兵庫・御影『マモン・エ・フィーユ』のフレンチビスキュイ。フランスの洗練と手作りの温もり

雨の日も雪の舞う日も、神戸市東灘区御影にある『マモン・エ・フィーユ』の店先には、朝からお客が並び開店を待っている。全国区の人気である、松下奈保さんの手がける菓子を求めての行列だ。なかでも早い時間に完売する日もある人気商品が「フレンチビスキュイ」。贈ると「よく買えましたね、貴重なものをありがとう!」と喜ばれる希少な品だ。

母と娘の原点のお菓子

店名はフランス語で、マモン(母)とフィーユ(娘)。母と娘の絆が紡ぎ出す味わい深い焼菓子がこの店の源流にある。

店主の松下奈保さんの母・美千子さんは「我が子に添加物の入っていないおやつを食べさせたい」と、お菓子やパンを作るようになった。奥深さに魅せられ、各地の菓子教室に通い、レシピと技術を深めていった。

娘の奈保さんもそんな母と小さいころからお菓子作りを始めた。
「最初にお菓子を作ったのは幼稚園の頃。家庭で最初に作るお菓子ってクッキーが多いんじゃないかと思うんです。私は動物とか色々な派手な形のクッキーを作りたがったけれど、子どもの手には難しくて。そんな時に母が菊の花の形の型を出してきて『これも可愛いのよ』って。それが今のフレンチビスキュイの原型です」と振り返る。

伝統的なレシピをベースに

「母が私たちに作ってくれたお菓子。家庭の味の温もりを、お客様に喜んでもらえるものに昇華する。私がフランスで学んだことや出合った味を取り込み、母と相談しながらレシピを試行錯誤してひとつひとつ商品として送り出してきました」。これが『マモン・エ・フィーユ』の基幹である母と娘の味だ。美千子さんは現在も一緒に厨房に立ち、スタッフに指導をしている。「生地はふわっと優しく混ぜるのよ」。奈保さんが、子どものころ母から言われた言葉で、すべての生地を扱う際の基本だとか。

兵庫・御影『マモン・エ・フィーユ』フレンチビスキュイ
2009年〜2016年まで京都の焼肉店で毎週日曜限定の間借り営業からスタートした『マモン・エ・フィーユ』。フレンチビスキュイを販売したのは2015年ごろからではないかと松下さん。
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兵庫・御影『マモン・エ・フィーユ』店の壁や包材のモン・サン・ミシェル城
フレンチビスキュイ缶をはじめ、店の壁や包材にはモン・サン・ミシェル城があしらわれている。松下さんがフランスに暮らしていた頃、祖母がパリへ遊びに来た際「『モン・サン・ミシェル』にはお菓子の神様が祀られているのよ」と教えてくれ、共に旅した思い出の地だ。
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フレンチビスキュイは母と娘で作ったファースト菓子で、レシピはフランスの伝統的配合を基にしている。
バターと小麦粉、そして卵に砂糖というシンプルな材料。『マモン・エ・フィーユ』のフレンチビスキュイは、サクッと歯切れの良い食感とふわり品よく香るバターの風味。飲み物の力を頼らずとも次々手が伸び食べられるバランスの良さを大切にしている。

ガリッとした食感が出るように粉は数種類を配合。発酵バターは北海道産で、香りは立つが後味はくどくならないよう考えられている。
生地を合わせ冷蔵庫で1日休ませ、伸ばした生地を型抜きしてオーブンで焼く。連日手が痛くなるほどの枚数をクッキー型で抜いていくが、あくまで手作業のため、大量生産は難しい。

粗熱が取れたら焼き上がりの香りを閉じ込めるようにすぐに缶へ詰めていく。賞味期限は常温で30日間だが「焼菓子も新鮮で香りや食感がいいうちになるべく早く食べてほしい」と松下さん。

兵庫・御影『マモン・エ・フィーユ』松下奈保さん
松下奈保さん。短大卒業後に、フランスへ渡り、ル・コルドンブルーで製菓を学んだ。卒業後は別の仕事に就き、パリで13年間暮らした。そこで出会った人の縁や地方菓子、製菓材料や技法などが今に繋がっていると話す。
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ビビットなオリジナルパッケージ

