京都『すし青嵐』寿司前で呑んで握りで〆て3000円台⁉
そんなとき、食事がふたり以上なら、一人単価が1万円を超えてもさほど気にならない。むしろ昨今の物価高を考えれば1万円以内で収まればお得だとさえ感じる。けれど、ひとりで会計1万円超は、いくらご褒美でも気が引ける。
できれば手頃に済ませたいし、食べて呑んで4000円くらいで満足できると御の字。
そして、ちゃんとおいしくて、じんわり感じ入る料理がいい。
そんなときに行きたいお値打ち寿司店を見つけたので紹介しよう。今年8月にオープンしたばかりの破格の寿司屋は、祇園から車で5分ほど。タクシーを使ってでも十分、行く価値がある。
contents
握り8貫980円!安心の明朗会計
寿司前のつまみは全て605円という明朗さ。その日のおすすめは黒板に記されているので、気分でいくつか選びたい。
例えば、「煮蛤」。身が縮こまらないギリギリを狙った火入れで、蛤の風味豊かな仕上がりに。木の芽の香りと共にいただく贅沢な酒肴だ。
「真鯛の葱巻き」は、塩と山葵でさっぱりと。すだちをかけたり、穂紫蘇を合わせたり、皆敷の紫蘇で巻いたり。味変しながら、酒との好みを探るのも愉快だ。
目玉メニューは、ド定番のネタが手軽に食べられる980円の「握り8貫」。
握りは「お酒を召し上がらない方には物足りないかもしれませんが、シャリは〆に相応しく小さめ」(店主談)が、この店の流儀。かために炊いたシャリとネタのバランスも程よく、酒呑みにはうれしいサイズだ。
合わせた酒は、「まつもと 純米酒」一合803円。
寿司前2品で酒を嗜み、握りで〆てトータル3091円。天晴!
一見にも心地よい心遣い
生まれ育った秋田県で18年間修業した店主は、2年前に京都へ移住してきた。
「当初は調味料の違いにも戸惑いました。甘口が主流の秋田の酒とは違って、京都ではすっきりとした辛口が好まれるのも驚きました」と振り返りつつ、いまでも師事した親方の教えをアレンジしながら、〆寿司としての握りを追求する。
ホールでの接客だってこなす。人当たりよく、感じのいい対応で、分け隔てないおもてなしに気持ちがほぐれる。
初訪問を考えていたとき、営業前に電話をしたところ留守だったが、しばらくして折り返しの連絡があった。その心遣いが嬉しくて、予約を入れた。実際に訪れたときも、もずく酢のポン酢の酢加減が好みだと伝えたら、メーカーを快く教えてくれた。すぐさまネット購入した。
そうした何気ないやり取りにこそ、店の姿勢が垣間見えるというもの。
タクシーを使っても損をしないコスパ
アクセスはお世辞にも良いとはいえない。
最寄り駅は市バスのバス停で、住宅街に建つビルの1階だ。寿司屋といえば……のカウンター席を設置せず、テーブル席のみで勝負する。
「お客様の表情や会話が見聞きできないのは残念ですが、内装にはあまり手をかけず、可能なかぎり原価に割いて、気軽に寿司を食べてもらいたい」という店主の心意気が、その価格帯に表れている。
江戸時代にはファストフードの代表だった寿司も、いまや高級料理の一端を担う。もっと手軽に、もっと安価に、寿司を楽しめる場があれば――。そう願う職人の気概こそが、この店の最大の魅力だろう。
data
- 店名
- すし青嵐
- 住所
- 京都府京都市東山区下馬町2-505 エルベ東山1階
- 電話番号
- 050-8883-7062
- 時間
- 17:00~22:30LO
- 定休日
- 不定休
- 交通
- 市バス馬町から徒歩5分
- 席数
- テーブル20席
- https://www.instagram.com/sushiaoarashi/

writer

椿屋
tsubakiya
映画は「ひとり、劇場で!」がモットーの映画ライター。2024年鑑賞数は267本。人生の映画ハシゴ最高記録は1日7本。各媒体で、着物・グルメ・京都ロケ地といった切り口のレビューを担当する。超大作から自主映画まで、ノンジャンルな雑食。
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