の料理
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writer

団田芳子

danda yoshiko

食・旅・大阪を愛するフリーのフードライター。その地の歴史や物語を感じる食べ物・気質・酒が好物。料理人さんに“姐さん”と呼ばれると、己の年齢を感じつつもちょっとウレシイ。著書に『私がホレた旨し店 大阪』(西日本出版社)、 『ポケット版大阪名物』(新潮文庫・共著)ほか。