『マモン・エ・フィーユ』の店舗は、内装、陳列、紙袋にラッピング用のリボンなど、隅々まで松下さんのセンスと美意識で統一されている。

代表作のひとつとなった、フレンチビスキュイも一度見たら忘れられないトリコロールカラーの幾何学模様の小さな缶に入っていることで、よりドラマチックな印象を受ける。
実は店舗の床もこの缶と同じ模様だ。「昔はフランスの精肉店で使われていた模様だそう。その後このデザインがフランス各地で受け入れられ、様々な所で使われるようになった」と松下さん。立体的なキューブが連なり生み出す陰影に魅せられて、2017年の開店時に床材に採用した。
フレンチビスキュイのパッケージが完成したのも同じ頃。長年パッケージデザインを共にするデザイナーは松下さんの世界観をよく理解して、お菓子を引き立てる素敵な缶や箱をいくつも生み出してきた。

兵庫・御影『マモン・エ・フィーユ』フレンチビスキュイ缶
「フレンチビスキュイ缶」2835円。透明ケースに入った1560円のサイズと、約600g入りのスペシャル缶(写真上段)5650円もある。
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兵庫・御影『マモン・エ・フィーユ』店内
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手元に置いておきたくなるシリーズ缶

可愛くて、食べ終えた後も捨てられないのがフレンチビスキュイの缶である。
フランス国旗のカラーの缶は鮮烈でスタイリッシュなデザインだ。

加えて、期間限定で販売されるシリーズもある。例年10月から、ショウガが効いたジンジャーのビスキュイが5月ごろまで販売される。夏にはブルーのシトロンビスキュイ缶が登場し、シーズンものも人気。
そしてビビットなピンクの缶は、ビスキュイとは違うが、サブレ・オ・ショコラが入っている。ヴァローナ社のカカオとバターの薫るサブレ生地でミルクチョコレートとプラリネのジャンドゥーヤを挟んだもの。こちらはバレンタインギフトにも人気が高い。
こうして並べてみるとそれぞれに素敵で、季節限定の味を贈り物に選んでも喜ばれる。また自宅用に購入して味わい、缶も集めているという人も多いのだ。

兵庫・御影『マモン・エ・フィーユ』ジンジャービスキュイ缶、サブレ・オ・ショコラ缶、フレンチビスキュイ缶
左下は5月ごろまで販売される「ジンジャービスキュイ缶」。赤いドットがアクセント。ピンクの缶も小粋「サブレ・オ・ショコラ缶」。右下が「フレンチビスキュイ缶」。今は製造されていないコーヒー味のビスキュイ缶もあった。
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兵庫・御影『マモン・エ・フィーユ』ジンジャービスキュイ缶、サブレ・オ・ショコラ缶
生地に数種類のスパイスと国産ショウガのすりおろしを加えたピリッと大人味の「ジンジャービスキュイ缶」2942円。奥の「サブレ・オ・ショコラ缶」3780円はカカオのほろ苦い風味とミルクチョコレートの甘さのバランスが絶妙。
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「フレンチビスキュイ」が買える場所は

・『マモン・エ・フィーユ』
・オンラインショップ
購入は、商品によって個数制限を設けている場合があるため、詳細はお店へお問い合わせを。
そのほか、各地の百貨店での催事への限定出店はお店のInstagramで告知される。貴重な機会に、毎回、整理券が配られるほどだ。

兵庫・御影『マモン・エ・フィーユ』外観
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writer

三好 彩子

Miyoshi Ayako

愛媛県生まれ。関西の飲食店の皆様に育てられ、丸々成長した食いしん坊フードライター&編集者。特技はレストランの厨房に潜入取材をすることで、調理師免許も取得。イベント司会や企業のプロモーションも担う。共著書に『ご当地グルメコミックエッセイ まんぷく神戸』(株式会社KADOKAWA)がある。